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米国物価に過熱感か 31日にPCE指数 S&P500下落おそれ

アメリカの4月PCE物価指数は3月から横ばいとなる見通し。長期金利の上昇が進む中、根強い物価上昇がS&P500を下押しするおそれがある。

米国物価に過熱感か 31日にPCE指数 S&P500下落おそれ 出所:ゲッティ

アメリカの物価上昇の過熱感に金融市場が神経を尖らせている。31日に発表される4月の個人消費支出(PCE)物価指数の伸び率は3月から横ばいの予想。物価上昇率の沈静化が進んでいないとみなされれば、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ見通しはさらに後退することになりそうだ。こうした中、米国の長期金利(10年物米国債利回り)は29日に4.6%台まで上昇しており、S&P500種株価指数は1.47%安の大幅な下落。半導体大手NVIDIA(エヌビディア)を除けば株価の動きは冴えない。FRBも物価上昇の根強さへの警戒を強めており、4月PCEの結果がS&P500に下落圧力をかけることも考えられる。

4月のPCE物価指数の伸び率は3月から横ばいの見通し

米商務省は31日午前8時30分(日本時間31日午後9時30分)に4月PCE物価指数を発表する。ロイターがまとめた事前予想では、総合指数の伸び率は前年同月比2.7%、食品とエネルギーを除いたコア指数の伸び率は2.8%となる見通し。いずれも3月の実績と同じ水準だ。15日に発表された4月消費者物価指数(CPI)の伸び率は3月から低下したが、4月PCE物価指数は物価上昇の根強さを意識させる可能性がある。

アメリカのPCE物価指数の伸び率の推移のグラフ

物価上昇の根強さが確認されれば、FRBの利下げ見通しはさらに弱まりそうだ。CMEグループのデータによると、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて投資家の動向から算出される確率は、日本時間30日午前11時現在で47%程度。15日には72%まで上がっていたことを考えれば、利下げへの期待はすでに後退が進んでいる。4月CPIは物価上昇の過熱感を和らげたとはいえ、投資家はまだ安心しきっているわけではない。

アメリカの長期金利は4.6%台に S&P500は大幅下落

こうしたムードは長期金利の上昇として現れている。29日のニューヨーク債券市場の長期金利の終値は4.624%で、前日から0.082%ポイント上昇。4月30日以来、約1か月ぶりの4.6%台となった。金利上昇は株式市場にとっての重荷となり、S&P500(SPX)は前日比1.47%安に見舞われている。下落率は4月30日(1.57%安)以来の大きさだ。

S&P500とアメリカの長期金利の推移のグラフ

前日はイーロン・マスク氏が手掛ける人工知能(AI)ベンチャーの資本調達が好材料となって上昇した半導体株も29日は下落が目立ち、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)は前日比3.77%安、クアルコム(QCOM)は2.26%安だった。S&P500構成銘柄ではないものの、英半導体大手アーム・ホールディングス(ARM)も3.43%安だった。これに対してエヌビディア(NVDA)は4営業日続伸の0.81%高と気を吐いたが、勢いは衰えている。

S&P500と主な半導体株の値動きの推移のグラフ

FRBも物価上昇の高止まりを警戒

物価上昇率の高止まりに対してはFRBも警戒感を強めている。ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は28日、CNBCのインタビューで物価上昇率が目標の2%まで下がるという確信を得るには時間がかかると言及。利上げという選択肢は排除されているのかとの質問に対して、「現段階では何も排除すべきではない」と答えた。

一方、PCE物価指数の上振れが必ずS&P500の下落につながるわけではない。3月PCE物価指数が発表された4月26日は、伸び率が予想よりも高かったにも関わらずS&P500は1.02%高となった。ただしこの際は前日に2024年1-3月期決算を発表したアルファベット(GOOGL)の株価が10.22%高となるなど、大手ハイテク株に追い風が吹いていたという要因もあった。4月PCE物価が予想を上振れれば、S&P500の今後の見通しが暗くなることは避けられなさそうだ。


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