米国株に急落リスク ハイテク決算見通しに弱さ S&P500連騰停止
S&P500は1週間で約1%安となり、7週ぶりの下落。大手ハイテク企業の決算や重要経済指標の発表を控え、緊張感が漂っている。
アメリカの株式市場に急落への懸念が膨らんでいる。S&P500種株価指数の25日の終値は1週間前比0.96%安で、7週ぶりの下落。米国大統領選挙を控えた長期金利(10年物米国債利回り)の上昇が重荷となった形だ。ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数も上昇している。投資家の不安の背景には、29日以降に相次いで発表される大手ハイテク企業決算に関する予想の弱さがあり、投資家の期待が裏切られれば人工知能(AI)ブーム継続への不安も浮上しかねない。さらに30日以降には10月雇用統計を含む重要経済指標の発表が続くとあって、S&P500の今後の見通しには緊張感が漂っている。
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アメリカのS&P500は7週ぶり下落 大統領選挙でのトランプ氏勝利を警戒
S&P500(SPX)の25日の終値は5808.12。前日比では0.03%安というほぼ横ばいの値動きだったものの、21日からの1週間で4日目の下落となって、株式市場の見通しを暗くした。週次での下落は8月雇用統計での就業者数の不振が悪材料視された9月2-6日週(4.25%安)以来だ。
S&P500の重荷となったのは長期金利の上昇だ。LSEGによると、ニューヨーク債券市場での長期金利の終値は4.232%で、1週間前の4.075%から大きく上昇した。11月5日に迫った大統領選でドナルド・トランプ前大統領を擁する共和党がホワイトハウスと上下両院の多数派を独占する可能性が出ていることが要因のひとつ。共和党が志向する減税路線は物価上昇圧力や財政悪化を連想させ、金利上昇見通しを強めているとみられる。
こうした中、S&P500の先行きには不安も強まっている。シカゴ・オプション取引所によると、VIX指数(VIX)の25日の終値は20.33で、15日(20.64)以来の高さ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数字が大きいほど今後の値動きが荒くなることへの警戒感が強いことを意味する。
大手ハイテク決算の見通しには弱さ アルファベットなど成長減速予想
投資家の不安の高まりの背景には大統領選前に予定される大手ハイテク企業の2024年7-9月期決算の見通しに弱さが感じられることもありそうだ。29日に決算を発表するアルファベット(GOOGL)や、30日発表予定のメタ・プラットフォームズ(META)とマイクロソフト(MSFT)はいずれも総収入と1株当たり利益の前年同期比伸び率が4-6月期よりも低くなると見込まれている。31日に決算を発表するアマゾン・コム(AMZN)も大黒柱の小売り関連事業の収入の伸びが4-6月期よりも小さくなる見通しだ。
一方、アマゾンと同時に決算会見を開くアップル(AAPL)はiPhone(アイフォン)の販売好調が見込まれ、総収入の伸びが加速すると予想されている。また23日に決算を発表した電気自動車(EV)大手のテスラ(TSLA)は予想に反して利益が上昇し、株価が急騰。LSEGのデータによると、翌24日の終値は前日比21.92%高となり、2013年5月9日(24.40%高)以来、テスラとして過去2番目の上昇率となった。
AIブームの継続性に疑問符がつけば半導体株の見通しにも影
とはいえAI開発に巨額の資金を投じてきたアルファベットやメタ、マイクロソフト、アマゾンの決算発表が投資家の不満につながれば、株式市場のムードが大きく変化する可能性もある。この場合は、半導体大手NVIDIA(エヌビディア、NVDA)をはじめとする半導体株の見通しも暗くするリスクがありそうだ。半導体株は15日に伝わったオランダ半導体製造装置大手ASMLホールディング(ASML)の決算が投資家の期待を裏切って以来、不振に陥っている。
さらに米国経済をめぐっては30日には7-9月期のGDPと四半期ベースでの個人消費支出(PCE)物価指数が発表される。翌31日には9月のPCE物価指数、11月1日には10月雇用統計の公表も控えており、米国の経済や物価、労働市場の先行きを占う重要指標が目白押しだ。いずれの指標でも米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースについての今後の見通しが変化する可能性があり、大統領選直前にS&P500に大きな波乱が起きることも考えられそうだ。
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