S&P500は3%安で2年ぶりの大幅下落 市場が催促するFRBの利下げ S&P目先の見通し
景気懸念が米国株を襲っている。5日の市場でS&P500は3%安と22年9月以来、約2年ぶりの大幅安となった。一度高まった景気懸念はそう簡単に後退することはないだろう。米国株の反発局面では「ブルトラップ」を警戒したい。目先のS&P500の見通しは?
記事のポイント
・高まる投資家の不安心理
・市場が催促するFRBの早期かつ大幅な利下げ
・S&P500は一度反発する可能性あり、100日線の攻防に注目
・「ブルトラップ」を警戒、200日線のトライを想定しておきたい
S&P500、注目のチャート水準
上値の水準(レジスタンス)
・5,400:半値戻し
・5,307:100日線
・5,249(5,251): 23.6%戻し、8月5日の高値
下値の水準(サポート)
・5,122:76.4%戻し、8月5日のサポート水準
・5,011:200日線
・4,953:4月19日の安値
高まる投資家の不安心理
景気懸念が米国の株式市場を襲っている。5日の市場でダウ平均(DJI)は、前週末比1,033ドル99セント(2.6%)安の3万8703ドル27セントで終えた。取引時間中に下げ幅が、1,200ドルを超える場面が見られた。
一方、多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500種株価指数(SPX、以下ではS&P500)は前週末比で3.0%下落し、22年9月以来の大幅安となった。採用銘柄の9割強が下落した。
投資家の心理を表すのがボラティリティ指数である。代表的なのがS&P500を対象にしたオプション取引のボラティリテを元に算出されるVIX指数(VIX、恐怖指数)である。そのVIXは昨日、一時65.73ポイントまで急騰する局面が見られた。
向こう3ヶ月の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)を示すVIX3Mとの比を確認すると、0.8~1.0のレンジを完全に上方ブレイクし、2020年初頭に発生したコロナパンデミック以来の水準まで急上昇している。
VIXは30日間のインプライド・ボラティリティである。ゆえに下のラインチャートは、市場参加者が先のことよりも、“今”のリスクを強く警戒していることを示唆している。
VIX / VIX3Mレシオ:日足 22年以降
市場が催促するFRBの利下げ
高まる投資家の不安心理は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げプレッシャーを高めている。
短期金融市場では、24年末に政策金利(FFレート)が4.2%前後まで引き下げられることを織り込み始めている。9月と11月の連邦公開市場委員会(FOMC)で50ベーシスポイント(0.5ポイント)の利下げを織り込む状況にあり、市場は大幅な利下げをFRBに催促している。見方は分かれているが、9月の会合を待たずにFRBが緊急利下げに踏み切る可能性も浮上している。
市場が催促する早期かつ大幅な利下げ対して、パウエルFRBがどのような行動をとるのか?今日以降はこの点に関するヘッドラインを注視したい。
短期金融市場 FF金利の予想推移
S&P500、目先の見通しとチャート分析
目先のサポート水準は?
S&P500(SPX)は、7月の高値5,667(終値ベース)から8.5%下落している。昨日はフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準5,122レベルで下落が止められた。
今の下落相場を一度止めたこのテクニカルポイントは、再度の下落局面で意識される可能性があろう。再び相場を下支えする場合は、目先の重要なサポート水準として意識したい。
しかし、日足のMACDとモメンタムは、弱気相場の勢いが増していることを示唆している(下のチャート、赤矢印を参照)。5日の日足ローソク足では長い上ヒゲが現れた。これらの動向を考えるならば、S&P500が76.4%戻し5,122を完全に下方ブレイクする可能性を意識しておきたい。
S&P500が5,122レベルを完全に下方ブレイクする場合は、200日線のトライが焦点として浮上しよう。この移動平均線は、5,011レベル(8月5日時点)で推移している。ゆえに、S&P500がこの移動平均線をトライする場合は、5,000ポイントを維持できるかどうか?を見極めるための攻防となろう。
S&P500が200日線を下方ブレイクする場合は、5,000ポイントのブレイクアウトを想定しておきたい。このケースでは、今年4月の安値4,953レベルを視野に下落幅の拡大(全戻し)を想定しておきたい。
S&P500種株価指数のチャート:日足 今年4月以降
出所:TradingView
反発局面での焦点は?
一方、FRBによる早期かつ大胆な利下げの期待が高まる場合、または実際にパウエルFRBが緊急利下げに動く場合は、S&P500(SPX)の(急)反発が予想される。
S&P500の反発局面で注目したいのが、100日線の攻防である。この移動平均線は、レジスタンスラインへ転換する可能性がある(8月5日時点5,307レベル、上のチャートの緑矢印を参照)。その状況が確認される場合は、上で述べたサポート水準をトライする展開を意識したい。
一方、S&P500が100日線を難なく突破する場合は、同じくレジスタンスのラインへ転換する可能性がある5,400レベルを視野に上昇幅が拡大する可能性が出てくる。この水準はテクニカルの面で、直近高安の半値戻しの水準にあたる(下のチャート、赤矢印を参照)。
昨日の高値5,251レベルの上方ブレイクは、S&P500が100日線をトライするシグナルと想定しておきたい。テクニカルの面でこの水準は、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準(5,249レベル)にあたる(下のチャート、赤矢印を参照)。
しかし、一度高まった景気懸念が短期で後退する可能性は低いだろう。ゆえに、S&P500の反発局面では「ブルトラップ(強気の罠)」を常に警戒しておきたい。
S&P500種株価指数のチャート:1時間足 7月15日以降
出所:TradingView
米国500のチャートポイント
上述した原市場の状況とテクニカルポイントを踏まえ、IG証券が提供している株価指数CFD「米国500(原資産S&P500種株価指数)」のチャートポイントを以下にまとめた。
上値の水準(レジスタンス)
・5,448:61.8%戻し
・5,380:半値戻し
・5,312~16:38.2%戻し、20週線
下値の水準(サポート)
・5,076:38.2%戻し
・5,000:節目のサポート水準
・4,908:52週線
米国500のチャート:週足 23年10月以降
出所:IGチャート
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