アメリカ株、底が見えない急落相場 ナスダック弱気相場入りも不意打ちの急反発には要警戒
週明け7日の米株価指数先物は急落スタートとなった。ナスダック100は弱気相場入りした。今週も下落相場を意識する状況が続こう。一方で、急落相場のなかの「急反発」を警戒したい。ナスダック100、目先の見通しとテクニカルライン。

サマリー
週明けの米株価指数先物は急落スタートとなった。ナスダック100が原資産の米国テク株100は17,000ポイントを下方ブレイクする大幅下落のスタートとなった。トランプ関税砲がハイテク株を直撃しマグニフィセントセブンの輝きはもはや過去のものになりつつある。今週もナスダック100は下値を意識する状況が続こう。だが、急落相場では不意打ちの「急反発」を警戒したい。ナスダック100、目先の見通しと注目のテクニカルラインについて。
米国株、コロナショック以来の大幅下落、ナスダック弱気相場入り
トランプ米大統領は現地時間4月2日(日本時間3日早朝)、貿易相手国の関税率や非関税障壁を考慮して自国の関税を引き上げる「相互関税」を発表した。新たな相互関税は、全ての国に一律で10%の基本関税を課した上で、さらに国・地域別に上乗せ関税をかける。日本の関税率は合計で24%になる。
米相互関税を受け中国政府は4日、米国からのすべての輸入品に34%の追加関税を課すと発表した。10日午後0時1分(日本時間10日午後1時1分)に発動する。欧州連合(EU)も米国からの輸入品に対する第1弾の報復関税(最大で280億ドル相当)を数日以内に発表することを目指しているという報道がある。
トランプ関税による貿易戦争の激化を受け、先週の主要な米株価指数は2020年コロナショック以来の大幅下落となった。特にナスダック指数の下落幅が拡大した。ナスダック総合指数は昨年12月16日に付けた終値ベースの最高値2万0,7130.89から22.7%下落し、弱気相場入りのサインが点灯した。ナスダック100も今年2月19日の終値ベースでの最高値から21.6%下落し、弱気相場入りのサインが点灯した。
米株価指数 週次変動率:3月31日~4月4日の週

ブルームバーグのデータで筆者が作成
先週はすべてのセクターが下落、マグニフィセント7の輝きは過去のものに
トランプ関税砲を受け、先週はS&P500の11業種セクターが全て下落した。4つのセクターは、S&P500の下落率を上回った。その一つが、これまで米株高をけん引してきた情報技術セクターである。先週は11.4%安となった。景気敏感セクターの資本財、エネルギーそして金融の下落は、市場が抱く景気懸念の強さを示唆している。
S&P500 セクター別の週次変動率:3月31日~4月4日の週

ブルームバーグのデータで筆者が作成
マグニフィセントセブンの下落がナスダック100の下落をけん引している。年初来の変動率をみると、全ての銘柄がマイナスへ転じ、S&P500の下落率を超えている。メタプラットフォームズとマイクロソフト以外は、ナスダック100のパフォーマンスすら下回る状況にある。
特にテスラ(TSLA)の下落トレンドが際立っている。イーロン・マスクCEOの政治的な言動が不買運動につながり、1-3月(第1四半期)の販売台数が前年同期比13%減と、約3年ぶりの低水準へ落ち込んだ。納車台数も33万6,681台と、2022年4-6月(第2四半期)以来の低い水準となった。テスラに次いで下落幅が拡大しているのが、半導体株大手のエヌビディア(NVDA)である。同社は前回の決算で投資家の期待に応える成長見通しが示せず、30%近く下落している。かつてはマグニフィセントセブンの「勝ち組」銘柄だったが、その輝きは過去のものになっている。アップル(AAPL)はアジア諸国に対するトランプ関税で、中国やインドで生産したiPhoneなどの主力商品をアメリカに輸入するビジネスモデルの不透明感が強まっている。
どのハイテク株にも株価反転の好材料が見当たらない状況にある。今週のナスダック100は下値リスクを意識する状況が続こう。
マグニフィセントセブン 年初来の変動率:4月4日までの動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成
急落相場のなかの「急反発」には要警戒
米国株のボラティリティ指数のトレンドをみると、ローソク足ベースではVIXとVXNがともに2024年8月以来の水準へ急上昇している。一方、瞬間的な急騰(ローソク足の上ヒゲ)を取り除いた週足のラインチャート(終値ベース)でトレンドを確認すると、VIXが2020年のコロナショック以来の水準、VXNがロシアーウクライナ戦争によるインフレリスクが意識された2022年以来の水準まで上昇している。投資家の警戒心が急速に高まっていることを示唆している。
しかし過去の経験則では、VIXやVXNが急上昇した後はボラティリティが急低下するパターンが見られる。今のリスク回避相場を考えるならば株高トレンドへの回帰は期待できない。だが、今回のよう歴史的な急落相場では、投機的な「不意打ちの急反発」を警戒したい。
VIXとVXNの動向:週足 2018年以降、4月4日時点

ブルームバーグのデータで筆者が作成
ナスダック100 目先の見通しとテクニカルライン
15,000ポイントが視野に入る可能性も
週明けのナスダック100先物は、節目の17,000ポイントを難なく下方ブレイクしている。反発も限定的である。弱気相場入りしたことも考えるならば、目先の焦点は16,000ポイントの維持となろう。このサポートラインを挟んで2022年10月の安値と今年2月高値の半値戻しの水準16,331ポイントと2023年10月の安値を基点としたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準15,985ポイントが展開している。これらテクニカルラインがサポートゾーンとしてなる可能性がある。
今日以降、ナスダック100が16,000ポイントをも難なく下方ブレイクする場合は、一気に15,000ポイントまで下落幅が拡大する展開を想定したい。テクニカルの面でこのラインは、2022年10月の安値を基点としたフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。
サポートライン:週足
・16,331:半値戻し
・16,000:サポートライン
・15,985:76.4%戻し
・15,000:サポートライン
・14,941:61.8%戻し
ナスダック100のチャート:週足 2022年7月以降

出所:TradingView
まずは窓埋めが焦点に、急反発なら18,000ポイントが視野に
一方、ナスダック100(以下では米国テク株100)が反発する場合は、今日の「窓埋め」が焦点となろう。まずはフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準16,842ポイントの攻防に注目したい(15分足チャート、赤〇を参照)。この水準は、今日の朝に反発を止めた経緯がある。
次の焦点は17,000ポイントの攻防となろう。この水準は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる。米国テク株100が17,000ポイント台へしっかりと上昇すれば、半値戻しの水準17,221ポイントの攻防が見えてこよう(15分足チャート、緑〇を参照)。この水準を突破すれば窓埋めが完了する。
上で述べた不意打ちの「急反発」が発生する場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準17,680ポイントの攻防を意識したい。この水準は、レジスタンスラインへ転換する兆しが見られる。
米国テク株100がこのテクニカルラインをも突破する場合は、18,000ポイントが視野に入ろう。このラインはフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる。
なお、米国テク株100が直近の安値を更新する場合は、その都度フィボナッチ・リトレースメントの水準を確認したい。
レジスタンスライン:15分足
・18,000:76.4%戻し
・17,680:61.8%戻し
・17,221:半値戻し
・17,000:38.2%戻し
・16,842:23.6%戻し
米国テク株100のチャート:15分 4月4日以降

IGチャート
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