S&P500にショック走るか 米政府閉鎖に現実味 格付け会社が注視
アメリカの政治対立が政府の機能不全の恐れを高めている。ムーディーズの対応を焦点とした米国債ショックの再来も懸念される。
アメリカの政府機関の一部閉鎖が現実味を帯びてきた。10月から始まる2024会計年度の予算関連法の成立が議会内の対立で見通せないためで、連邦政府の活動が停滞し、経済指標が発表されなくなるといった余波も考えられる。また、繰り返し持ち上がる米国政府の機能不全の恐れに関して、格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは米国の信用に悪影響が及ぶとの見方を公表。8月にフィッチ・レーティングスが米国債を格下げした際は長期金利上昇やS&P500種株価指数下落の引き金になっただけに、ムーディーズの対応をめぐって金融市場に改めてショックが走る危険性もある。
アメリカ下院でつなぎ法案の審議見通せず
予算関連法案に関しては、上院では多数派の民主党と共和党の協調が成立。11月17日までの歳出を維持するための「つなぎ予算」法案を通過させる準備を進めている。一方、下院では多数派の共和党の一部が上院の法案に対して、不法移民流入阻止の取り組みが十分ではなく、ウクライナ支援が含まれているなどとして批判。米メディアによると、ケビン・マッカーシ下院議長(共和党)は27日に「下院の支持は得られない」と述べ、法案が上院を通過した場合でも下院で投票にかけない考えを示唆した。
予算関連法案が30日までに成立しない場合は10月1日以降の政府の活動に影響がでるとみられる。2018年12月22日から2019年1月25日までの35日間にわたって政府機関が一部閉鎖された際は、国務省や財務省、商務省などの一部業務が停滞。米議会予算局(CBO)は、これらの機関で働く80万人のうち30万人が一時帰休の対象になったと推計している。米メディアによると、今回の政府機関閉鎖の可能性について、米労働統計局(BLS)は「データの収集や分析、発表を停止する」との方針を示しているという。
ムーディーズが米国政治の混乱に懸念表明
こうした混乱の危険性に対しては格付け機関も神経を尖らせている。米国を最上位のトリプルAに位置付けているムーディーズは25日、政府機関閉鎖は米国の信用にマイナスに作用すると指摘。米国債の償還には影響が出ないとしながらも、「米国を他のトリプルAの国と比較した場合、政府機関や統治における弱みがあることを際立たせることになる」と分析した。とりわけ、財政赤字の拡大や債務返済能力の劣化で財政上の強みが低下している中で、先鋭化する政治の二極化が財政政策の決定を制約していることを問題視している。
こうした米国債の格付けに対する懸念は金融市場の波乱要因になりえる。フィッチが8月1日に米国債の格付けを最上位のトリプルAからダブルAプラスに引き下げた際は、米国債が売られ、長期金利(10年物米国債利回り)が上昇するきっかけとなった。長期金利は8月以降、一度も4%を下回ることなく上昇傾向を続け、直近(9月27日)の終値は15年11か月ぶりの水準にあたる4.626%に達している。金利上昇は株価の下押し圧力となり、S&P500(SPX)の27日の終値は7月末比で6.9%安となった。
米議会がこのタイミングで政府機関閉鎖を回避できなければ、クリスマス休暇と重なった2018-2019年のケースよりも、経済活動や経済指標の発表に対する影響が大きくなるおそれもある。こうした中でムーディーズが米国債格下げに踏み切るとの観測が広がった場合は、8月同様に金融市場の混乱が深まる可能性がありそうだ。
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