米国株、関税巡るトランプ・ディールに右往左往 4日にアルファベット決算 ナスダック100の見通し
関税発動を巡るトランプ・ディールに3日の米国株は右往左往した。4日の引け後にアルファベットが第4四半期決算を発表する。トランプ関税の行方とともに今週のナスダック100のトレンドに大きな影響を与える可能性がある。
記事の概要
トランプ米大統領はメキシコに対する関税を1ヶ月延期すると発表した。カナダのトルドー首相も米関税の発動が少なくとも30日間延期されると発表した。関税を巡るトランプ・ディールを巡り3日のアメリカ株式市場は右往左往した。ダウ平均は一時プラスへ転じた。しかしトランプ関税に対する懸念は根強く主要指数は下落して終えた。
4日の取引終了後にアルファベットが第4四半期の決算を発表する。先週の決算で明暗が分かれたメタ・プラットフォームズとマイクロソフトの株価動向を考えるならば、焦点は業績の見通しとなろう。トランプ関税を巡る各国間のディールとアルファベットの決算は、今週のナスダック100のボラティリティを拡大させる要因となろう。
目次
関税巡るトランプ・ディールに右往左往の米国株
3日のアメリカ株式市場はトランプ関税の報道に揺れた。トランプ米大統領は3日、メキシコのシェインバウム大統領と電話会談を行い、同国に対する関税発動を1カ月延期することで合意したと発表した。シェインバウム氏もSNSの投稿で合意を発表した。トランプ米大統領はカナダ、中国とも協議する意向を示した。本日早朝、カナダのトルドー首相はトランプ米大統領との電話会談の後、米関税の発動が少なくとも30日間延期されると発表した。
この日、大幅下落でスタートしたアメリカの株価指数だったが、関税延期の報道で下げ幅を縮小する局面が見られた。しかしトランプ関税に対する市場の警戒感は強く、この日は全面安で終えた。特に情報技術セクターが売られ、ナスダック総合指数は前週末比で1.2%安となった。ナスダック100も21,000のラインをトライする局面が見られたが、75日線でかろうじてサポートされた。
米株安の裏では安全資産である金(ゴールド)が上昇トレンドを維持している。スポット価格は3日の市場で最高値を更新した。また米10年債利回りは昨日、4.5%の水準を割り込む局面が見られた(米国債の買いが見られた)。これら市場の動きは、投資家の不安心理が高まりつつあることを示唆している。
アメリカ株価指数の動向:2月3日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ナスダック100 今週の見通しと注目のテクニカルライン
予想レンジの下限は20,400
今週のナスダック100は、ボラティリティが拡大する展開を想定したい。その要因の一つとなり得るのが、関税発動を巡るトランプ米大統領の動向である。
上で述べたとおりトランプ米大統領は対メキシコの関税発動を1ヶ月延期すると発表した。カナダと中国と協議の意向も示したが、さっそくカナダのトルドー首相と電話会談を行った。トルドー首相はトランプ関税の発動が少なくとも30日間延期されると発表した。
今日以降、トランプ関税に関する報道で報復合戦の懸念が後退すれば、ナスダック100は大きく上昇する局面が見られるだろう。逆にトランプ氏の関税ディールで事態がさらに混迷するような状況に陥れば、他の指数に比べてボラティリティが拡大しやすい傾向にあるナスダック100は下落幅が拡大する場面に直面することを想定しておきたい。
4日の取引終了後にアルファベット(GOOGL)、6日の取引終了後にアマゾン・ドットコム(AMZN)がそれぞれ第4四半期(Q4)の決算を発表する。米ハイテク決算もナスダック100のボラティリティを拡大させる要因になり得る。
安価なAIモデルを開発した中国の新興AI企業ディープシーク(DeepSeek)の台頭で米ハイテク企業の巨額設備投資に対する懸念が浮上している。アルファベットとアマゾンが業績見通し(ガイダンス)で力強い成長を示すことができない場合は設備投資の懸念と株価の割高感が意識され、これら2社の株価が下落することが予想される。その余波は、クラウド収益で投資家の期待を下回ったマイクロソフトにも波及する可能性がある。決算が米ハイテク株売りの要因となれば、ナスダック100は以下で取り上げているサポートラインの攻防を意識したい。
・週間の予想レンジ下限はサポートライン転換する可能性がある20,400。このラインを目指すサインとして、まずは昨日の下落を止めた75日線の攻防が焦点となろう
・短期サポートラインにと重なるように90日線が推移している。これらテクニカルラインを下方ブレイクする場合は、9月6日の安値と先月24日の高値のフィボナッチ・リトレースメント38.2%戻し20,591のトライを想定したい
・90日線がレジスタンスラインへ転換する場合は、地合いの弱さを市場参加者に意識させよう。90日線の下方ブレイクとレジスタンス転換は、予想レンジの下限20,400をトライするシグナルと捉えたい。すぐ下には125日線が上昇している(2月3日時点20,388)。125日線は、米メディアCNNが提供している「Fear & Greed Index」で採用されている
