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米国株、3月も経済指標に一喜一憂 FOMCの利下げ理由も焦点に S&P500の見通し

3月のS&P500は上昇の傾向にある。しかし今年は、経済指標と米連邦公開市場委員会(FOMC)次第で下落リスクに直面する可能性がある。変動幅の拡大も想定しておく必要がある。S&P500の3月展望について。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

記事の概要

3月相場をむかえる米国株。1957年以降、3月のS&P500は平均で約1.1%上昇している。しかし、1997年以降は変動幅が拡大する傾向にある。今年3月のS&P500は経済指標で上下に大きく振れることが予想される。そして3月後半のトレンドは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の影響も受けるだろう。焦点は利下げの理由となろう。S&P500の月間予想レンジは5,776~6,211。

目次



2月の米国株は下落で終了、不安要素を抱えたまま3月相場へ

2月3日のIG米国レポートで、2月は下落相場を警戒する必要があると述べた。予想どおり主要な株価指数は月間で下落した。

2月の後半に株高の勢いが急速に失速した。その主因は経済指標にあった。2月後半の経済指標で、アメリカ経済を支える個人消費の先行き懸念を示唆する内容が続いた。一方、消費者の期待インフレが急上昇したことで景気不安-スタグフレーションの可能性が意識された。

トランプ米政権の政策がもたらす不確実性も相場の重石となった。不安要素を抱えたまま、米国株は3月相場をむかえる。

アメリカ株価指数 2月の動向

アメリカ株価指数 2月の動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成


3月の米国株も経済指標にらみ

3月は上昇傾向も今年は下落と変動幅の拡大を警戒
多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500の月ごとの平均騰落率を確認すると、1957年以降、3月は平均で約1.1%上昇している。

S&P500 月ごとの平均騰落率:1957年以降

アメリカ株価指数の騰落率:月初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成

しかし、アメリカの大統領選挙が行われた翌年3月の騰落率を確認すると、1997年以降は上下に大きく振れる傾向にある。また、第1次トランプ政権が発足した2017年3月は小幅に下落して終えた。

2月後半の株安要因となった景気不安とトランプ関税がもたらす不確実性が続くことを考えるならば、今年の3月相場も上下に大きく振れる展開を想定したい。下で取り上げる2つの重要イベント-経済指標と米連邦公開市場委員会(FOMC)の動向次第では、2017年の時と同じく今年3月のS&P500は下落で終える可能性がある。

S&P500 米大統領選挙翌年3月の騰落率:1961年~2021年

S&P500 米大統領選挙翌年3月の騰落率:1961年~2021年

ブルームバーグのデータで筆者が作成

経済指標に一喜一憂の1ヶ月
現状、スタグフレーションの可能性が意識されつつも主要なテーマとはなっていない。しかし、今後発表される経済指標でこの懸念が高まる場合は、S&P500の下落圧力を強めるだろう。今月の注目指標を以下にまとめた。

注目の経済指標

注目の経済指標

3月の経済指標は、景気指標とインフレ指標に分けて考えたい。前者ではまず、今週の2月ISM指数と同月の雇用統計が変動要因となろう。景気不安(スタグフレーション)が新たなリスク要因に浮上しつつあるなかで、これら経済指標が総じて予想以下となれば、米株安が予想される。一方、これら経済指標が予想以上の強さを見せる場合は、米株高の要因となろう。

今月後半の3月ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ、個人消費の重要指標である2月小売売上高、そして3月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)も市場参加者の景気見通しに大きな影響を与えるだろう。景気不安が意識されるなかで予想を下回る内容が続けば、先月後半と同じく株安を警戒したい。一方、総じて予想以上の内容が続くならば、米株高の要因となろう。

2月の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)そして個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)はいずれも、市場参加者が抱くインフレ懸念に影響を与えるだろう。

先月28日の1月個人消費支出価格指数(PCEデフレーター、前年同月比)はインフレの鈍化傾向を示唆する内容だった。主要な株価指数が急反発で反応した状況を考えるならば、景気指標以上にインフレ指標は米国株の変動幅を拡大させる要因になり得る。インフレ再燃の懸念を高める内容が続けば、「景気不安(スタグフレーションの懸念)→米株安」を想定したい。一方、インフレの鈍化が確認される場合は、スタグフレーション懸念の後退と米利下げ期待が高まることが予想される。このケースでは、米株高を想定したい。

