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【ドル円の週間見通し】米経済指標にらみ、焦点はCPIと小売売上高 トランプトレードのドル高進行も

外為市場でトランプトレードの米ドル高が進行するのか?今週この鍵を握るのが米経済指標となろう。13日の10月消費者物価指数(CPI)、15日の小売売上高で米ドルは上下に大きく動く可能性がある。ドル円の見通しは?注目のテクニカルラインは?

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記事のポイント

・先週は米FRBの追加利下げがトランプトレードのドル高圧力を相殺した
・今週は米経済指標にらみの1週間となろう、注目は10月のCPIと小売売上高
・ドル円の週間見通し、下値は150円の維持、上値は155円の突破が焦点に


米FRBの連続利下げがトランプトレードのドル高を相殺

先週は2つのビッグイベントがあった。ひとつは、5日に行われたアメリカ大統領選挙と議会選挙である。大統領選挙では共和党のトランプ氏が激戦となった7州すべてで勝利をおさめて圧勝した。議会選挙では共和党が上院を制し、下院選でも共和党が過半数を獲得する見通しとの報道が見られる。トランプ陣営の躍進を受け、選挙後の外為市場では「トランプトレード」の米ドル高が進行した。

もう一つのビッグイベントは、7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)だった。米連邦準備制度理事会(FRB)は0.25%の追加利下げを決定し、FF金利の誘導目標を4.50-4.75%へ引き下げた。9月に続く追加の利下げは、トランプトレードの米ドル高を相殺した。

週間の騰落率を確認すると、先週の米ドル相場は主要通貨で強弱まちまちの展開となった。

米ドル相場の騰落率:11月4日~8日

米ドル相場の騰落率:11月4日~8日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成

高止まりの米金利

確かに米FRBの追加利下げは、米国債の買い戻し(米金利の低下)を促した。しかし2年債利回りは4.2%台、10債利回りは4.3%台でそれぞれ高止まりしている。

4%以上の水準では米国債の投資妙味が意識されやすい。それでも米債買いが限定的となっている今の状況は、トランプトレードの進行に対する市場参加者の警戒心が根強いことを示唆している。

今日はベテランズデーで米債市場は休場となる。焦点は明日以降の動きとなろう。下で述べる重要な経済指標で今週の米金利は上下に大きく動くことが予想される。

米金利のチャート:日足 2024年6月~11月8日

米ドル相場の騰落率:11月4日~8日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成

12月の追加利下げ期待が後退

米金利の高止まりと同時に注目したいのが、今年最後となる12月米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ確率の推移である。

アメリカ大統領選挙の前日まで、短期金融市場では12月の利下げ確率が60%台で推移していた。しかし、先週8日にその確率が40%台まで低下した。パウエルFRB議長も今後の利下げについて「データ重視」の姿勢を維持し、政策の柔軟性を確保している。下で述べる経済指標の内容次第では、12月の利下げ見送りの可能性が高まる可能性がある。

米政策金利の予想推移

米政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 /11月8日時点の予想推移

焦点は再び米経済指標に、変動要因は消費者物価指数(CPI)と小売売上高

米金利の高止まりと12月の利下げ確率の後退は、外為市場で再びトランプトレードの米ドル高が発生する可能性があることを示唆している。今週その可能性を高める要因が、アメリカの経済指標となろう。

まずは、13日の10月消費者物価指数(CPI)に市場参加者の関心が集まろう。ブルームバーグがまとめた市場予想では、インフレの低下が一服する見込みにある。

トランプ減税の恒久化は景気の下支え要因となる一方で、インフレ再燃の可能性も高めるだろう。移民の抑制と外国製品に対する課税の強化も同じくインフレ再燃につながる政策である。

トランプ政策によるインフ再燃が本格的に意識される局面は、来年以降に訪れるだろう。だが、市場は先を織り込んで動く。下院選でも共和党が過半数を獲得すれば「トリプルレッド」となり、トランプ政策の多くが実現する可能性が各段に高まるだろう。

ゆえに、トランプ政権が発足する前からインフレの粘着性を示すデータがCPIなどの重要指標で確認される場合は、来年以降のインフレ再燃に対する各市場の参加者の懸念を高める要因になり得る。この点は14日の生産者物価指数(PPI)も同じである。また、インフレ再燃を示唆するデータが続けば、米FRBの利下げサイクルの不透明感を高める要因にもなろう。

ゆえにCPIが予想外に上昇する場合は、米債市場での金利の高止まりとさらなる上昇、外為市場では米ドル高の再燃を想定しておきたい。翌日のPPIでもインフレの粘着性が確認される場合は、米ドル高の進行を想定しておきたい。

アメリカ消費者物価指数(CPI)の動向:2023年10月以降

アメリカ消費者物価指数(CPI)の動向:2023年10月以降

ブルームバーグの為替データで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:10月の市場予想

15日の10月小売売上高も重要である。ブルームバーグがまとめた予想では、いずれの項目も9月から個人消費が縮小する見込みにある。

注目は、9月と同じく予想外に個人消費の伸びが確認される場合である。堅調な個人消費はアメリカ経済のソフトランディング期待をさらに高めると同時に、12月の利下げ期待を後退させる要因にもなろう。強い小売売上高も米ドル高の要因となろう。

アメリカ小売売上高の動向:2023年10月以降

アメリカ小売売上高の動向:2023年10月以降

ブルームバーグの為替データで筆者が作成


ドル円の週間見通しとテクニカル分析

上昇の局面では155円の突破が焦点に

今週のドル円(USD/JPY)は、米経済指標にらみの1週間となろう。経済指標が米ドル高の要因となれば、ドル円は重要なレジスタンスラインとして意識されている155.00レベルのトライそしてブレイクアウトが焦点に浮上しよう(下の日足チャート、赤矢印を参照)。

インフレ指標と小売売上高がすべて予想以上の内容となれば、トランプトレードの米ドル高が最も進行することが予想される。このケースでは155.00の上方ブレイクとフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準156.52のトライを想定しておきたい。

ドル円のチャート:日足 2024年7月以降

ドル円のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

ドル円が155.00レベルをトライするサインとして、4つのレジスタンスラインの攻防-152.80レベル、153.00レベル、153.40レベルそして154.00レベルの攻防に注目したい(下の15分足チャートを参照)。

前者3つの水準は、FOMC後に相場の反発を止めたレジスタンスラインである。153.00レベルはレジスタンスのラインへ転換する可能性がある。最後のライン154.00前後も同じくレジスタンスのラインへ転換する可能性がある水準として注目したい。

ドル円が154円台へ再上昇し、かつこの水準で底固めとなる場合は、155.00トライの展開を想定しておきたい。

ドル円のチャート:15分足 11月6日以降

ドル円のチャート:15分足 11月6日以降

出所:TradingView

下落の局面では150円の維持が焦点に

日足のMACDはデッドクロスへ転じ、モメンタムはゼロラインを下回ってきた(上の日足チャート、黒矢印を参照)。ドル円(USD/JPY)の強気地合いが後退しているタイミングで今週の米経済指標が総じて予想以下となれば、ドル円はフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準152.09レベル(上の15分足チャートを参照)と21日線(今日現在151.80レベル)の下方ブレイクを想定しておきたい。

ドル円が21日線を完全に下抜ける場合は、11月6日の安値151.28レベルをトライするサインと捉えたい。この水準をも下方ブレイクすれば、150円の維持が焦点に浮上しよう。

インフレ指標(CPI、PPI)と小売売上高がともに予想以下となれば、米ドル高の調整が進行することが予想される。ドル円は150円を視野に、下落幅が拡大する展開を想定しておきたい。


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