米国株、大統領選挙と議会選挙の両にらみ、注目は選挙直後の株価動向、ダウ平均の見通し
本日、アメリカ大統領選挙と上下両院の連邦議会選挙が行われる。選挙直後に米国株が「株高のスタートダッシュ」に成功すれば、年末高の可能性が高まろう。「トリプルレッド」ならば、バリュー株が米株高をけん引する展開が予想される。一方、「ねじれ議会」でも米株高が予想される。その理由は?
記事のポイント
・混戦のアメリカ大統領選挙、結果判明までに時間を要するとの見方も
・連邦議会の選挙では、接戦が予想される下院の結果に注目したい
・「トリプルレッド」ならバリュー株が米株高をけん引しよう
・「ねじれ議会」でも米株高となる可能性あり、その理由は?
アメリカ大統領選挙直後の「スタートダッシュ」に注目
いよいよ、アメリカ大統領選挙の投票日を迎えた。アメリカ大統領選挙レポート「年末に向けて強気相場維持か、焦点は大統領選挙直後の株価動向」で述べたとおり、大統領選挙の年の米国株は上昇する「アノマリー」がある。
2024年のアメリカ大統領選挙後もこのアノマリーが再現されるのか?この点を見極めるうえで注目したいのが、大統領選挙の直後に「株高のスタートダッシュ」を切れるかどうか?である。
2000年以降に行われたアメリカ大統領選挙とS&P500の動向を確認すると、選挙直後に株高のスタートダッシュに成功した年は、年末に向けて株高が進行するトレンドが見られる。一方、スタートダッシュに失敗した年は、年末に向けて株安となるトレンドが見られる。
2012年はかろうじて上昇した。しかし、株高のスタートダッシュに失敗したことで、上昇幅は限定的だった。
S&P500の動向:アメリカ大統領選挙後から各年の年末まで
ブルームバーグのデータで筆者が作成
混戦のアメリカ大統領選挙
米RealClearPoliticsが集計した世論調査の平均では、民主党のハリス候補と共和党のトランプ候補の支持率が48.5%と拮抗している(11月4日時点)。
NBCの世論調査でも両候補の支持率は五分五分の状況にある(11月3日時点)。一方、ABCの世論調査ではハリス候補がリードしている(11月4日時点)。
各世論調査による両候補の支持率
出所:RealClearPolitics / NBC / ABC
2日に公表されたアイオワ州の世論調査で、ハリス候補の支持率がトランプ候補のそれを上回ったとの報道が見られる。2016年と2020年の大統領選挙ではトランプ候補がアイオワ州で勝利した。共和党優位の州でハリス候補が巻き返しをはかっている状況も混戦模様に拍車をかけている。
アメリカ大統領選挙の行方は、7つの激戦州で優勢に選挙戦を進めた候補者が勝利するだろう。大手メディアの記事では、激戦州は文字通り「激戦」になるとの内容が見られる。NHKはRealClearPoliticsによる各種世論調査の支持率の平均を引用し、日本時間の5日午前3時の時点でトランプ氏が48.5%、ハリス氏が47.8%と伝えている。
より重要なのは連邦議会選の行方
アメリカ大統領選挙と同時に、上下両院の連邦議会選挙が行われる。上院は共和党が制するとの見方がある。一方、下院は接戦が予想されている。
上院のみに与えられている権限は条約の批准と承認、そして人事(大統領が指名する各省の長官や最高裁判事)の承認などに限られている。ゆえに、アメリカの議会において上院と下院は対等の権限を有している。法律の制定で両院の見解が異なる場合は、協議会で調整が行われる。
混戦模様のなか投票日を迎えたアメリカ大統領選挙だが、トランプ候補有利との一部報道が見られる。実際にトランプ候補がホワイトハウスに返り咲き、上下両院とも共和党が制する場合は「トリプルレッド」になる。このケースでは、トランプ陣営が掲げるトランプ減税の恒久化などの主要な政策が議会を通る可能性が各段に高まることになる。
