【米国株の週間見通し】 エヌビディア失速、ナイキ急落、そしてさえない小売り株 ナスダックは下落相場を警戒
今週の米国株は経済指標にらみの1週間となろう。今日は6月のISM製造業景気指数が材料視される可能性がある。これまで株高をけん引してきたエヌビディア(NVDA)には失速感が漂う。ナイキは決算を受け先月28日に20%急落した。そして小売り株の動向はアメリカ個人消費の後退を示唆している。心理的な節目がレジスタンスとなっているナスダック100(NDX)の見通しは?注目のチャート水準は?
この記事のポイント
・エヌビディアの失速は、ナスダック100の重しとなろう
・チャート分析の観点からも、今週のナスダック100は下落相場を警戒したい
・今週は経済指標にらみの1週間となろう、今日はISM製造業景気指数に注目
・ナイキ急落、さえない小売り株、弱い経済指標は米株安の要因に
ナスダック100、注目のチャート水準
エヌビディア失速、調整相場を警戒
これまで米株高をけん引してきたエヌビディア(NVDA)が失速している。
日足チャートでトレンドを確認すると、下落の圧力はひとまず後退している。しかし、反発の局面では10日線すら突破できずにいる(下のチャート、青ラインを参照)。
日足のMACDはデッドクロスを形成した後、低下のトレンドへ転じている。先週28日の日足ローソク足は上影陰線だった。
何よりも、直近の高値(6月18日の終値ベース)から12.8%下落し調整相場のシグナルが点灯した状況を考えるならば、今のエヌビディアは短期的な反落相場を警戒する局面にある。
今週、エヌビディアの株価が21日線(28日時点123.21レベル)を完全に下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメントの各水準での攻防に注目したい。
目先は116.00レベルの維持が焦点となろう。この水準を挟んで61.8%の水準116.51レベルと38.2%の水準115.87レベルが展開している。
後者の115.87レベルの下方ブレイクは、5月30-31日の下落相場を止めた半値戻しの水準108.19を視野にエヌビディアの下落幅が拡大するシグナルとして警戒したい。
エヌビディアのチャート:日足 24年4月以降
TradingView提供のチャートで作成
ナスダック100、今週は下落相場を警戒
下落相場を警戒する状況に
エヌビディアの失速はナスダック100(NDX)の重しとなろう。
下の対数チャートで直近のトレンドを確認すると、エヌビディアの失速に連動し、ナスダック100が上値の重い展開となっていることが分かる。
それまでの上昇トレンドも含めて考えるならば、同社の株価とナスダック100の相関性の高さが見て取れる。
エヌビディアとナスダック100の対数チャート:日足 年初来
また、チャート分析の観点からもナスダック100の下落相場を警戒する必要がある。
先週28日の市場でナスダック100は、節目の20,000ポイントをトライした。しかし突破に失敗し、10日線を下方ブレイク。レジスタンスの水準として20,000レベルの存在感が増す展開となった。
また、この日の日足ローソク足は上影陰線。高値圏での上影陰線は相場の反落を暗示する。さらに日足のMACDはデッドクロスの状況へ転じ、地合いの強さが後退していることを示唆している。
今週は、6月の雇用統計などいくつかの重要な米経済指標が発表される。テクニカルの面で下落相場を暗示する状況が確認されている状況で、経済指標の内容が株安の要因となれば、ナスダック100は21日線(28日時点19,335レベル)をトライする展開を想定しておきたい。
ナスダック100のチャート:日足 年初来
TradingView提供のチャートで作成
下値のチャート水準
今週、エヌビディア(NVDA)が下値をトライする場合、まず注目したいのが19,660レベルの攻防である。先週28日の下落相場を止めるなど、この水準はサポートラインとして意識される経緯が見られる。
ナスダック100が19,660レベルを下方ブレイクする場合は、19,400ポイント台まで一気に下落幅が拡大する可能性を警戒したい。このケースでは、先月24日の下落相場を止めた半値戻しの水準19,473レベルの攻防が焦点となろう。
ナスダック100が半値戻しの水準をも下方ブレイクする場合は、上で述べた21日線トライの可能性が高まろう。19,353レベルは、フィボナッチ・リトレースメント61.8%にあたる。この水準は、先月12日の「窓開けスタート」の基点となった重要なチャートポイントである。
ナスダック100が21日線をも下方ブレイクする場合は、IG米国株レポートで注目している重要なサポート水準「19,200」レベルのトライを想定したい。この水準は「サポート転換」の可能性がある。また、テクニカルの面では。フィボナッチ・リトレースメント76.4%にあたる。
1時間足のストキャスティクスは売られ過ぎの水準へ到達している。ゴールデンクロスが確認される局面で、ナスダック100が上で取り上げたサポートラインをトライする局面では、短期的な反発相場を意識したい。RSIでもゴールデンクロスが確認される場合は、その可能性を強く意識したい。
ナスダック100のチャート:1時間足 6月以降
TradingView提供のチャートで作成
経済指標にらみの1週間に
今日の注目指標はISM製造業景気指数
今週は、アメリカ経済の現状と先行きを見極めるうえで重要な経済指標がいくつか発表される。ゆえに今週の米国株は、経済指標にらみの1週間となろう。
今日は6月のISM製造業景気指数が米国株の変動要因となろう。新規受注が5月の45.4から49.0へ回復の見通しにあることで、総合では48.7から49.1へ企業活動が改善する予想となっている。
一方、支払い価格は57.0から55.8へ、雇用は51.1から50.0へそれぞれ鈍化する予想にある。
アメリカISM製造業景気指数の動向:23年6月以降
今後の経済指標と米国株の展望について
米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ再燃に対する警戒レベルは依然として高い。ゆえに、物価指数が予想以下となる場合は米株高の要因となろう。
一方、今日のISM製造業景気指数など企業や個人の経済活動に関連する経済指標が予想以下となる場合は、株式市場の反応を一つひとつチェックするすることが重要となろう。長引く高インフレを受け、アメリカ経済の土台である個人消費に陰りが見え始めているからだ。
この点を示唆したのが、ナイキ(NKE)の決算だった。同社が先月27日に発表した3-5月期決算(第4四半期)では、1株利益が1.01ドルとアナリスト予想の0.85ドルを上回った。しかし売上高は126.1億ドル(1.7%減)と、アナリスト予想の128.6億ドルを下回った。
また、25年5月期通期の売上高も前期比で1桁台半ばの減収になるとの予想を示した。さえないガイダンスを受け、同社の株価は先週28日に20%急落した。年初来では30.58%の下落率である。
ナイキ以外にも気になる動きがある。それが、大手小売り株の動向である。年初来のパフォーマンスを確認すると、ウォルマート(WMT)とコストコ(COST)以外の株価はS&P500種株価指数(SPX)のパフォーマンスを下回る状況にある(下のチャートを参照)。
特にディスカウント大手のダラー・ツリー(DLTR)とダラー・ゼネラル(DG)の株価低迷は、所得の低い層の個人消費が落ち込んでいることを示唆している。
企業の業績や個人消費で先行き不透明感が漂うなか、ISM製造業景気指数が予想以下となる場合は、早期の利下げ期待よりも将来の景気懸念の方を高める可能性があろう。
景気懸念の高まりは、主要なアメリカ株価指数の下落要因となろう。
一方、ISM製造業景気指数が予想外に強い内容となる場合は、景気懸念が後退することで米国株の追い風となる展開を予想する。
ナイキと大手小売り企業の株価動向:年初来
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