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米国株、反発継続は小売売上高とFOMC次第、S&P500の週間見通し

今週の米国株は経済指標とFOMCにらみの展開となろう。経済指標では17日の2月小売売上高に注目したい。S&P500の週間見通しとテクニカルラインについて。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

記事の概要

S&P500は4週続落、かつ先月19日の最高値から10%下落し、調整局面入りのシグナルが点灯した。短期間で下落幅が拡大したこともあり、2月小売売上高など重要指標で景気懸念が後退すれば反発相場が予想される。しかし、トランプ関税が経済に与える影響はこれから出てくる。よって、単月の経済指標で景気の先行き懸念が後退することはないだろう。米国株の反発局面では戻り売りを警戒したい。
今週18~19日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。焦点はFOMC参加者が予想する経済と政策金利の見通しにある。最新の見通しが景気減速の懸念を強める要因となれば、米株安を警戒したい。S&P500の週間予想レンジは5,400~5,826ポイント。


S&P500調整入りも短期の買い戻しを意識

多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500は4週連続で下落した。先週14日時点での3月下落率は5.3%と、2022年12月の5.9%安以来の下落率である。13日の市場では、2月19日の最高値から10%下落し調整局面入りのシグナルも点灯した。

一方で週足チャートのローソク足では、実体ベースで52週線がサポートラインとなった。また長い下ヒゲも確認され短期サポートラインの上で急反発した。これらの動向は、3月の下落相場がひとまず下火に向かう可能性を示唆している。

S&P500のチャート:週足 2024年4月以降

S&P500のチャート:週足 2024年4月以降

出所:TradingView

また、ボラティリティ指数も落ち着きを取り戻しつつある。一時29ポイント台へ拡大したVIXは14日に21ポイント台まで急低下した。3ヶ月の予想変動率を示すVXV(S&P500 3month VIX)との比も「1」を下回る状況にある(いずれも以下のラインチャート、丸枠を参照)。上で述べたローソク足のかたちとテクニカルラインの攻防も考えるならば、S&P500は調整の反発(短期の買い戻し)を意識する局面にある。

ボラティリティ指数の動向:2024年12月以降

ボラティリティ指数の動向:2024年12月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

反発の持続性は経済指標次第、2月小売売上高が焦点に

今週、S&P500は反発の流れを維持できるのか?この鍵を握るのが経済指標である。

本日は、個人消費の動向を見極めるうえで重要な2月小売売上高が発表される。ブルームバーグがまとめた市場予想は前月比0.6%増と、1月の0.9%減から大幅に回復する見通しにある。一方、GDPで個人消費の算出に用いるコア小売売上高も同比0.8%減から0.3%増への改善が見込まれている。米国経済を支える個人消費の底堅さが確認される場合、米国株は先週14日の反発相場を維持することが予想される。

米国 小売売上高の動向:直近1年

米国 小売売上高の動向:直近1年

ブルームバーグのデータで筆者が作成

しかし、小売売上高が米国株の上昇要因となっても、それは調整の反発=短期の買い戻しと想定したい。トランプ米政権の政策は二転三転しており、経済に及ぼす影響を見極めるには時間を要するからだ。

この先行き不透明感が意識され、米債市場では10年債利回りは1月中旬の4.8%台から4.1%台まで低下した(米国債が買われた)。14日の国際商品市況では、NY金価格が史上初めて3,000ドルへ到達した。これら安全資産の買い需要が高まっている状況も考えるならば、S&P500が反発しても下値トライを警戒したい。

米国10年国債とスポット金の価格チャート:4時間足 年初来

米国10年国債とスポット金の価格チャート:4時間足 年初来

出所:TradingView / 3月14日までの動向


FOMCの焦点は景気と政策金利の見通し

3月18~19日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。3月後半の米国株のトレンドを左右する重要なイベントになり得る。

パウエルFRB議長は7日の講演で労働市場と経済の底堅さ言及しながらも、トランプ米政権が推し進める政策が経済にもたらす影響が判明するまで利下げを急がない姿勢を示した。定例会見でトランプ関税と景気の見通しについて質問が飛ぶ場合は、同じ姿勢を維持すると思われる。

筆者が注目しているのが、FOMC参加者の経済見通しである。昨年12月の時点では、今年と来年の成長率が2%台を維持する見通しが示された。3月の見通しで成長率が下方に修正される場合は、現在30%台にある5月の利下げ確率の上昇要因になり得る。景気を下支えするために米FRBが利下げを行うとの期待が高まることが予想されるからだ。

利下げ期待の高まりは米株高の要因になり得る。しかし、現在のアメリカ株式市場のテーマは景気の減速懸念にある。経済見通しの下方修正は、市場参加者に景気懸念を意識させる要因になり得る。よって弱気の見通し(下方修正)は、米株安の要因として警戒したい。

FOMC参加者の経済見通し

FOMC参加者の経済見通し

出所:FRB Summary of Economic Projections


S&P500 今週の見通しとテクニカルライン

今週のレジスタンスライン、予想レンジの上限は5,826ポイント
日足チャートでS&P500のトレンドを確認すると、50日線との乖離率が5%まで拡大し売られ過ぎのサインが点灯している。この状況で2月の小売売上高が市場の予想を上振れ、FOMC参加者の経済および政策金利の見通しに下方修正がない場合、今週はS&P500の反発相場を想定したい。週間の予想レンジ上限は、2月19日の最高値と先週13日安値の半値戻しの水準5,826ポイント。

S&P500が5,826ポイントをトライするサインとして、2つの移動平均線-10日線と200日線の攻防に注目したい。1時間足のフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準5,656ポイントの突破は、10日線をトライするサインとなろう。10日線を突破すれば、5,700ポイント台の攻防を想定したい。

200日線は現在、1時間足のフィボナッチ・リトレースメント38.2%付近で推移している。この移動平均線の上方ブレイクは、5,800ポイントをトライするサインと考えたい。

上で述べたとおり、現在はトランプ関税の不確実性と景気の減速懸念が意識されている。小売売上高やFOMCでこれらの懸念が完全に後退する可能性は低い。今週S&P500が反発してもレジスタンスラインでの反落を警戒しておきたい。

レジスタンスライン
・5,826:予想レンジの上限、半値戻し(1時間足)
・5,800:レジスタンスライン(日足)
・5,750:38.2%戻し(1時間足)
・5,740:200日線(日足)
・5,700:10日線、レジスタンスライン(日足)
・5,656:23.6%戻し(1時間足)

今週のサポートライン、予想レンジの下限は5,400ポイント
一方、本日の小売売上高やFOMCイベントが米株安の要因となる場合は、以下にまとめたサポートラインの攻防が焦点となろう。週間の予想レンジの下限は5,400ポイント。このラインは、昨年9月の上旬にサポートラインへの転換が確認された経緯がある

まずは、日足チャートの黒矢印で示した5,500~5,510前後の攻防に注目したい。このサポートゾーンを難なく下方ブレイクすれば、5,400ポイントを視野に下落幅の拡大を想定したい。一方、今週も5,500ポイント付近がサポートラインとして意識される場合は、短期的な底打ち感が強まろう。

サポートライン
・5,512: 61.8%戻し(日足)
・5,504:3月13日の安値(日足)
・5,441:昨年9月10日の安値
・5,434:昨年9月9日の安値
・5,400:予想レンジの下限(日足)


S&P500のチャート

日足:2024年8月以降

日足:2024年8月以降

出所:TradingView

1時間足:2月12日以降

1時間足:2月12日以降

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