今週の注目材料 /ドル円の展望とテクニカルポイント
FOMC関係者が金融政策についての発言を禁じられるブラックアウト期間に入るなか、外為市場は引き続き経済指標にらみの展開が予想される。今日は5月のISM非製造業景気指数が材料視される可能性があろう。今週のドル円の展望は?注目しておきたいテクニカルポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※ポンド円の見通しについてはこちらのレポートをご覧ください
サマリー
・5月の米雇用統計に対する各市場の反応
・雇用増でも6月FOMCでの利上げ見送りが意識される状況に
・米国はブラックアウト期間入り、外為市場は経済指標にらみの展開が続く
・ドル円、今週の展望と上下のテクニカルポイントについて
5月の米雇用統計に対する各市場の反応
米労働省が2日に発表した5月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は33.9万人増と市場予想の19.5万人増を大幅に上回った。また、4月の就業者数は25.3万人から29.4万人に上方修正された。
5月の失業率は3.4%から3.7%へ上昇した。失業率は家計調査に基づいており、雇用者調査よりもサンプル数が少なく、また調査の対象となる就労関連の数字が変動しやすい。よって、今回の失業率の上昇が労働市場の減速を示していると安易に考えることはできない。
一方、5月の平均時給は前月比で0.3%増と市場予想と一致し、前月の0.5%増から低下した。また、前年比は4.3%増と前月の4.4%増から低下し、賃金インフレの懸念を後退させる内容となった。
アメリカの非農業部門雇用者数、失業率、平均時給の推移
今回の雇用統計を受け、米債市場では利回りが上昇した。しかし、外為市場では米ドル相場の全面高という展開にはならず、主要通貨で売り買いが交錯した。次回の連邦公開市場委員会(FOMC、6月13-14日)の利上げ見送りが根強く意識されている状況が、米ドル買いの圧力を抑制したと考えられる。
米ドル相場の動向:6月2日
FEDウォッチツールで6月FOMCの織り込み状況を確認すると、0.25%の利上げ確率が20%台で推移している。
先週、FOMCメンバーのジェファーソン連邦準備制度理事会(FRB)理事とハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の金利据え置き発言を受けて利上げの確率が20%台まで一気に低下した。5月の雇用統計で雇用増が確認されても、利上げの確率に大きな変化が見られない状況は、FOMCメンバーの考えに変化を与えるほどのインパクトが今回の雇用統計にはなかったことを示唆している。
6月FOMCの政策動向
今週の注目材料
6月3日からFOMCメンバーが金融政策についての発言が禁じられるブラックアウト期間に入っている。よって、今週の外為市場は引き続き経済指標にらみの展開が予想される。
注目はやはり米国の経済指標となろう。本日は5月のISM非製造業景況指数がある。市場予想は52.4と、前月の51.9から改善する見通しとなっている。
先週2日の米債市場は、賃金インフレの抑制よりも雇用増の方に反応した。ゆえに、ISM非製造業景況指数が予想以上に強い内容となれば、米金利は上昇で反応することが予想される。
米金利の上昇は米ドル買いの要因である。しかし、強いISM非製造業景況指数を受けても6月利上げの可能性が高まらない場合、米ドル相場の全面高は期待できない。
また、6月の利上げ見送り観測が根強いなかで強い経済指標が確認される場合、米国株は景気リスクの後退の方が意識されることで上昇することが予想される。
日本株は高値圏での攻防となっている。また、欧州株式が反発している状況も考えるならば、ISM非製造業景況指数が強いとなる場合は、リスク選好相場で売られやすい円やスイスフランなどで米ドル買いの圧力が高まることが予想される。
なお、ISM非製造業景況指数以外では、米新規失業保険申請件数や中国の各経済指標が材料視される可能性がある。
アメリカ ISM非製造業景況指数の推移
※赤グラフ:5月の市場予想予想
ドル円の展望とテクニカルポイントについて
上昇トレンドを維持する日米の株式市場
日本株は現在、割安感や東証による低PRBの改善に向けた動き、そして主要企業による株主への還元姿勢が評価され、上昇トレンドを維持している。
一方、米国の株式市場は金利が上昇しても株高トレンドを維持する状況にある。今年の3月に米国では金融システム不安が発生した。しかし、S&P500種株価指数(SPX)は3月中旬以降、金融システム不安の影響を跳ね除け上昇トレンドを描いている。
