米国株は景気懸念を抱え4月相場へ S&P500の焦点は戻り高値の見極め 4月後半の決算を警戒
米国株は景気懸念を抱え4月相場に入る。S&P500の月間見通しと注目のテクニカルラインについて。

記事のサマリー
米国株のトレンドを示すS&P500は2か月続落の可能性が高まっている。そして景気懸念を抱えたまま、4月相場へ入ろう。4月のS&P500は、3つの観点から調整の反発が予想される。しかしそれは、上昇相場への回帰ではなく新たな上値-戻り高値の水準を見極める反発となろう。4月後半には主要企業の決算が集中する。投資家の失望を誘う業績見通しが相次げば、4月後半のS&P500は下落相場を警戒したい。月間の予想レンジは5,125~5,900ポイント。
スタグフレーション懸念で株安進行、2か月続落が視野に
米国経済の先行き不透明感が強まっている。2月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)でコア指数の伸びが前月比0.4%、前年同月比2.8%と1月を上回った。ブルームバーグの市場予想0.3%、2.7%も上回った。
一方、3月のミシガン大学消費者態度指数の確報値は57.0と、速報値の57.9から予想外の下方修正となった。また、1年先の期待インフレ率は速報値の4.9%から5.0%へ上方修正された。
経済指標でスタグフレーションの可能性があらためて示されたことで、28日の米国株は総崩れとなった。3月の下落率をみるとS&P500は6%を超え、ナスダック総合指数にいたっては8%に達している(28日時点)。いずれも2022年後半以来の大幅下落である。
来週31日の株式市場で値ごろ感を意識した買い戻しが入っても、スタグフレーションの懸念が相場の重石となろう。米国株は2か月連続の下落が視野に入る。
アメリカの株価指数 月間の変動率:2022年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 2025年3月28日時点
米金利の低下は不安心理の表れ、景気懸念を抱え米国株は4月相場へ
28日の米債市場で、景気の動向を織り込んで動く10年債利回り(以下では長期金利)が急低下した。この日発表されたインフレ関連の経済指標はいずれも前月から上昇、または速報値から上方修正された。インフレ再燃を示唆する内容は米長期金利の上昇要因である。
しかし、実際には4.4%まで上昇した後ジリジリと低下し、28日の市場では4.35%付近から4.24%台へ急低下した。経済指標に対するこの反応は、インフレの再燃よりもスタグフレーションの方を強く意識した動きである。同じ安全資産である金価格が最高値を更新する状況にあることも考えるならば、米長期金利の低下は投資家の不安心理を表している。米国株は景気懸念を抱えたまま来週4月相場入りする。
米国10年債利回りの動向:15分足 3月27日~28日

出所:TradingView
S&P500の焦点は戻り高値の見極め、マグニフィセントセブンの決算を警戒
調整の買い戻し
景気懸念は引き続き米国株の重石となろう。しかし3つの観点から、4月の相場では調整の買い戻しが入ると筆者は考えている。
ひとつは過去の動きである。1957年以降のデータで算出されるS&P500の平均変動率(月間)を見ると、4月は上昇の傾向にある。アメリカの大統領選挙が行われた翌年4月も同じ傾向が見られる。
S&P500の動向:月間の平均変動率と米大統領選挙翌年4月の変動率

ブルームバーグのデータで筆者が作成
トランプ関税の全体像がある程度見えてくる点も米国株の買い戻し要因になり得る。これまで関税政策に関するトランプ米政権の言動は二転三転してきた。関税によるインフレ再燃も懸念材料だが、全体像がはっきりしない状況もまた株式市場が混乱した要因となった
しかし、4月2日の「相互関税」後はその全体像がある程度見えてくるだろう。もちろん今後も紆余曲折は予想される。しかし、少なくとも全体像が見えてくれば市場参加者も関税リスクをより計算しやすくなる。この点は米国株の短期的な買い戻しの要因になり得る。
2月以降の下落相場で、米国株の割高感がある程度解消されている状況にも注目したい。この点を予想PERで確認するとS&P500は20.82、ナスダック100は24.35まで低下している(3月28日の時点)。いずれも2021年以降の平均21.40と28.09を下回っている。
S&P500とナスダック100の予想PER:2021年以降