一方、議会選挙で接戦の下院を民主党が制する場合は、アメリカ議会で「ねじれ」が生じることになる。このケースでは、議会で上下両院とも対等の権限を有している以上、下院では共和党とトランプ候補が掲げる減税政策などの審議が滞ることが予想される。
ハリス候補が大統領選挙で勝利しても、上院を共和党が制する場合は、同じ状況(ねじれ議会)に陥ることになる。
「トリプルレッド」ならバリュー優勢の米株高を想定
アメリカ大統領選挙と連邦議会選挙で「トリプルレッド」が実現すれば、株式市場では減税政策への期待が高まろう。
減税政策は米長期金利の押し上げ要因となり、銀行の利ザヤ収益拡大の期待を高める要因になり得る。またトランプ政権は、石油や天然ガス業界の規制緩和を強力に推し進めることで、米国をエネルギー大国に導こうとするだろう。
トリプルレッドならば、エネルギーセクターや金融セクターなどのバリュー株が米株高をけん引することが予想される。バリュー株にけん引され、米国株は年末に向けて上昇する可能性が高まろう。
正念場のダウ平均、目先の見通し
「トリプルレッド」とバリュー株の買いを想定する場合は、ダウ平均に注目したい。今週8日、インテルに代わりエヌビディア(NVDA)がダウ平均の構成銘柄に組み込まれる。次第にハイテク色の強さが増すダウ平均だが、依然としてバリュー株の影響も受けやすい。
そのダウ平均は現在50日線を下抜け、下落幅が拡大するかどうかの正念場にある(下のチャート、青ラインを参照)。10日線と21日線でデッドクロスが確認され、かつMACDがゼロラインを下回ってきた状況も考えるならば、8月安値と10月高値で算出される各フィボナッチ・リトレースメントの攻防を想定しておきたい。38.2%戻しはサポート転換が確認された水準である。61.8%戻しは8月15日以降、サポートラインとして相場を下支えした経緯がある。
上記のリトレースメントの水準をトライする場合、ダウ平均がこれらの水準で反発するかどうか?は、上で述べた大統領選挙後の「株高のスタートダッシュ」にかかっている。これに成功すれば、まずは10日線と21日線の上方ブレイクを確認したい。後者の21線を突破すれば、最高値を視野に上昇幅の拡大を想定したい。
ダウ平均のチャート:日足 2024年7月以降
出所:TradingView
米議会の「ねじれ」でも株高か
一方、上院を共和党、下院を民主党が制する場合、アメリカ議会は「ねじれ」の状況に陥る。上で述べたとおり、上院と下院は議会において対等の権限を有する。「ねじれ議会」となれば、ハリス候補とトランプ候補、どちらが大統領選挙で勝利しても、選挙で掲げた政策がなかなか議会を通らないことになるだろう。
アメリカの議会が「ねじれ」の状況に陥っても、筆者は米国株が上昇すると予想している。そう考える理由は2つある。ひとつは、「両党の妥協」である。議会で民主党と共和党がお互いをけん制するだけでは、政治の停滞を招く。政治が停滞すれば社会の不満が高まり、有権者の反発を招くだろう。次の中間選挙に向けて有権者の支持を繋ぎ止めるためにも、民主党と共和党はお互いが妥協できるラインで手を打ち、有権者のために政策を実現したのは自分たちだ、とアピールするだろう。
また、大統領選挙でハリス候補が勝利する場合、アメリカ議会の「ねじれ」は米国株にとって好都合である。ハリス候補が掲げる法人税率の引き上げ(21%から28%に引き上げる増税案)の成立を阻むことに役立つからだ。
以上2つの理由から、アメリカの議会が「ねじれ」の状況に陥っても、大統領選挙直後の「株高のスタートダッシュ」に成功すれば、米国株は年末に向かって上昇することが予想される。
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