米国株、上昇シナリオも 大統領選挙接戦見通し S&P500週次続落
アメリカのS&P500は2週連続の下落。一方、5日に迫った大統領選挙と連邦議会選挙で共和党が大勝しなければ上昇圧力がかかる可能性もある。
アメリカの株式市場で大荒れへの不安が漂っている。1日のS&P500種株価指数の終値は1週間前比で1.37%安。大手ハイテク企業の決算発表が悪材料となって2週連続の下落となった。同時に10月雇用統計は労働市場への不安を深めず、長期金利(10年物米国債利回り)は4か月ぶりの高さに到達。株価の今後の見通しには悪材料といえそうだ。また5日に迫った大統領選挙と連邦議会選挙は接戦が予想され、投資家の警戒感は高まったまま。ただ、共和党の大勝がなければ、政策急変の可能性が下がることが株式市場の安心感につながり、S&P500が値上がりすることも考えられる。
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アメリカのS&P500は2週連続の下落 大手ハイテク決算発表が要因
S&P500(SPX)の1日の終値は5728.80。長期金利上昇が重荷となった前週(21-25日)の0.96%安から下落率が拡大した。注目された大手ハイテク企業の2024年7-9月期決算発表では、10月30日のメタ・プラットフォームズ(META)とマイクロソフト(MSFT)の発表が成長見通しや設備投資負担への懸念を招いた。翌31日のS&P500は9月2日(2.12%安)以来の下落率となる前日比1.86%安となり、週次での下落につながった形だ。
雇用統計で労働市場の見通しは悪化せず 失業率は4.1%で横ばい
一方、11月1日朝に発表された10月雇用統計は労働市場の見通しを大きくは変えなかった。非農業部門の就業者数は前月比1.2万人増で、2020年12月の24.3万人減以来の悪い数字。市場予想の11.3万人増を大きく下回った。しかしハリケーンやボーイングなどでのストライキの影響があったとみられ、金融市場の不安は高まらず。むしろ失業率が前月から横ばいの4.1%だったことや、平均時給の前年同期比伸び率が4.0%となり、前月(3.9%)よりも高くなったことが労働市場の安定性を印象付けた。
こうした中、米国の長期金利は1日に大きく上昇した。LSEGによると、ニューヨーク債券市場の終値は4.363%で、前日から0.079%ポイント上昇。7月2日(4.436%)以来4か月ぶりの高さとなった。株価の見通しにとっては悪材料だといえる。
大統領選挙は接戦の見通し VIX指数は高止まりが続く
長期金利の上昇の背景には大統領選をめぐる思惑もあるとみられる。米政治サイト、リアル・クリア・ポリティクスによる世論調査のまとめでは、勝敗のカギを握る接戦州では民主党候補のカマラ・ハリス副大統領が巻き返しをみせているが、獲得が見込まれる選挙人数で共和党候補のドナルド・トランプ前大統領がわずかにリードする展開が続く。また、連邦議会選挙でも上下両院で共和党が多数派になる可能性がある。減税路線の共和党がホワイトハウスと上下両院を独占して政策が急変するとの見通しは、物価上昇圧力や米国の財政健全性の悪化を予感させる長期金利上昇要因だ。
このためS&P500の今後の見通しが荒れ模様になることへの投資家の警戒感は強い。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)は1日の終値で21.88。前日の23.16からは低下したものの、20を超える高水準が続いている。
共和党が大勝しなければS&P500には上昇圧力も
ただ、大統領選挙や連邦議会の選挙が接戦となれば、勝敗の判明に時間がかかことも見込まれる。現在の見通しに反して共和党の大勝がないとの見方が浸透すれば、翌日以降の株価には上昇圧力がかかる可能性もある。
2020年11月3日の大統領選挙では民主党のジョー・バイデン大統領が勝利宣言をしたのは7日になってから。上院選挙も接戦となり、多数派の確定はジョージア州での決選投票が行われた翌年1月まで遅れた。この際は「増税や規制強化を目指す民主党がホワイトハウスと上下両院を独占する可能性が低くなった」との見通しが安心感となり、S&P500は11月4日に前日比2.20%高、5日に1.95%高となった。1週間後の10日の終値ではS&P500の全セクターが上昇している。
5日に行われる今回の大統領選挙と連邦議会選挙はS&P500を上下に揺らす可能性がある。選挙結果をめぐる思惑は、投票終了前の4日や5日の株価を上下させることも考えられそうだ。
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