アドバンテスト、株価に強さ 需要見通し強気 米国のAI投資が追い風
アドバンテストの株価が力強さを見せている。日本株にもショックを走らせた米国の大手ハイテク企業の巨額設備投資はアドバンテストには追い風だ。
半導体検査装置大手のアドバンテストの株価が力強さをみせている。10月30日の2024年7-9月期決算発表では2025年3月期の業績見通しを7月に続いて上方修正。31日から11月5日までの3営業日で株価は3.54%高となっている。アメリカの大手ハイテク企業による人工知能(AI)関連投資を背景にした需要拡大に自信を深めているようだ。巨額の設備投資は大手ハイテク企業の収益悪化要因として問題視されるケースも目立つが、アドバンテストにとっては業績の追い風になっており、投資家の期待が高まっている。
アドバンテストの7-9月期決算は市場予想超えの好決算 業績見通しの上方修正も
アドバンテストの7-9月期決算は総収入が前年同期比63.9%増の1905億円で、4-6月期の37.0%増から成長が加速。ブルームバーグがまとめた市場予想の1546億円を大きく上回った。また、1株当たり利益(EPS)は69.7%増の61.56円。伸び率は4-6月期(159.1%増)から減速したが、引き続き高水準の成長だった。市場予想の37.41円も軽々と上回っている。
またアドバンテストは決算発表に際して2025年3月期の業績を上方修正。総収入の見通しを前期比31.6%増にあたる6400億円とし、7月段階での6000億円から引き上げた。総収入は4月段階では5250億円と予想されていたが、6か月のうちに2割以上も上振れした形だ。さらにアドバンテストは30日に最大500億円か最大900万株の自社株買いも発表している。
アドバンテストの株価は上昇 半導体の複雑化が検査装置への需要を後押し
こうした発表内容を受けてアドバンテストの株価(6857)は31日に前日比6.43%高と急伸。翌11月1日は米国株式市場で大手ハイテク企業の決算発表が悪材料視されたあおりが日本株にも及び、アドバンテストも4.41%安となったが、3連休明けの5日は再び1.76%高となった。この3営業日での上昇率は3.54%で、日経平均株価(N225)の2.04%安を大きく上回っている。
アドバンテストの好業績の背景には需要の力強さがある。ダグラス・ラフィーバCEOは30日の決算会見で、人工知能(AI)向けの半導体に関連する検査装置に対して「確実な需要がある」と言及。「次世代半導体の構造をみれば複雑化する一方であることが分かる」とし、結果として検査に時間がかかるようになり、スピードアップのためには必要とされる検査装置の数が増えるという事情を説明した。実際、1つのチップに複数機能を集約したSoC(システム・オン・チップ)用の検査装置の7-9月期の収入は前年同期比75.4%増の1095億円で、総収入の57%を占めている。
中国からの前倒し需要の反動はなし? 大手ハイテクの半導体需要が追い風に
一方、世界の半導体市場をめぐっては、米国の中国向け半導体輸出規制強化を警戒した中国企業が関連製品の購入を前倒しで進めているとの観測から、いずれは反動が出るとの懸念もくすぶっている。オランダの半導体製造装置ASMLホールディング(ASML)は10月の7-9月期決算発表に際して、今後、中国事業の割合が通常の状態に戻っていくとの見方を示し、世界の半導体株の急落につながった。しかしアドバンテストの中原真人経営執行役員は決算会見で、「足元で変化が出ているとは考えていない」と述べ、業績の見通しへの懸念を打ち消した。
米国の大手ハイテク企業の決算ではAI関連の投資の大きさが利益を圧迫する要因として不安視されるケースも目立つが、アドバンテストにとっては直接的な需要増要因として働く。アルファベット(GOOGL)やマイクロソフト(MSFT)、アマゾン・コム(AMZN)などは今後も設備投資を積み増していくとの見通しを示しており、アドバンテストにとっての追い風が続いていくことが想定されそうだ。
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