【米国株 ウィークリーレポート】焦点はパウエル証言と雇用関連の指標、ボラティリティの拡大を警戒する1週間
先週の米国株(アメリカ株)は上下に振れる不安定な展開となった。今週もこの流れを引き継ぐことが予想される。トレンドに大きな影響を与えるイベントは?S&P500種株価指数とナスダック100指数の注目ポイントは?詳細はウィークリーレポートをご覧ください。
【サマリー】
・先週と同じく今週の米国株も上下に振れる展開が予想される
・注目材料はパウエルFRB議長の議会証言と雇用関連の経済指標
・2月雇用統計は米株のボラティリティを拡大させる要因となり得る
・S&P500指数とナスダック100指数のチャートポイントについて
ボラティリティの拡大を警戒する1週間
先週後半にリスクセンチメントが改善
先週の米国株(アメリカ株)は、上下に振れる不安定な展開となった。
先週2日、アトランタ地区連銀のボスティック総裁が3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(0.25%)の利上げを支持する考えを示した。また、短期金融市場や米債市場で米利上げの長期化をかなり織り込んだとの観測が高まり、米国の主要な株価指数は週後半に続伸。S&P500種株価指数(SPX)は、200日MAをかろうじて維持した。一方、節目の12,000ポイントや200日MAをブレイクしていたナスダック100指数(NDX)も急反発し、12,330レベルで推移している21日MAを再びトライする展開となっている。
アメリカの個人投資家は急速に弱気(Bear)へと傾いている。だが、強気(Bull)との比率は、0.5付近まで低下している。逆張り指標として注目されるこの指標の低下は、むしろ米国株が反発するシグナルとなる。
アメリカ個人投資家のセンチメント
2つの重要イベント:①パウエルFRB議長の議会証言
リスクセンチメントは改善の傾向にある。しかし、今週の重要イベントで再び悪化する脆さを内包した改善と言える。
今週の重要イベントは2つある。ひとつは、パウエルFRB議長の議会証言である。
パウエルFRB議長は7日に上院の銀行住宅都市委員会で、8日に下院の金融委員会で証言に臨む。焦点はインフレについての言及である。1月の物価指標ではアメリカのインフレ圧力の根強さが改めて確認された。前回の連邦公開市場委員会(FOMC、1月31日~2月1日開催)後に入手した新たなインフレデータを踏まえ、パウエルFRB議長は将来のインフレ動向についてどのような見解を示すのか?その内容次第で市場の思惑、ターミナルレートの水準や利上げの期間に対する思惑が揺れ動くだろう。米国株は、先週後半の流れ(株高)を引き継ぐことも、再び下値をトライすることも考えられる。
議会証言の焦点:インフレについてどのような見解を示すのか
2つの重要イベント:②雇用関連の経済指標
もう一つの重要イベントが、雇用関連の経済指標である。今週は8日の2月ADP雇用統計を皮切りに、9日には1月JOLTS求人件数と週間の新規失業保険申請件数、10日には2月雇用統計が発表される。
なかでも、各市場の参加者が注目するのが、2月雇用統計である。現時点での予想は以下のとおりとなっている。インフレリスクが再燃している状況を考えるならば、引き続き賃金(平均時給)の伸びに注目したい。1月に続き、賃金の上昇を伴う雇用市場のひっ迫した状況が確認される場合は、米国株の下落を想定しておきたい。
一方、雇用の増加と失業率が低い水準を維持しても、賃金インフレの抑制傾向があらためて確認できる内容となれば、むしろ景気リスクの後退を株式市場の参加者に意識させる要因となり得る。よって、このケースでは米株高を想定しておきたい。
2月雇用統計の内容が総じて予想の範囲内かそれ以下、または強弱まちまちの内容の場合も株高要因と想定しておきたい。
アメリカ雇用統計の予想
非農業部門雇用者数変化と失業率の推移
平均時給の推移
アメリカ株価指数の展望
S&P500種株価指数の焦点とテクニカル分析
米国株に投資をする際、多くの機関投資家がベンチマークとする株価指数がS&P500種株価指数(SPX)である。先週は200日MA(3,940レベル)をトライする局面が見られた(2つめの日足テクニカルチャートを参照)。しかし、冒頭で述べたとおりこの移動平均線の維持に成功した。トレンドの強さを示すADライン(Advance / Decline Line)も再び上昇ムードにある。
S&P500指数のADライン
今週、S&P500指数(SPX)のトレンドを左右するのは、上で述べたパウエルFRB議長の議会証言と雇用関連の経済指標となろう。これらが株高要因となる場合は、21日MA(4,059レベル)の突破を想定しておきたい。これを達成する場合は、テクニカルの面でS&P500指数のさらなる上昇-例えば、短期レジスタンスラインのトライおよびブレイクを市場参加者に意識させるだろう。
逆に、パウエルFRB議長の議会証言と雇用関連の経済指標が米株安の要因となれば、200日MAのトライおよびブレイクが焦点となろう。この移動平均線の下方ブレイクは、CTA(Commodity Trading Advisor)に代表される金融工学や統計学をベースにプログラミングトレードを行っているファンドの売りを促すきっかけとなり得る。50日MA(3,987レベル)の下方ブレイクは、200日MAをトライするシグナルと想定しておきたい。
S&P500指数のチャート
ナスダック100指数の焦点とテクニカル分析
ハイテク株のトレンドを示すナスダック100指数(NDX)もS&P500指数(SPX)と似た状況にある。
ハイテク株の多くはグロース企業である。グロース企業は総じて高PERであり、それゆえ米金利の上昇はハイテク株の売り要因となる。
今週の米債市場は、株式市場と同じくパウエルFRB議長の議会証言と雇用関連の経済指標が材料視されるだろう。
ナスダック100指数のADラインを確認すると、S&P500指数と同じく上昇基調にある。
株高ムードが醸成されているタイミングで上2つのイベントが米金利の低下要因となる場合、ナスダック100指数はS&P500指数と同じく20日MA(12,308レベル)の突破を想定しておきたい。この移動平均線は、先週3日の株高を止めた経緯がある。ゆえに、20日MAのブレイクはさらなる上昇-例えば、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準12,467レベルや76.4%の水準12,946レベルのトライを市場参加者に意識させるだろう。
逆に、上で述べた2つの重要イベントが米株安の要因となる場合は、先週ブレイクした200日MA(11,902レベル)ではなく、50日MA(11,778レベル)のトライを想定しておきたい。
ナスダック100指数のADライン
ナスダック100指数のチャート
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