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【週間展望】後退する米ドル高の圧力、しかしFRB高官の発言次第で今週の米ドル相場は反発も

利下げ観測が揺れ動くなか、今週は多くのFRB高官が講演などのイベントに参加する。経済と金融政策に関する発言内容が米金利と米ドル相場の変動要因となろう。タカ派の内容が続く場合は、米ドル相場の反発を想定しておきたい。今週のドルインデックス(DXY)の焦点は、2つの移動平均線の攻防となろう。


サマリー

・5月以降、外為市場はじわりと米ドル高の圧力が後退している
・今週は多くのFRB高官らが講演などのイベントに参加する
・利下げ慎重論がクローズアップされる場合は、米ドル相場の反発が予想される
・5月の購買担当者景気指数(PMI)速報値も米金利と米ドル相場の変動要因となろう


外為市場の動向:じわりと後退する米ドル高の圧力

5月に入り外為市場では、米ドル高の圧力がじわりと後退している。先週も対主要国の通貨で米ドル安優勢の展開となった(下のチャートを参照)。

米ドル相場の動向:5月13日の週

米ドル相場の動向:5月13日の週 米ドル相場の動向:5月13日の週

上値の重さを示唆するドルインデックス

米ドル相場の大まかなトレンドを示すドルインデックス(DXY)の動向も、米ドル高の圧力がじわりと後退している状況を示唆している。

この点を日足チャートで確認すると、4月16日以降、106.50レベルが強固なレジスタンスとして意識され、水準がじりじりと切り下がっている。この過程で10日線(今日現在104.94レベル)がレジスタンスのラインとして相場の反発を止める状況にある(下のチャート、青ラインを参照)。

また、先週17日の市場では50日線(今日現在104.83レベル)が相場の反発を止め、レジスタンスラインとして意識される可能性を示唆した(下のチャート、緑ラインを参照)。

しかし、日足のモメンタムは再びゼロラインに向かって上昇し始めている。弱気相場の勢いが後退していることを示唆する動きが見られる点は要注意(下のチャート、赤矢印を参照)。

ドルインデックスのチャート:日足 23年12月以降

ドルインデックスのチャート:日足 23年12月以降 TradingView提供のチャートで作成

FRB高官の発言次第では再び米ドル高も

今週、米ドル相場のトレンドを左右する要因として注目したいのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官らの発言である。

今週20日にアトランタ連銀主催の会議でFRBのバー副議長が金融政策と銀行規制について基調講演を行う。アトランタ地区連銀のボスティック総裁とクリーブランド地区連銀のメスター総裁は、ブルームバーグのインタビューに応える。また、ジェファーソン副議長が米経済見通しと住宅価格動向について講演を行う。

21日以降もリッチモンド地区連銀のバーキン総裁、ニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁、シカゴ地区連銀のグールズビー総裁など、多くのFRB高官らが講演等に出席する。

注目は、タカ派で知られるウォラーFRB理事の言動である。同氏は21日(日本時間21日22時)に米国の経済と金融政策の見通しについて講演を行う。4月の雇用統計は労働市場の軟化を示し、同月の消費者物価指数(CPI)は、インフレが鈍化の傾向にあることを示唆した。しかしウィリアムズ総裁、メスター総裁そしてバーキン総裁らは先週、インフレ率が目標の2%に到達するとの確信を得るには、まだ時間が必要との見解を示した。

ウォラー理事が利下げについて言及する場合、慎重な姿勢をあらためて示せば、9月利下げの観測が再び後退することが予想される。利下げ期待の後退は米金利の反発要因となろう。

また、ウォラー理事を含め、今週のFRB高官の発言内容が総じて“タカ派”と米債市場の参加者に受け取られる場合は、米金利の上昇幅が拡大することで、外為市場では米ドルのショートカバー(買戻し)が予想される。

ドルインデックス(DXY)は、レジスタンスのラインとして意識されている10日線の突破を想定しておきたい(上のチャート、青ラインを参照)。

FRB高官の主な講演の日程と内容

FRB高官の主な講演の日程と内容 日程・講演の内容:ブルームバーグより

購買担当者景気指数(PMI)も変動要因に

FRB高官らの発言以外で、今週の米金利と米ドル相場の変動要因となり得るのが、23日の5月購買担当者景気指数(PMI)速報値である。

5月は非製造業が持ち直す一方、製造業は景気判断の分かれ目となる「50」を下回る見通しである。

4月のISM指数は、製造業と非製造業でともに景気判断の分かれ目である「50」を下回った。

一方、同月の小売売上高は、ガソリン価格の高騰でガソリンスタンドが前月比3.1%増となり、他の支出が減少する要因となった。また、3月分も総じて下方修正され、個人消費の勢いに減速感が見られた。

企業活動の縮小と個人消費の減速感が確認された状況で、5月の購買担当者景気指数(PMI)速報値が予想外に低下する場合は、利下げ観測を高める要因となろう。このケースでは、米金利の低下と米ドル安の展開を想定しておきたい。
しかし、購買担当者景気指数(PMI)が米ドル安の要因となっても、多くのFRB高官らが講演などで利下げについて慎重な姿勢を示す場合、PMIが米ドル安の要因となっても、一時的な動きで終わると予想する。

一方、FRB高官らが利下げについて慎重な姿勢を貫くと同時に、購買担当者景気指数(PMI)が予想以上に上昇する場合は、「米金利の上昇幅が拡大→米ドルのショートカバー(買戻し)」の展開を想定しておきたい。

米国 購買担当者景気指数(PMI)の動向:23年4月以降

米国 購買担当者景気指数(PMI)の動向:23年4月以降 ブルームバーグのデータをもとに筆者が作成 / 赤ドット:5月の市場予想

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