ドル円の週間見通し バイデン氏撤退 米債市場もトランプトレードに?PCE価格指数に注目
円相場は先週、トランプ氏や河野デジタル相の発言が材料視され円高へ振れた。ドル円(USD/JPY)は安値155.37レベルまで下落する局面が見られた。しかし、すぐに157円台へ急反発した状況を考えるならば、ドル円がこのまま下落トレンドへ転じると判断するのは早計だろう。今週の見通しは?注目のチャート水準は?
記事のポイント
・トランプ氏が円安をけん制、先週の外為市場は円高優勢の展開に
・ドル円のトレンドが転換したと判断するにはまだ材料が必要
・ドル円、今週の見通しとチャート分析
・米債市場も「トランプ・トレード」に?注目材料は米PCEデフレーター
日米要人の発言で円高の展開に
先週の円相場は、対主要通貨で円高優勢の展開となった。ドル円(USD/JPY)は、6月7日以来となる安値155.37レベルまで下落幅が拡大する局面が見られた。
円高の要因となったのが、日米要人の円安けん制発言だった。ブルームバーグは、11月のアメリカ大統領選に向け共和党から大統領候補として正式に指名されたドナルド・トランプ氏との単独インタビューを報じた(ブルームバーグ・ビジネスウィーク)。トランプ氏は「通貨問題」として円安に言及したという。
また、ブルームバーグは、河野太郎デジタル相が円安是正のため日銀に利上げを求めたとの記事も配信した。
円相場の動向:15日~19日
ドル円、今週の見通しとテクニカル分析
さらなるトレンド転換のシグナル
ドル円(USD/JPY)のトレンドを日足チャートで確認すると、今年の「ドル高・円安」を象徴するトレンドライン(サポートライン)を下方ブレイクする状況にある。
相場が大陰線でトレンドラインを下方ブレイクする場合、往々にしてそれがトレンド転換のシグナルになることがある。今のドル円は、その可能性を意識する局面にある。
しかし、現時点でトレンドが転換すると判断するには材料不足である。ゆえに今週のドル円の焦点は、トレンド転換のシグナルがさらに点灯するのかどうか?この点を確認することにある。
50日線と21日線の攻防
ドル円(USD/JPY)は先週18日に、安値155.37レベルまで下落した。そして翌19日に、157.86レベルまで急反発する展開となった。これら一連の動きで注目すべきは、50日線の手前で相場の戻りが止められたことである(下のチャート、緑矢印を参照)。
今年の5月以降、50日線はサポートラインとして相場を下支えしてきた経緯がある。その50日線の手前で相場の反発が止められた状況は、この移動平均線がレジスタンスのラインへ転換する可能性を示唆している。
ドル円が50日線を突破しても、21日線が控えている(下の日足チャート、青ラインを参照)。この移動平均線は現在、節目の160.00下で推移している(22日時点159.66レベル)。ゆえに21日線の攻防は、160.00を再びトライするかどうか?を判断するための重要なテクニカルラインである。
その21日線がレジスタンスのラインへ転換する場合、上値の水準が162.00から160.00以下へ切り下がる可能性が出てくる。そしてこの展開は、新たなレジスタンスラインを形成するきっかけにもなる。ゆえに、21日線の「レジスタンス転換」は、トレンド転換のシグナルのひとつになり得る。
日足のMACDはデッドクロスを形成した後、ゼロラインを下回る状況にある。モメンタム(14日)もゼロラインを下回り、ドル円の弱気地合いを示唆している。RSIの低下基調は一服しているが、ゴールデンクロスは確認されていない。
これらテクニカルの動向を考えるならば、ドル円の反発局面では、50日線がレジスタンスのラインとして意識される可能性があろう。50日線の「レジスタンス転換」もドル円のトレンドが転換するシグナルの一つとなろう。
ドル円:日足 23年12月以降
出所:TradingView
154.00のトライとブレイクアウト
ドル円(USD/JPY)がトレンド転換に向かっているシグナルとして、今週もうひとつ注目したいことがある。それが154.00レベルのトライそしてブレイクアウトである。
5月上旬にドル円は154.00を下方ブレイクする局面が見られた。しかし、すぐに154円台へ反発。5月16日の反落局面ではサポートラインへ転換した経緯がある(上の日足チャート、黒矢印を参照)。
154.00を目指す2つのシグナル
