ドル円 今週の見通し:揺れる日銀の12月利上げ観測、CPIで米ドル安進行なら下落の拡大を警戒
今週は11月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。インフレ鈍化の傾向が確認される場合は、米ドル安優勢の展開が予想される。円高が同時に進行すれば、ドル円の下落幅が拡大するだろう。しかし、下落局面での急反発には警戒したい。ドル円の週間見通しについて。
強い米雇用統計でも米金利は低下、今週の外為市場は米ドル安優勢か
今週の外為市場は、米ドル安が進行する展開を想定しておきたい。その理由を以下にまとめた。
・11月の米雇用統計では、失業率が4.2%へ上昇した。しかし、市場予想は4.1%もしくは4.2%が多く、今回の結果は予想の範囲内と言える。一方、非農業部門雇用者数は前月から22.7万人増加した。10月分は1.2万人増から3.6万人増に上方修正された。平均時給は前月比で0.4%増、前年同月比で4.0%増と、いずれも市場予想を上回った
・一見すると11月の雇用統計は、アメリカの労働市場が底堅さを保っている印象を与える。しかし堅調と思われるその裏では、労働市場がじわりと軟化の傾向にあることが示唆された。例えば失業の理由については、一時解雇を除く失業者と正規雇用の失業者の数が増加傾向を維持した
米雇用統計 失業の理由:21年11月以降(過去3年間)
ブルームバーグのデータで筆者が作成
・また、雇用先が複数ある労働者の数も増加した。特に第1以外の雇用先が非正規の労働者である数が増加した状況は、正規雇用先の所得のみでは生活が厳しい状況にある労働者の数が増えている可能性を示唆している
米雇用統計 複数の雇用先がある労働者:21年11月以降(過去3年間)
ブルームバーグのデータで筆者が作成
・11月雇用統計の内容に米金利は低下で反応した。2年債利回りは4.1%を割り込む局面が見られた。10年債利回りは10月21日以来となる4.12%台まで低下する局面が見られた。先週は、11月のISM製造業景気指数や10月のJOLTS求人件数が市場予想を上回った。強い経済指標が続いても米金利が低下している状況を考えるならば、今週の外為市場は米ドル安の進行を想定しておきたい
米金利のチャート:5分足 12月6日以降
注目の11月消費者物価指数(CPI)、インフレ鈍化なら米ドル安を促す要因に
今週の外為市場で米ドル安が進行する要因として注目したいのが、11日に発表される11月消費者物価指数(CPI)である。注目ポイントを以下にまとめた。
・ブルームバーグがまとめた市場予想では、前月比と前年同月比でともにインフレの鈍化が一服する見通しにある
米国の消費者物価指数:月次 23年11月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
・米連邦準備制度理事会(FRB)が物価指数として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は10月に前年同月比で2.3%、コア指数は同比2.8%といずれも9月から上昇し、インフレの粘着性が確認された。11月のCPIでも同じ状況が示される場合は、来年1月以降の利下げパスに対する不透明感を高める要因となろう。この不透明感は、米金利の反発と米ドルの買い戻し要因になり得る
・注目は米CPIが予想どおりとなるか、または下回る場合である。現在の米債市場では強い経済指標が材料視されず、金利は低下基の調にある。この状況で11月CPIが市場予想を下回れば、米金利のさらなる低下を促す要因となろう。米金利の低下は、米ドル安の進行を促すだろう
揺れる日銀の追加利上げ観測、今週半ば以降は円高と米ドル安の同時進行も
今週の外為市場では、米ドル安と同時に円高が進行する可能性がある。円高の要因として注目したいのが、日銀の追加利上げに対する市場の思惑である。注目ポイントを以下にまとめた。
・短期金融市場では、日銀が来週18-19日に開かれる今年最後の金融政策決定会合で追加の利上げに踏み切る確率が大きく揺れている。円安が抑制された先週は、利上げ確率が30%台まで低下した
・しかし、11月の米雇用統計後にドル円(USD/JPY)が149円台へ下落し、クロス円でも円高が進行したが、利上げ確率は60%台へ上昇した。11月の米CPIで米ドル安が進行しても、日銀の追加利上げが意識される場合は、米ドル安と円高が同時に発生する展開が予想される。今週の半ば以降のドル円は、突発的に下落幅が拡大する可能性がある
日銀 政策金利の予想推移:日次 11月以降、12月6日時点
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく12月会合の利上げ確率
円買い越しへ転じる投機筋
海外の投機筋も日銀の追加利上げを意識する動きを見せている。注目ポイントを以下にまとめた。
・米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、非商業部門の円ポジションがネットロング(買い越し)へ転じた
・円の買い越しはわずかであり、かつ12月3日までのデータである点を考慮すると、先週4日以降は再びネットショート(売り越し)へ転じている可能性はある。しかし、11月中旬以降の動きを見るとロング(買い)が増加の傾向にある一方、ショート(売り)は減少の傾向へ転じている
・投機筋がじわりと円買いポジションへ舵を切っている状況もまた、日銀の利上げを意識した動きと考えられる
投機筋のポジション動向:週次 24年9月以降
米国商品先物取引委員会(CFTC)のデータで筆者が作成 / 12月3日時点の動向
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