エヌビディア、株価混乱 年初来10%下落 輸出規制見通し不良
エヌビディアの株価は2025年の出足に失敗。半導体輸出規制の見通し不透明感が重荷だ。一方、大手ハイテク企業のAI投資という追い風は続いている。

アメリカの半導体大手、NVIDIA(エヌビディア)の株価が混乱から抜け出せずにいる。25日の終値は2024年末比で10%安の水準。1月上旬から3月上旬にかけて28%もの急落に見舞われたダメージが消えていない。アメリカ政府の半導体輸出規制の行方が不透明なことが見通しを暗くしている形だ。一方、エヌビディアの顧客である大手ハイテク企業は2025年も人工知能(AI)開発向けの設備投資を積み増す考え。エヌビディアの業績への追い風は続いており、株価の割安感は強い。2023年から始まったエヌビディアの株価急騰が3年目の試練を乗り越えられるかは、半導体規制をめぐるドナルド・トランプ大統領のかじ取りにかかっている。
エヌビディアの株価は2024年末比10.13%安 3年目のスタートダッシュに失敗
エヌビディアの株価の25日の終値は120.69ドルで、2024年末比では10.13%安だ。エヌビディアの株価はオープンAIが2022年11月に「ChaptGPT」を発表したことで始まったAIブームを背景として急騰がスタート。2023年と2024年はいずれも第1四半期に8-9割の値上がりを記録して株価が勢いづいたが、2025年は見通しが暗転したといえる。

ディープシークへの脚光で急落 四半期決算発表でも株価は勢いづかず
エヌビディアの株価は2025年に入って数多くの試練にさらされてきた。1月6日にはジェンスン・ファンCEOの講演を控えたサプライズへの期待から最高値(149.43ドル)をつけたものの、1月下旬に中国企業「DeepSeek(ディープシーク)」が低コストで高性能のAIを開発したことが脚光を浴びると、株価は急落。2月26日の2024年11月-2025年1月期決算発表も成長ペースの減速が悪材料視され、株価の下落要因となった。

さらに3月9日放送のトランプ氏のインタビューが景気後退の可能性を否定しなかったと受け止められると、米国株全体への期待が後退。エヌビディアの株価は10日には106.98ドルまで値下がりし、最高値からの下落率は28.41%に達した。その後は買い戻しが進んでいるが、かつての勢いを取り戻すには至っていない。
米国政府の半導体輸出規制の見通しは依然不透明 トランプ政権の方向性見えず
エヌビディアの株価の見通しの重荷となっているのは、米国政府による半導体輸出規制強化の行方が不透明なことだ。ジョー・バイデン前政権は1月13日に半導体輸出規制の見直し案を発表。最先端のAIモデルの中核技術が米国外で運用されることを防ぐことが狙いだとした。見直しが実現すれば、中国や中東諸国などへの半導体輸出をめぐる制限が強まるとみられ、エヌビディア幹部が「越権行為だ」と猛反発する内容だ。見直し案に設けられた120日間の意見募集期間は5月まで続き、実施の可否はトランプ政権に委ねられている。
ブルームバーグは25日、この半導体輸出規制見直し案について、エヌビディアを含むハイテク企業や、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)などの政府が実施を思いとどまるようトランプ政権に働きかけていると報道。トランプ政権の高官の間での今後の進め方に関する意見は「一致とは程遠い」とし、依然として見通しは不透明だとしている。
大手ハイテク企業の設備投資は続く 株価は大きく割安に
一方、エヌビディアの業績には、大手ハイテク企業のAI関連投資という追い風も吹き続けている。アマゾン・コム(AMZN)は2月6日の2024年10-12月期決算会見で、2025年の設備投資額が1000億ドルを超えるとの方向性を示唆。同様にアルファベット(GOOGL)は750億ドル、メタ・プラットフォームズ(META)は600億-650億ドルの投資を行うとしている。各社のトップはAIサービスが産業や経済の構造を大変革する可能性を重視し、AIに過剰投資するリスクよりも過少投資で変化に乗り遅れるリスクの方が大きいとの立場だ。またマイクロソフト(MSFT)は7月に2025年6月通期の設備投資額は前期よりも大きくなるとの見通しを示している。

業績への追い風が続く中での株価下落は結果として、エヌビディア株の割安感につながっている。ブルームバーグによると、エヌビディアの株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は3月25日時点で26.6倍。株価上昇が始まった2023年以降の平均値(37.9倍)を大きく下回っている。株価が直近の安値をつけた3月10日には23.5倍まで下がった。

トランプ氏は株価下落を警戒? 中国との対決姿勢で半導体輸出規制強化の可能性も
こうした中、エヌビディアの株価の今後の見通しは、トランプ政権が半導体輸出規制について下す判断に大きく左右されそうだ。トランプ氏は高関税政策をめぐる混乱が株価下落を招く中、相互関税については強硬姿勢を軟化させた。エヌビディア株を含む半導体株を急落させかねない半導体輸出規制強化にも慎重になる可能性がある。ただ、トランプ氏は中国に対しては対決姿勢を緩めておらず、高性能半導体が中国に輸出されることや、第三国を迂回して中国にたどりつくことを防ぐため、何等かの制限を強める筋書きも残っていそうだ。
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