今週、ドル円(USD/JPY)が154.00レベルを目指すシグナルとして注目したいのが155.55レベルと154.49レベルの攻防である。
155.55レベルは4月29日に政府・日銀の為替介入によって発生した円高相場以降の高安で算出されるフィボナッチ・エクステンション76.4%の水準にあたる。先週は155.37レベルまで下落したが、テクニカルの面では76.4%戻しが相場をサポートしたと考えることができる(下の4時間足チャート、オレンジの矢印を参照)。
ドル円が76.4%戻しの水準(155.55 / 155.37)を一気に下方ブレイクする場合は、154円台への下落を警戒したい。このケースで注目したいのが、154.49レベルの攻防である。この水準は、6月上旬の円高を止めた重要なサポート水準である(下のチャート、赤矢印を参照)。
ドル円が154.49レベルも下方ブレイクする場合は、154.00をトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円:4時間足 24年4月下旬以降
出所:TradingView
注目指標は米個人消費支出価格指数
今週、米ドル相場とドル円(USD/JPY)の変動要因として注目したいのが、6月のアメリカ個人消費支出(PCE)価格指数である。市場の予想では、アメリカのインフレが鈍化の傾向を維持する見通しにある。
アメリカ個人消費支出価格指数の動向:23年6月以降
短期金融市場では、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエルFRBが利下げに踏み切ることを意識している。さらに、直近では11月と12月のFOMCで追加利下げの可能性を意識する状況にもある。
しかし、政策金利の予想に関する今までの経緯を考えるならば、市場の織り込み度合いは行き過ぎの感が否めない。ゆえに、今後発表されるインフレや雇用関連の経済指標が総じて強い内容となれば、9月利下げの可能性は意識されても、それ以降の利下げ観測は後退することが予想される。
目先注目すべきは、上で述べた6月のPCEデフレーターである。インフレの粘着性を示唆する場合は、「米金利の反発→米ドルの買戻し」の要因となろう。
この動きを受け、ドル円(USD/JPY)が上で述べた50日線や21日線を突破する場合は、「ドル円のトレンド転換はまだ先」という思惑が市場参加者の間で強まるだろう。
アメリカ政策金利の予想推移
米債市場も「トランプ・トレード」に?
先週後半、アメリカの債券市場では10年債利回り(長期金利)が反発した。19日には4.24%まで反発する局面が見られた。金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りも4.5%台まで反発した。
短期金融市場で複数回の利下げが再び意識される状況にあるなかでアメリカの金利が反発した状況は、株式市場で意識されている「トランプ・トレード」が、債券市場にも波及している可能性を示唆している。
トランプ氏が掲げる政策-減税、不法移民を対象とした移民政策(強制送還、移民から生まれた子どもが自動的に市民権を得られる制度の廃止)、そしてアメリカ第一主義による保護的な通商政策(外国製品に一律で関税をかける政策)はいずれも、インフレの再燃と財政悪化のリスク要因になり得る-先週後半の米金利反発は、これらリスクの可能性を米債市場の参加者が早くも意識し始めている可能性を示唆している。
CBSニュースが7月に実施した世論調査では、トランプ氏の支持率が52%なのに対してバイデン氏のそれは47%にとどまり、トランプ氏が5ポイントリードした。
一方、カマラ・ハリス副大統領とトランプ氏の大統領選挙を想定した質問ではトランプ氏の支持率が51%、ハリス氏が48%だった。
トランプ氏優勢の状況でバイデン米大統領は21日、11月の大統領選挙戦から撤退し後継候補にハリス副大統領を支持すると表明した。混迷する民主党の状況はさらにトランプ氏を有利な状況に導く可能性があろう。
アメリカの株式市場に続き、債券市場でもトランプ氏の勝利を意識した「トランプ・トレード」へ転じる場合は、米金利の低下圧力が後退することでドル円(USD/JPY)の下支え要因になり得る。
アメリカ10年債利回り:1時間足 7月12日
出所:TradingView
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