アドバンテスト、最高値から16%安 業績見通し強気 米中リスクも
アドバンテストの株価はディープシーク後の急落から復活しきれていない。強気の業績見通しを示しているが、トランプリスクもちらつく。
半導体検査装置のアドバンテストの株価の反発が力強さを欠いている。10日の終値は1月につけた最高値から16%安の水準。中国企業が低コストで高性能な人工知能(AI)を開発したとのニュースを受けた1月下旬の急落から反発が進んでいない。一方、アドバンテストは1月29日に2024年10-12月期の好決算を発表。2025年もAI関連の需要増加が続くとの強気な見通しを示した。株安と好業績はアドバンテストの株価の割安感につながっている。しかし株価の見通しをめぐっては、アメリカのドナルド・トランプ大統領の政策運営をめぐる不透明感という足かせもあり、重い値動きが続く可能性がありそうだ。
アドバンテストは最高値から16%安 ディープシーク後の反発に弱さ
アドバンテストの株価(6857)の10日の終値は8645円。1月10日につけた最高値(1万0380円)からの下落率は16.71%となっている。中国のAI企業「DeepSeek(ディープシーク)」が最先端半導体を使わずに高性能をAIを開発したとのニュースが株式市場を揺らした27日と28日の合計で1888円値下がりした後、反発は483円に留まっている。
アドバンテストの10-12月期は好決算 2025年3月期の見通しも上方修正
一方では、アドバンテストは29日に10-12月期の好決算を発表した。10-12月期の総収入は前年同期比63.8%増の2182億円、1株当たり利益(EPS)は約2.4倍の70.3円。同時に公表された2025年3月期の業績見通しでは、総収入が7400億円とされ、10月の前回決算発表時に示した6400億円から大幅に引き上げられた。ブルームバーグがまとめた市場予想で見込まれていた、約6900億円というハードルも軽々とクリアしている。
2025年の市場見通しも強気 顧客半導体企業が次世代製品投入へ
さらにアドバンテストは2025年の半導体検査装置の市場見通しについても強気だ。1つのチップに複数機能を集約したSoC(システム・オン・チップ)用の検査装置市場の規模を42億-48億ドルと予想。2024年の暫定見込み規模(39億-40億ドル)から、いっそう拡大が進むとの見立てだ。アドバンテストの中原真人経営執行役員は29日の決算会見で、2025年後半から顧客企業が高性能半導体の次世代製品を投入するとの見通しに言及したうえで、「市場は上がるだろうと予想している」と述べた。ダグラス・ラフィーバCEOも半導体の構造の複雑さが増す中、「追加的な検査を行いたいという要望は依然として極めて高い」と説明した。
株価下落で割安感も トランプ氏と中国の対決姿勢は見通しを不透明に
株価下落と強気な業績見通しは、アドバンテストの株価の割安感につながっている。ブルームバーグによると、アドバンテストの株価と今後12か月の予想収益から算出される株価収益率(PER)は29倍程度で、2024年12月下旬の40倍程度から大きく低下している。2020年以降の平均値(28倍程度)が迫っており、株価の見通しを明るくする要因だといえそうだ。
ただ、世界の半導体株をめぐってはトランプ氏の動向という不安要素も大きい。トランプ政権は米国の半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)の性能が抑えられた半導体が中国に輸出されていることを問題視し、規制強化を検討しているとも報じられている。アドバンテストはエヌビディアとも取引関係があり、トランプ政権の動きがエヌビディアの業績を下押しすれば、アドバンテストの業績にも悪影響が及びかねない。
中原氏も決算会見で、「米中の関係によるリスクは非常に変化が激しい」と述べ、業績見通しの見極めを難しくする要因だと説明した。ディープシーク後の急落からの反発が進まないアドバンテストの株価の値動きは、トランプリスクが要因になっているともいえ、先行きの不透明感が続きそうだ。
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