【米国株】エヌビディア8%の急落 S&P500は調整入り回避の正念場 PCEデフレーターを警戒
27日のエヌビディア株は前日比で8%超急落し、重要なテクニカルラインをことごとく下方ブレイクした。マグニフィセントセブンの指数とラッセル2000では調整局面入りのシグナルが点灯している。次の焦点は、今晩の1月PCEデフレーターとなろう。S&P500は調整入りを回避できるかどうかの正念場にある。
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記事の概要
エヌビディアの第4四半期決算は、売上高と1株利益がともにアナリスト予想を上回った。しかし、27日の市場で同社の株価は8%超急落した。2つの重要な指数では調整局面入りのシグナルが点灯している。今晩の1月PCEデフレーターでインフレ再燃の懸念が高まれば、景気不安が米国株の重石になり得る。S&P500は本格的な調整局面入りを回避できるかどうか?の正念場にある。
目次
- エヌビディア、好決算も利益率に厳しい目、株価急落
- 正念場の米国株、2つの指数で調整シグナルが点灯
- トランプ米大統領3月2日に関税を発動 PCEデフレーターを警戒
- S&P500 今日の見通しと注目のテクニカルライン
エヌビディア、好決算も利益率に厳しい目、株価8%超の急落
米半導体大手エヌビディア(NVDA)の2024年11月〜25年1月期(第4四半期)決算は、売上高が前年同期比78%増の393億3100万ドル、1株利益が0.89ドルとアナリスト予想を上回った。また、2025年2〜4月期(第1四半期)の売上高見通しは65%増の430億ドル(±2.0%)と、ブルームバーグがまとめた423億ドルを上回った。しかし、27日の株式市場で同社の株価は前日比11.13ドル(8.48%)安と急落した。同社の利益率に対する市場参加者の厳しい目が、株価下落の要因になったとの見方があった。
ブルームバーグがまとめたアナリスト予想では、第1四半期の粗利益率は71.27%と第4四半期の73.50%から鈍化する見通しにある。また営業利益率も63.01%と、前四半期の64.88%から鈍化が見込まれている。26日のIG米国レポートでは、エヌビディアが直面する2つのリスク要因に言及した。そのうちの一つが利益率だった。
エヌビディアの粗利益率と営業利益率:2022年以降
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ブルームバーグのデータで作成 / 四半期ベース
27日のエヌビディア株は大陰線で200日線のみならず、昨年8月の安値と今年1月の高値の半値戻しの水準121.91レベルをも一気に下方ブレイクした。日足のMACDとモメンタムは弱気相場の勢いが急速に増していることを示唆している(日足チャート、黒矢印を参照)。利益率の鈍化懸念で売りが続く場合は、短期サポートラインの攻防を想定したい。
短期サポートラインをも下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%と76.4%の各水準の攻防を想定したい。一方、株価が反発しても200日線と50日線がレジスタンスラインへ転換する可能性がある。これら移動平均線を上方ブレイクしても、短期レジスタンスラインの突破が確認されない限り、下落相場を警戒する状況が続こう。
エヌビディアのチャート:日足2024年8月以降
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出所:TradingView
正念場の米国株、2つの指数で調整入りシグナルが点灯
多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500は、連日で陰線引けとなっている(日足)。昨日は前日比94.49ポイント(1.59%)安の5,861.57ポイントと、1月中旬以来の安値で終えた。
現状では、今月19日に付けた終値ベースの最高値6,144.15ポイントから4.6%の下落率にとどまっている。しかし、2つの重要な指数は直近の高値から10%超下落し、調整局面入りのシグナルが点灯している。その一つが、ブルームバーグのマグニフィセントセブン指数である。
マグニフィセントセブン指数
23日のIG米国株レポートで指摘したとおり、米国市場は個人消費の先行き不透明感による景気不安とインフレが同時に進行するスタグフレーションの懸念がじわりと高まっている。この点を示唆しているのが米債市場である。景気の動向を反映して動く10年債利回りは4.6%台から4.2%台へ急低下している。また短期金融市場では、一時後退していた利下げの観測が再び強まっている。現状では、6月または7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを織り込む状況にある。
米金利の低下と利下げ観測はマグニフィセントセブンの上昇要因である。しかし、ブルームバーグのマグニフィセントセブン指数は2月27日の取引終了時点で23,881ポイントと、昨年12月17日の高値27,620ポイント(終値ベース)から13.5%下落し調整局面入りのシグナルが点灯している。
今年1月のS&P500は主力ハイテク株の買い戻しに支えられた。しかし、1月下旬のハイテク決算で投資家の期待を下回る業績見通しが続いて以降、マグニフィセントセブンの風向きが変わっている。エヌビディア(NVDA)の好決算も材料視されなかった。ハイテク株売りは、S&P500の下落を促す要因となろう。
ブルームバーグ・マグニフィセントセブン指数:日足 2024年11月以降
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ブルームバーグのデータで筆者が作成
ラッセル2000も調整局面入り
