円安相場が転換か 日銀総裁、利上げ見通し強める 雇用統計が焦点に
ドル円相場は31日の日銀総裁会見を機に151円台まで円高が進んだ。1日発表のアメリカの10月雇用統計の影響も注目される。
ドル円相場で続いてきた円安が転換の兆しをみせた。10月31日の取引では約1.7円の円高が進行。日本時間11月1日午前も1ドル=151円台で取引される場面が出た。31日に行われた日本銀行の植田和男総裁の記者会見が追加利上げへの距離の縮まりを感じさせたためで、金融市場では日銀が12月の金融政策決定会合で利上げを決断するとの見通しも強まっている。またアメリカ大統領選挙を材料視した米国の長期金利(10年物米国債利回り)の上昇にブレーキがかかり、円高材料として働く可能性も出てきた。ただ、1日には米国の10月雇用統計の発表を控えており、ドル円相場の今後の見通しが改めて左右される可能性もありそうだ。
ドル円相場は一時151.77円 1.7円の円高進行
LSEGによると、ドル円相場(USD/JPY)の31日のニューヨーク市場での終値は1ドル=152.03円。取引時間中には一時、151.83円をつけ、この日の高値(153.57円)から1.74円の円高が進行した。日本時間1日の取引でも、一時、151.77円をつけている。
日銀の植田総裁、時間的な余裕に言及せず アメリカ経済リスク低下
円高進行のきっかけを作ったのは日銀だ。日銀は31日までの金融政策決定会合で市場予想通り金融政策の維持を決定。植田氏はその後の記者会見で、今後の金融政策について「普通の金融政策の決定のやり方に戻る」と述べた。植田氏は9月20日の決定会合後の記者会見では、米国経済の先行き不透明感を踏まえて、追加利上げの必要性を判断するための「時間的な余裕がある」と言及。金融市場では利上げから距離を取ったと受け止められていた。
植田氏が発言のトーンを変化させた背景にあるのは米国経済の見通しの変化だ。9月時点では労働市場の悪化が米国経済への不安を強め、ドル円相場は16日には1ドル=139.56円の円高水準となっていた。しかし10月4日に発表された9月雇用統計は労働市場の堅調さを示し、改めて円安が進むきっかけを作った。植田氏は31日の記者会見で9月時点では米国経済の動向を特に注意深く見守る立場だったが、現状では米国経済をめぐるリスクの度合いは少しずつ下がってきていると指摘。「このリスクに強く光をあてて時間的余裕をもってみていくという表現は不要になる」と話した。
こうした中、金融市場では日銀が12月18、19日の決定会合で利上げするとの見通しもじわりと高まっている。ブルームバーグによると、金融市場の動向から算出される12月会合での0.25%幅での利上げの確率は、日本時間1日午前11時段階で33.2%。30日時点の24.4%から高まっている。
アメリカ大統領選挙ではハリス氏が巻き返し 長期金利上昇にブレーキかかるか
また、米国の金融市場では大統領選挙を材料視した長期金利上昇にブレーキがかかる可能性も出てきた。大統領選をめぐっては、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領が接戦州でまきかえしているもよう。共和党候補のドナルド・トランプ前大統領の勝利が物価上昇圧力となって、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースを遅らせるとの見方が弱まることも考えられるからだ。米政治サイト、リアル・クリア・ポリティクス(RCP)による世論調査のまとめでは、29日にミシガン州、30日にウィスコンシン州でハリス氏が僅差ながらもトランプ氏を逆転したとされている。
LSEGによると、米国の長期金利は29日には一時、4.339%をつけ、7月5日の高値(4.404%)以来の水準となった。今後、ハリス氏の巻き返しが注目されれば、長期金利の上昇にブレーキがかかる可能性がある。日米の長期金利差は31日の終値段階では3.349%ポイントまで広がり、7月2日(3.351%ポイント)以来の大きさとなっている。
米労働市場の見通しは? 10月雇用統計にはハリケーンやストライキの影響も
ただ、ドル円相場の今後の見通しは、米労働省が1日午前8時30分(日本時間1日午後9時30分)に発表する10月雇用統計でも大きく変化する可能性がある。非農業部門の就業者数の前月比での増加幅が大きく縮まる予想で、労働市場の先行き不安を高めかねない。ただ、10月のデータにはハリケーン「ヘリーン」や「ミルトン」による企業活動への影響や、ボーイングなどでのストライキの影響もあるとみられ、労働市場の動向やドル円相場に与える影響が読みにくくなることも考えられそうだ。
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