一方、東証株価指数(TOPIX)も今年の3月16日を境に上昇トレンドへ転じるとその勢いを維持し、6月2日時点ではS&P500指数を上回る上昇率となっている(通貨調整なし)。
日米株式のパフォーマンス:23年3月以降
※米ドル建ての上昇率:TOPIXが6.27% / S&P500指数は7.86%
株高と円安
日米の株高(リスク選好相場)は、円安の要因である。
日米の株式市場が上昇トレンドへ転じた今年3月の第3週目以降からの円相場のパフォーマンスを確認すると、主要通貨で円安が進行していることが分かる。
日米の株式市場が株高トレンドにある状況で、米金利が再び上昇基調へ転じる場合、ドル円(USDJPY)の上昇が予想される。この点は、先週2日の米ドル相場のパフォーマンスが示唆している(一番上のパフォーマンスチャートを参照)。
5月ISM非製造業景況指数や新規失業保険申請件数が予想以上の強さを見せる場合、米金利は反発基調を維持することが予想される。
日米の株高維持と米金利の上昇が同時に発生する場合、ドル円は以下で述べるレジスタンスポイントの攻防が焦点となろう。
円相場のパフォーマンス
今週のテクニカルポイント
ドル円(USDJPY)は現在、10日MA(139.68レベル)を挟んで上下に振れている。
上で述べたとおり、株高と米金利の上昇が同時に発生する場合、ドル円の上昇が予想される。このケースでは、141.00レベルのブレイクアウトが焦点となろう。5月30日にドル円は、高値140.93レベルで上昇が止められた。この水準の突破は、141.00トライのシグナルと想定しておきたい。
一方、ドル円が141.00レベルをトライしても突破に失敗する状況が続く場合は、反落を警戒したい。その要因として考えられるのが、さえない経済指標による米金利の低下である。株高の調整もドル円の反落要因だが、米金利と高い相関関係(順相関の関係)を維持するドル円の特性を考えるならば、米金利の低下の方がドル円の反落圧力を高めるだろう。
ドル円が反落する局面では、先週相場をサポートした138円ミドルの維持が焦点となろう。
ドル円がこの水準(138円ミドル)を下方ブレイクする場合は、129.64レベルを起点としたフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準(138.27レベル)の攻防が次の焦点となろう。すぐ下の水準は、133.73レベルを起点としたフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準(138.18レベル)である。
ドル円が139円台を下方ブレイクする場合は、138.20レベルがサポートポイントとして意識されるかどうか?この点を確認したい。
ドル円のチャート
変動幅が拡大する場合のチャートポイントは?
6月13-14日にFOMCが控えていることを考えるならば、今週のドル円(USDJPY)はレンジ相場となる可能性がある。その上限として注目しておきたいのが、上で述べた141.00レベルである。
強い内容の経済指標が続けばドル円は、レンジの上限141.00レベルをブレイクアウトする可能性がある。実際にこの展開となれば、昨年11月23日の高値141.61レベルのトライおよびブレイクが次の焦点となろう。
ドル円がこの水準(141.61レベル)をも難なくブレイクアウトすれば、142.00レベルのトライが焦点として浮上しよう。テクニカルの面ではフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準142.50レベルの攻防となるかどうか?この点に注目したい。
一方、「さえない経済指標→米金利の低下」でドル円の下落幅が拡大する局面では、138.00レベルの維持が焦点となろう。この水準でのサポート転換が確認される場合は、ドル円の地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
21日MAが今日現在、138.00レベルのすぐ下まで上昇している。テクニカルの面でも138円の維持は重要な焦点となろう。
ドル円が138.00レベル(21日MA)をもあっさりと下方ブレイクする場合は、下落幅の拡大を警戒したい。このケースでは、129.64レベルを起点としたフィボナッチ・リトレースメントの38.2%の水準136.62レベルおよび半値戻しの水準135.29レベルの維持が焦点として浮上しよう(上の4時間足チャートを参照)。
なお、5月上旬に相場をサポートした50日MAが今日現在、135.45レベルで推移している。
ドル円のチャート
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