サポートライン
・21,027:75日線(日足、2/3時点)
・20,863:90日線、短期サポートライン(日足、2/3時点)
・20,591:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(日足)
・20,400:125日線(日足、2/3時点)、予想レンジの下限(日足)
予想レンジの上限は22,130
トランプ米大統領がメキシコ、カナダ、中国に対する関税発動を延期し、かつ米ハイテク決算で投資家の期待に応える内容が続けば、ナスダック100の上昇幅拡大を想定したい。
週間の予想レンジ上限は、2024年の最高値であり過去最高値の水準でもある22,130レベル。この重要水準をトライするサインとして、以下の1時間足チャートにプロットした3つの水準の攻防に注目したい。いずれもレジスタンスラインへ転換する兆しが見られるラインである。
レジスタンスライン
・22,133:2024年 / 過去最高値(日足)
・21,950:レジスタンスライン(1時間足)
・21,600:レジスタンスライン(1時間足)
・21,400:レジスタンスライン(1時間足)
ナスダック100のチャート
日足 2024年7月以降
出所:TradingView
1時間足 1月15日以降
出所:TradingView
※午後にアルファベットの決算についての分析記事を掲載します
アルファベット決算、増収増益の予想も投資家は成長性を重視
第4四半期決算は増収増益の見通し
4日の取引終了後に検索大手Googleを傘下に持つアルファベット(GOOGL)が第4四半期(Q4)の決算を発表する。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想によれば、売上高は前年同期比で11.95%増の966.20億ドル、1株利益(EPS)は同比29.89%増の2.13ドルが見込まれている。
売上高と1株利益の推移とQ4のアナリスト予想:2022年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤棒グラフ:Q4のアナリスト予想
同社の成長を左右するGoogle Cloud(クラウド事業)の収益予想は、前年同月比で32.63%増の121.91億ドルが見込まれている。営業利益は同比135.95%増の20.38億ドルが予想されている。2023年以降、クラウド事業の営業利益は堅調に成長する見通しだが、前期比では4.71%増と一桁の伸びにとどまると見られている。
Google Cloudの収益/営業利益の推移とQ4のアナリスト予想:2020年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤棒グラフ:Q4のアナリスト予想
アルファベットを支えているもう一つ柱である広告収益のアナリスト予想は、前年同月比9.48%増の717.28億ドルと堅調な伸びが見込まれている。前期比でも同じく9%増と堅調に伸びる見通しにある。
広告収益の推移とQ4のアナリスト予想:2020年以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤棒グラフ:Q4のアナリスト予想
焦点は業績の見通し、巨額の設備投資に見合うだけの成長性を示せるか?
アルファベット(GOOGL)のQ4決算がアナリスト予想を上回っても、業績見通し(ガイダンス)が予想を下回る場合は、マイクロソフト(MSFT)と同じく株価が下落する展開を想定したい。
ブルームバーグがまとめた2025年1-3月期(第1四半期)のアナリスト予想では、売上高が前年同月比で2桁台の成長(11.4%増)が見込まれている。
注目は、AI事業の中核を担うクラウド事業の成長性となろう。第1四半期(Q1)の収益予想は前年同月比で29.55%増の124.03億ドル。営業利益は同比126.23%増の20.36億ドルと、Q4に続き20億ドルを超える予想にある。
投資家の期待に応えるだけの力強い成長性(ガイダンス)を示すことができれば、巨額投資に対する警戒心が後退することで、アルファベットの株価は上昇することが予想される。同社の株価上昇は、ナスダック100の下支え要因となろう。
2025年1-3月期決算(第1四半期決算)のアナリスト予想
・売上高 :897.20億ドル(前年同月比11.40%増)
・1株利益 :2.04ドル (前年同月比7.89%)
・クラウド収益 :124.03億ドル(前年同月比29.55%)
・クラウド営業利益:20.36億ドル(前年同月比126.23%)
※ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 2月4日時点
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