【ドル円 (USDJPY)】今週の見通しとチャートポイント
10月の米雇用統計では雇用の鈍化と賃金インフレの抑制傾向が確認され、米金利の低下圧力を高める要因となった。今後の経済指標で米景気の減速と後退の可能性が示される場合、米債市場のトレンド転換を意識することになろう。今週のドル円の見通しと注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※今週の豪ドル/米ドルの焦点と展望については、こちらのレポートをご覧ください
サマリー
・さえない経済指標は、米債市場のトレンド転換を促す要因になり得る
・米金利の低下幅が拡大する場合は、米ドル高トレンドの終焉を意識することになろう
・今週のドル円の焦点は、新たなサポート水準の見極めにある
・ドル円が反発しても、上昇幅は限定的となることが予想される
さえない米経済指標
先週3日に発表された米国の重要経済指標は、総じてさえない内容となった。
市場参加者が注目した10月の雇用統計では、非農業部門雇用者数変化が15万人と市場予想の18万人を下回った。前月分も33.6万人から29.7万人へ下方修正された。失業率は3.8%から3.9%へ上昇した。
そして賃金(平均時給)は前月比で0.2%増と、9月の0.3%増から低下した。また、前年同月比でも4.1%と、前月の4.3%から低下した。
10月の雇用統計では雇用の伸びが鈍化すると同時に、賃金インフレの抑制傾向が確認された。
米国の雇用統計 各項目の動向:22年10月以降
また、同日に発表された10月 のISM非製造業景況指数は51.8と、9月の53.6から低下した。新規受注は55.5と、9月の51.8から上昇したものの、雇用は53.4から50.2へ低下した。仕入価格も58.9から58.6へ低下した。
新規受注の伸びは、サービス業の根強い堅調さを示唆している。しかし、総合で見れば、その勢いが鈍化の傾向にあることが示された(下チャートの赤ラインを参照)。
一方、10月のサービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値は50.6と、景気判断の分かれ目である「50」以上の水準を維持した。しかし、速報値の50.9からは下方修正された。
今後、米国経済を支えているサービス部門の鈍化傾向が鮮明となる場合は、景気の減速と後退の可能性を各市場の参加者に意識させるだろう。
米国 ISM非製造業景気指数とサービス部門購買担当者景気指数の動向:22年10月以降
米債市場のトレンド転換を意識する局面に
さえない内容となった10月の雇用統計は、米国債を買い戻す要因となった。その結果、先週3日の市場で10年債利回りは、一時4.4%台まで急低下する局面が見れた。
一方、短期金融市場では、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率が、10%を割り込む状況にある。
ISM非製造業景気指数と購買担当者景気指数(PMI)に続き、今後発表される重要経済指標-物価関連の経済指標でインフレの鈍化傾向が示唆され、景気関連の経済指標で個人消費や景気の減速が確認される場合は、近い将来の米債市場のトレンド転換を想定することになろう。
米長期金利(10年債利回り)のチャート:日足 23年4月以降
米ドル高トレンドの終焉を意識する状況に
米債市場で利回りの低下基調が続く場合、外為市場では今年の7月下旬から始まった米ドル高のトレンドが終焉する可能性が高まるだろう。
日足チャートで米ドル相場の方向性を示すドルインデックス(DXY)のトレンドを確認すると、今月1日に日足ローソク足が下落を暗示するトウバのかたちとなり、2日に陰線引け。
そして3日の大陰線で50日線とフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準105.51レベルをことごとく下方ブレイクした。また、21日線が相場の上昇を止めた。チャート分析を重視するならば、米ドル高のトレンドが終焉に向かうトレンドへ転じていることを意識する局面に差し掛かっている。
「米金利の低下→米ドル安」が続く場合、次の焦点は5月31日の高値104.70レベルの攻防となろう。すぐ下の104.38レベルは、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準にあたる。
今週も米金利の低下が続く場合は、これら2つのチャートポイントをも下方ブレイクする状況を想定しておきたい。
ドルインデックスのチャート:日足 23年4月以降
ドル円、今週の見通しとチャートポイント
焦点は新たなサポートの水準の見極め
上で述べた米債市場とドルインデックス(DXY)の状況を考えるならば、今週のドル円(USD/JPY)は下値トライを意識する局面が多く散見されると予想する。
ゆえに今週の焦点は、新たなサポートの水準を見極めることにあろう。
日足チャートでドル円の動向を確認すると、3日連続で陰線引けとなり、21日線(今日現在149.75レベル)を下方ブレイクする状況にある。
21日線は9月以降、相場をサポートしてきた経緯がある。ゆえに21日線の下方ブレイクは、テクニカルの面でもドル円が下値をトライするシグナルになり得る。
また、MACDは緩やかながらも下降のトレンドにある。この状況も、ドル円の地合いの強さが後退していることを示唆している。
ドル円のチャート:日足 23年7月以降
注目しておきたい下値のチャートポイント
今週、ドル円(USD/JPY)が下値をトライする場合、最初の焦点は50日線の攻防となろう。この移動平均線は今日現在、148.65レベルで推移している。
トレンドチャネルの下限を完全に下方ブレイクする場合は、50日線をトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円が50日線をも下方ブレイクする場合、次の焦点は75日線の攻防が焦点として浮上しよう。この移動平均線は今日現在、147.06レベルで推移している。10月3日に円高へ振れた局面では、147.30レベルで相場がサポートされた経緯がある。
ゆえに、ドル円が50日線や148.00レベル(下の4時間足、半値戻しの水準148.08レベル)を完全に下方ブレイクする場合は、147円台の維持(75日線の維持)に成功するかどうか?この点に注目したい。
147円前半の攻防は、フィボナッチ・リトレースメントの観点でも重要な焦点である。147.22レベルは、9月安値と直近高値の61.8%の水準にあたる(下の4時間足チャートを参照)。
上で述べた10月3日の下落が、このテクニカルポイント(フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準147.22レベル)のすぐ上で止められた経緯も考えるならば、今週ドル円が下値をトライする局面では147円前半までの下落と、この水準で相場が反転する展開をシナリオの一つとして想定しておきたい。
ドル円のチャート:4時間足 9月以降
反発局面での焦点は?
一方、ドル円(USD/JPY)の反発局面では、21日線(今日現在149.75レベル)の攻防が最初の焦点となろう。
ドル円がこの移動平均線を完全に上方ブレイクする場合、次の焦点は今月3日の高値150.52レベルそして2日の高値150.93レベルの攻防となろう。
米金利の上昇圧力が後退している状況を考えるならば、ドル円の反発は限定的となることが予想される。ゆえにドル円の反発局面では、上で述べた水準での反落を警戒しておきたい。
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