マグニフィセントセブン以外の指数でも、調整局面入りのシグナルが点灯している。それがラッセル2000である。
ラッセル2000は中小型株で構成されている。ゆえに景気の動向に敏感に反応する傾向があるため、市場の変調を先取りする「炭鉱のカナリア」として市場参加者が注視している。
そのラッセル2000は昨日2,139.66ポイントまで下落幅が拡大し、昨年11月25日の高値2,442.03ポイントからの下落率が12%を超えてきた。テクニカルの面では2,320ポイントで相場の反発が止められ、50日線がレジスタンスラインへ転換した。直近では、長期のトレンドを示す200日線を完全に下方ブレイクし、かつこの移動平均線がレジスタンスラインへ転換する兆しが見られる。26日のIG米国レポートで取り上げたVIX/VXVレシオが0.996と「1」の水準に近づいている状況も考えるならば、投資家の心理は悪化の傾向にある。
ラッセル2000:日足 2024年11月以降
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出所:TradingView
トランプ米大統領 3月4日に関税を発動 PCEデフレーターを警戒
米国のトランプ大統領は27日、カナダとメキシコに対する25%の関税を3月4日に発動すると自身のSNSに投稿した。また中国に対しても、同日に追加で10%の関税を課すとした。トランプ関税はインフレ再燃の可能性を高めるだろう。
今日は米連邦準備制度理事会(FRB)が注視する物価指数、個人消費支出価格指数(1月、以下ではPCEデフレーター)が発表される。ブルームバーグがまとめた市場予想では、トレンドを示す前年同月比が昨年12月から鈍化の見通しにある。ゆえに警戒すべきは、予想外に上振れる場合である。
23日のIG米国レポートで指摘したとおり現在の米国市場では、経済を支える個人消費の先行き懸念とインフレ期待の上昇が同時に発生し、スタグフレーションが新たな懸念材料になりつつある。この状況でPCEデフレーターがインフレ再燃の懸念を高める場合は、景気不安が米国株の重石となることが予想される。S&P500は、下でまとめたサポートラインの攻防を想定したい。
米国のPCEデフレーター:2024年1月~12月
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ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:1月の市場予想
S&P500 今日の見通しと注目のテクニカルライン
続落の場合は5,800ポイントの維持が焦点に
日足のMACDとモメンタムは、S&P500の弱気相場に勢いがあることを示唆している。この状況で今晩の1月PCEデフレーターが米株安の要因となれば、S&P500は5,800ポイントの維持が焦点となろう。
昨日の急落を止めたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準5,861ポイントの下方ブレイクは、下落幅が拡大するサインと捉えたい。このケースでは、1月14日の安値5,805ポイントの攻防を意識したい。このサポートラインのトライは、5,800ポイントの維持を見極める重要な攻防となろう。
先週の後半以降、景気の先行き不安を受け米国市場のムードが一変している。昨日のようにS&P500の下落幅が拡大し、5,800ポイントをも一気に下方ブレイクするリスク回避相場を警戒したい。このケースでは、1月の安値(全戻し)の水準5,773ポイントを視野に下落幅の拡大を警戒したい。
サポートライン:日足
・5,861:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
・5,805:1月14日の安値
・5,773:1月の安値(全戻し)の水準
反発の局面では125日線の攻防が焦点に
15分足のストキャスティクスとRSIはともに、S&P500の短期的な売りの過熱感を示唆している。昨日の急落の反動で買戻しが入る場合は、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
最初の焦点は、125日線がレジスタンスラインへ転換するかどうか?この点となろう。この移動平均線は現在、15分足にプロットしたフィボナッチ・リトレースメント23.6%戻しの水準付近で推移している。S&P500が125日線を突破すれば、5,900ポイントの攻防が次の焦点となろう。この水準はフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる。
昨日の急落の反動で5,900ポイントを突破する場合は、5,910ポイント前後の攻防を意識したい。この水準は半値戻しの水準にあたる。
28日の終値でS&P500が5,900ポイント台を維持しても、来週以降100日線や50日線がレジスタンスラインへ転換する可能性がある。これら移動平均線の突破が確認できない限りS&P500は下値トライを警戒したい。
レジスタンスライン
・5,912:半値戻し(15分足)
・5,900:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(15分足)
・5,885:125日線(日足)、23.6%戻し(15分足)
S&P500のチャート
日足:年初来
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出所:TradingView
15分足:2月27日
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出所:TradingView
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