戻り高値の見極め
予想どおりに米国株の買戻しが見られても、下落相場を警戒する状況は続くだろう。トランプ関税によるスタグフレーションの懸念が次第に強まっているからだ。よってS&P500の反発局面では、新たな上値の水準-戻り高値の見極めが焦点となろう。
現在の弱気地合いを考えるならば、2月19日の最高値6147.43ポイント以下の水準で4月の戻り高値が決まる可能性が高い。この展開となれば、新たなレジスタンスラインが形成されることになろう。
マグニフィセントセブンの決算を警戒
4月の米国株は経済指標だけでなく、企業決算も材料視されるだろう。特に注目されるのが、4月の後半以降に集中する主要企業の決算、特に大手ハイテク企業の決算である。 2023年以降の米株高をけん引してきたのは、マイクロソフト(MSFT)やアマゾン・ドットコム(AMZN)などの「マグニフィセントセブン」である。しかしかつての輝きは急速に失われている。この点を年初来の変動率で確認すると、28日の下落相場を受けマグニフィセントセブンに名を連ねているすべての銘柄が下落する状況にある。
注目は、大手ハイテク企業の決算が続いた1月下旬以降の動きである。いずれの企業も業績見通し(ガイダンス)で投資家の期待に応えることができず、株価は下落の一途を辿っている。メタ・プラットフォームズ(META)だけは、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)がAI事業に楽観的な見通しを示したことで上昇した。しかし数字に基づかない期待先行の買いは続かず、2月の下旬以降下落トレンドへ転じた。そして28日の下落で年初来の変動率が1.5%安となった。
1月下旬以降のマグニフィセントセブンの動きは、決算の重要性と「決算のミスは決算でしか取り返すことができない」という厳しい現実を突きつけている。ゆえに、4月の後半以降に予定されているマグニフィセントセブンの決算は重要である。上で述べた調整の買い戻しが見られても、業績見通しで投資家の期待を下回る内容が続けば、株価反発のムードが一気に後退するだろう。逆に投資家の期待を超える業績見通しが多く見られる場合は、景気懸念の相殺要因となろう。決算が近づけばアナリスト予想も出そろう。4月後半の米国株は、決算内容で変動幅が拡大する展開が予想される。
マグニフィセントセブンと株価指数の変動率:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成
S&P500、4月の予想レンジと注目のテクニカルライン
戻り高値の最有力候補は5,900ポイント
上で述べたとおり、4月のS&P500は上昇の傾向にある。米大統領選挙が行われた翌年4月も同じ傾向が見られる。2月以降の下落相場で割高感がある程度解消されている状況で経済指標と企業決算が買い戻しの要因となれば、S&P500は移動平均線を中心に戻り高値の水準を見極めたい。その候補として最も注目したい水準が5,900ポイントである。28日時点でこの水準には13週線と26週線、そして50日線が展開している。
S&P500が5,900ポイントを目指すシグナルとして、まずは200日線と先週の反発相場を止めた5,800ポイントの突破を確認したい。これらのラインがサポートの水準へ転換すれば、反発地合いの強さを市場参加者に意識させよう。このケースでは、上で取り上げた3つの移動平均線のトライを想定したい。いずれかの移動平均線(5,900ポイント付近)で反落する場合は、新たなレジスタンスラインが形成されることになろう。
レジスタンスライン
・5,905:26週線(週足)
・5,900:50日線(日足)
・5,898:13週線(週足)
・5,800:レジスタンスライン(日足)
・5,759:200日線(日足)
※移動平均線の水準はいずれも3月28日時点
5,100ポイントの維持が焦点に
4月の米国株は引き続き経済指標にらみの展開となろう。後半は企業決算も変動要因となろう。問題は、これらの材料が総じて株安の要因となる場合である。このケースでは株価の反発が限られ、下落相場を警戒する状況が続こう。月間の予想レンジの下限は5,125ポイント。この水準をトライするサインとして、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。
株安の局面で最初に注目したいのが、5,500ポイントの攻防である。このラインは、5週続落を止めた重要なサポートラインである。来月後半には、昨年4月以降の上昇相場を象徴する短期サポートラインが5,500ポイントと交錯する。
短期サポートラインの下方ブレイクは、S&P500の下落幅が拡大するサインになり得る。このケースでは、週足のフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。2023年10月の安値4,103.78ポイントを基点とした半値戻し5,125レベルは、短期サポートラインを形成しているポイントでもある(週足チャートの黒矢印を参照)。この水準を4月の予想レンジ下限と想定したい。
サポートライン
・5,500:5週続落を止めたサポートライン(週足)
・5,409:61.8%戻し(週足)
・5,366:38.2%戻し(週足)
・5,235:76.4%戻し(週足)
・5,125:半値戻し(週足)
S&P500のチャート
週足:2023年8月以降

出所:TradingView
日足:今年2月以降

出所:TradingView
本レポートはお客様への情報提供を目的としてのみ作成されたもので、当社の提供する金融商品・サービスその他の取引の勧誘を目的とした ものではありません。本レポートに掲載された内容は当社の見解や予測を示すものでは無く、当社はその正確性、安全性を保証するものではありません。また、掲載された価格、 数値、予測等の内容は予告なしに変更されることがあります。投資商品の選択、その他投資判断の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。本レポートの記載内容を原因とするお客様の直接あるいは間接的損失および損害については、当社は一切の責任を負うものではありません。 無断で複製、配布等の著作権法上の禁止行為に当たるご使用はご遠慮ください。
リアルタイムレート
- FX
- 株式CFD
- 株価指数CFD
※上記レートは参考レートであり、取引が保証されるものではありません。株式のレートは少なくとも15分遅れとなっております。