米国株に金利高の壁 S&P500の見通しに影 半導体株は急騰継続
アメリカの株式市場はエヌビディアなど半導体株が急騰。しかしその他の大手ハイテク株は勢いづかず、S&P500は金利高に足を引っ張られた。
アメリカの株式市場に金利高の壁が立ちはだかった。28日のS&P500種株価指数の終値は前週末比でわずかな値上がり。長期金利(10年物米国債利回り)がおよそ3週間ぶりに4.5%台まで上昇したことが嫌気された。一方、28日の株式市場では人工知能(AI)ブームの追い風を受ける半導体株が急騰。中でもNVIDIA(エヌビディア)の株価は約7%高となり、22日の決算発表以来の勢いが続いている。ただ、半導体需要の拡大の裏側には、大手ハイテク企業の投資コスト拡大というマイナス要因も潜む。S&P500の上昇が勢いづくには、金利水準の低下が大手ハイテク株の見通しを改善させることが必要ともいえそうだ。
アメリカのS&P500は小幅高止まり 長期金利4.5%が重荷
28日のS&P500(SPX)の終値は3連休前の前週末と比べて0.03%高の5306.05。15日に記録した最高値(5308.13)付近とはいえ、勢いに欠く結果となった。投資家心理を冷やしたのは長期金利の上昇だ。LSEGによると、28日のニューヨーク債券市場の長期金利の終値は4.542%で、5月10日以来の4.5%台だった。金利水準の上昇は株式の投資先としての魅力を相対的に低くする株安要因だとされる。
エヌビディアなどの半導体株は上昇継続
一方、28日の株式市場では半導体株が急上昇し、エヌビディアの株価(NVDA)は前週末比6.98%高となった。2024年2-4月期決算発表翌日の23日から3営業日続伸だ。このほか、アドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)も3.16%高となり、2営業日連続で3%台での上昇。S&P500構成銘柄ではないものの、ソフトバンクグループ(9984)子会社で英半導体大手のアーム・ホールディングス(ARM)も8.98%高となり、3営業日続伸している。
28日の半導体株を押し上げた背景にはAIブーム継続の見通しが強まったことがある。電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスクCEOが手掛けるAIベンチャー「xAI」が26日、有力ベンチャーキャピタルなどから60億ドルを資本調達したと発表したことが好材料となった。AI開発に不可欠な半導体への需要が高まるとみられるためだ。AIベンチャーをめぐっては、マイクロソフトの出資を受ける「オープンAI」や、アマゾン・コムが3月に40億ドルの投資を完了した「Anthropic(アンソロピック)」なども事業展開を積極化させている。
半導体株の上昇は大手ハイテク株の見通しには逆風か?
ただ、こうしたAI開発の加速は大手ハイテク株にとっては逆風として働く可能性もある。AIサービスの収益化への道筋が明確ではない中、AI投資の拡大は各社の業績見通しを悪化させる要因といえるからだ。28日の株式市場ではテスラの株価(TSLA)が前週末比1.39%安、マイクロソフト(MSFT)は0.04%高に留まった。アマゾン(AMZN)は0.77%高と堅調だったが、値上がりは6営業日ぶりだ。4月下旬以降の1-3月期決算発表シーズンでは、メタ・プラットフォームズ(META)がAI関連投資を含む設備投資額の増加見通しを示したことが嫌気され、発表翌日の株価が10%超値下がりする場面もあった。
半導体株が勢いづいても長期金利が高止まりする中では、大手ハイテク株への期待は高まらず、S&P500全体を押し上げる効果は削がれる。米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに向かうとの見通しは、4月雇用統計での労働市場の過熱感の和らぎや、4月消費者物価指数(CPI)の伸び率が3月から低下したことで維持されたものの、S&P500の上昇が加速するには米国経済の改善を示すデータが積み重なっていくことが必要といえそうだ。
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