今月後半のトレンドはFOMC次第、利下げの理由に注目

3月後半のトレンドは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の動向に大きく左右されるだろう。1月に利下げを見送った米連邦準備制度理事会(FRB)だが、金融緩和の姿勢は維持している。現状、短期金融市場では、今年の6月に米FRBが利下げに踏み切る可能性を織り込んでいる。先週は6月か7月で揺れていた。また、2025年末のターミナルレートは3.6%台まで低下している。米10年債利回りが一時4.1%台まで低下した状況も考えるならば、現在のターミナルレートの低下は、景気不安を意識した動きと考えることができる。

3月のFOMCではパウエルFRB議長が定例会見で、今後の利下げパスについて言及することが予想される。そこで問題となるのが利下げの理由である。2月後半の米国株は、景気不安が意識され下落幅が拡大した。パウエルFRB議長がインフレ抑制の見通しだけでなく、景気の下支えも利下げの理由に挙げる場合は、景気不安が高まることが予想される。このケースでは、米株安を警戒したい。特に上述した経済指標で景気不安を煽る内容が続く場合は、先月と同じく今月の後半もS&P500の下落幅が拡大する展開を警戒したい。

米国 政策金利の予想推移

米国 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想推移 / 2月28日時点


S&P500 今月の見通しと予想レンジ

今月のサポートラインと予想レンジの下限
今月発表される経済指標で景気不安が強まる場合、S&P500は以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。今月の予想レンジ下限は5,776ポイントを想定。

・今月S&P500が下値をトライする場合は、5,800ポイントの維持が最初の焦点となろう。2月後半の下落相場を止めた26週線とフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準5,864ポイントの下方ブレイクは、5,800ポイントをトライするサインと考えたい。1月14日に5,805ポイントで相場が反発した経緯がある

・今月の経済指標を受けてスタグフレーションの懸念が高まる場合は、5,800ポイントを下方ブレイクする展開を想定したい。FOMCとパウエルFRB議長の会見も景気不安を高める内容となれば、週足チャートにプロットした半値戻しの水準5,776ポイントのトライを想定したい。このテクニカルラインは、1月中旬の大陽線の安値にあたる(週足チャート、黒矢印を参照)。今月の予想レンジの下限と想定したい

・景気不安が高まる可能性を考えるならば、筆者の想定を超える下落相場が発生する展開を想定しておきたい。5,775ポイントを下方ブレイク下後、このテクニカルラインがレジスタンスへ転換する場合は、5,700ポイントをトライする可能性が浮上しよう。この水準ではサポートラインへの転換が確認されている(週足チャート、黒矢印を参照)

サポートライン
・5,898:26週線(週足、2/28時点)
・5,864:フィボナッチ・リトレースメント38.2%(週足)
・5,800:サポートライン、1月14日の安値(日足)
・5,775:予想レンジの下限、半値戻し(週足)
・5,700:サポートラインへ転換(週足)

今月のレジスタンスラインと予想レンジの上限
一方、経済指標で景気不安が後退する場合、S&P500は以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。予想レンジの上限は6,211ポイント。

・今月の経済指標で景気不安が後退する場合、S&P500は以下にまとめた3つの移動平均線の攻防に注目したい。特にレジスタンスラインへ転換する兆しが見られる50日線とその可能性がある20日線のトライは、最高値のトライを見極める上で重要な攻防となろう

・S&P500が20日線を突破する場合は、先月19日の取引時間に付けた最高値6,147ポイントをトライするサインと考えたい

・6,147ポイントを突破すれば、6,200ポイントのトライが焦点に浮上しよう。テクニカルの面では、フィボナッチ・エクステンション100%の水準6,211ポイントの攻防が焦点となろう。このテクニカルラインを今月の予想レンジの上限と想定したい

レジスタンスライン:日足
・6,211:フィボナッチ・エクステンション100%
・6,147:最高値(2/19)
・6,038:(2/28時点)
・5,998:(2/28時点)
・5,971:(2/28時点)


S&P500のチャート

週足:2024年3月以降

週足:2024年3月以降

出所:TradingView

日足:年初来

日足:年初来

出所:TradingView


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