米国物価は上昇減速見通し 30日にPCE物価 S&P500に試練も
アメリカの7-9月期のPCE物価指数は上昇率が大きく低下する予想。仮に予想が裏切られれば金利の先高観に拍車がかかり、S&P500の見通しは暗くなりそうだ。
アメリカの物価動向で、上昇の減速基調が確認されそうだ。30日に発表される2024年7-9月期の物価上昇率は4-6月期から大きく減速する見通し。予想通りになれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が目指す物価上昇鎮静化が近づき、年内の追加利下げ観測を裏付ける株高材料になりえる。ただし11月5日に迫った大統領選挙と連邦議会選挙でドナルド・トランプ前大統領を擁する共和党の大勝の可能性が指摘される中、トランプ氏の経済政策が物価高を招くとの見方も目立つ。仮に、7-9月期の物価が予想以上の根強さを感じさせた場合には金利の先高観を後押しし、S&P500種株価指数の今後の見通しが暗くなる可能性も考えられる。
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アメリカの7-9月のPCE物価の伸び率は前期比年率2.1%の見通し
米商務省は30日午前8時30分(日本時間30日午後9時30分)に7-9月期の個人消費支出(PCE)物価指数を発表する。ロイターのまとめによると、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は前期比年率2.1%となり、4-6月期の2.8%(確定値)から大きく低下する見通しだ。FRBが目標としている2%への接近を感じさせ、米国の物価上昇の鎮静化を思わせる数字といえる。また商務省が31日に発表する9月単月のPCE物価指数は、コア指数の伸び率が前年同月比2.6%になる予想だ。
長期金利は上昇傾向 S&P500の上昇にはブレーキ
FRBはこれまでの物価上昇減速を踏まえ、9月18日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で4年半ぶりの利下げを決定。金融市場では11月と12月のFOMCでも合計0.5%幅の利下げが行われるとの見方が有力になっている。7-9月期のPCE物価指数の上昇率が予想通りに低下すれば、FRBの追加利下げ見通しを裏付けることになり、S&P500(SPX)にとって追い風になりそうだ。
しかし足元の金融市場では長期金利の上昇が続いている。LSEGによると、ニューヨーク債券市場での長期金利は28日の終値で4.278%となり、7月24日(4.286%)以来約3か月ぶりの高さとなった。10月18日の4.075%との比較では、1週間あまりで約0.2%ポイント上昇したことになる。この間、S&P500の上昇にはブレーキがかかっており、同じ期間で0.70%安となっている。
大統領選挙でトランプ氏勝利なら金利上昇も VIX指数の高止まり続く
長期金利上昇の背景には大統領選挙と連邦議会選挙で共和党が優位に立っていることがある。トランプ氏が打ち出す高関税による保護主義的な政策は物価上昇圧力を高めるとみられているほか、減税路線は経済の過熱や国債価格の下落を招き、長期金利上昇につながるとの見通しが強まっている。米政治サイト、リアル・クリア・ポリティクスの各種世論調査のまとめによると、トランプ氏が接戦州で有利に立っている状況に変わりはなく、上下両院でも共和党が多数派となる勢いだ。
こうした中で、7-9月期のPCE物価指数が想定以上の伸び率となれば、金利の先高観には拍車がかかりそうだ。S&P500にとっては逆風が強まる展開といえる。シカゴ・オプション取引所によると、ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数(VIX)の28日の終値は19.80で、前週末の20.33からは低下したものの、引き続き高水準だ。VIXはS&P500のオプション取引の動向から算出され、数値が高いほど今後の値動きが荒くなることへの警戒感が高いことを意味する。
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