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米雇用統計が促すFRB利下げペースの思惑と景気シナリオの修正、リスク要因は金利と原油価格の動向、S&P500の見通し

9月の米雇用統計が労働市場の底堅さを示唆したことで、景気のソフトランディング期待がさらに高まっている。短期金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースに対する市場の思惑が急速に修正される状況にある。強い経済指標は米国株の押し上げ要因だが、米金利と原油価格の動向次第では株安を警戒したい。今週のS&P500見通しと注目のチャート水準について。

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記事のポイント

・9月の雇用統計で米景気のソフトランディング期待がさらに高まった
・FRBの利下げペースに対する市場の思惑が急速に修正されている
・米金利と原油先物価格の上昇は、米株安の要因になり得る
・S&P500、今週の見通しと注目のチャート水準について


S&P500のチャートポイント

レジスタンスの水準

・5,809:フィボナッチ・エクステンション76.4%
・5,800:レジスタンスポイント
・5,767:9月26日高値

サポートの水準

・5,731:フィボナッチ・リトレースメント38.2%
・5,720:半値戻し
・5,710:フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・5,700:サポートポイント
・5,670:サポート転換した水準


底堅さを維持するアメリカの労働市場

米労働省が先週4日に発表した9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月から25.4万人増と、ブルームバーグがまとめた市場予想15万人増を上回った。予想以上の雇用増加を受け、直近3ヶ月平均の非農業部門雇用者数は18.6万と、今年5月以来の水準まで拡大した。

失業率は4.2%から4.1%へ低下した。一方、平均時給は前月比で0.4%増と賃金インフレが抑制の傾向にあることが示された。

米国の雇用統計 各項目の動向:2023年9月以降

米国の雇用統計 各項目の動向:2023年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

アメリカ労働市場の底堅さを示唆したのは、雇用統計だけではない。7日のIG為替レポート「ドル円の週間見通し 米雇用統計の衝撃、米利下げペースの思惑とドル安シナリオの修正、ドル円は150円が再び視野に」で述べたとおり、8月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数と9月のADP雇用統計も市場予想を上回り、各市場の参加者にアメリカ労働市場の底堅さを印象付けた。

労働市場の急速な冷え込みを危惧する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長にとって先週の雇用指標、特に9月の雇用統計は理想的な内容となった。

また雇用指標に加えて、9月のISM非製造業景気指数でサービス業の活動が拡大していることが示されたこともあり、アメリカ経済のソフトランディング期待が高まっている。

この期待の高まりは米国株の押し上げ要因である。しかし、下で述べる米金利と原油先物価格の動向によっては、米株安を警戒したい。

不透明感高まる米利下げペース、据え置き予想も

アメリカ経済のソフトランディング期待は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースに影響を与えるだろう。事実、短期金融市場では11月の連邦公開市場委員会(FOMC)に対する予想が急速に修正される状況にある。具体的には、先月末まで意識されていた追加の0.5%利下げ期待が完全に後退し、現在では通常幅の0.25%利下げがメインシナリオになっている。

注目すべきは、大幅利下げの期待が後退していることではなく、政策金利の据え置き予想が台頭していることである。

この点をCMEのFedWatch ツールで確認すると、現時点では3%台の低い確率だが、11月のFOMCで政策金利が据え置かれる予想が出始めている(下のチャート、赤棒グラフを参照)。今後発表される重要指標、特に企業活動、個人消費そして雇用に関連した経済指標で強い内容が続く場合は、パウエルFRBの利下げサイクルがひとまず休止する可能性がさらに高まる状況を想定しておきたい。実際に利下げ期待が後退すれば、米株安の要因になり得る。

11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ確率

11月の連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ確率

出所:CMEのFedWatchツール / 日本時間10月7日 午後12時時点

急反発する米金利と原油先物価格

アメリカの債券市場では金利が急反発している。金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りは9月の雇用統計を受け3.96%まで上昇した。10年債利回り(長期金利)は3.98%と節目の4%を視野に上昇幅が拡大している。週明けの時間外市場でも米金利が上昇する局面が見られた。

米金利のチャート:日足 2024年4月以降

米金利のチャート:日足 2024年4月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 10月4日までの動向

ソフトランディング期待を要因とした米金利の上昇ならば、米国株の押し上げ要因となろう。問題は、中東リスクに起因した米金利の上昇である。このケースでは、米国株にとってネガティブに働こう。

先週3日と4日の市場でNY原油先物価格は、50日線と短期レジスタンスラインを完全に突破し、8月下旬以来となる75ドル台へ上昇する局面が見られた。サウジアラビアが増産すれば、原油先物価格の下落要因となろう。しかし、今は中東リスクによる原油高を意識すべき局面にある。

イスラエルのネタニヤフ首相は5日、イランに報復する姿勢を改めて示した。また、イスラエル軍のハガリ報道官は同日、イスラエル軍が「適切なタイミングで報復する」タイミングを検討していると述べた(ロイター通信)。

パウエルFRBの利下げペースに不透明感が漂い始めている状況で中東情勢がさらに混迷すれば、「石油の供給懸念→さらなる原油先物価格の上昇→コストプッシュインフレ→米金利の上昇→米株安」のリスクシナリオを用意しておきたい。

NY原油先物価格のチャート:日足 2024年7月以降

NY原油先物価格のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

S&P500、焦点は新たな上値水準の見極め

アメリカ株のトレンドを考えるうえでS&P500の動きを常にチェックしておきたい。日足のMACDは横ばいで推移しているが、RSIはゴールデンクロスを形成するムードにある。5,670レベルがサポートラインへ転換し(下の日足チャート、黒矢印を参照)、再び10日線を突破している状況も考えるならば、S&P500の地合いは強い。

S&P500のチャート:日足 2024年8月以降

S&P500のチャート:日足 2024年8月以降

出所:TradingView

また、S&P500を対象にしたオプション取引のボラティリティを元に算出されるVIXは20ポイントを下回る水準にある。プットコールレシオは2.0前後で推移している。いずれも今夏の株安局面の水準を目指す状況にはない。上で述べたテクニカルの動向も総合的に考えるならば、今週のS&P500は、新たな上値水準の見極めが焦点となろう。

VIX指数とプットコールレシオ:日足 2024年5月以降

VIX指数とプットコールレシオ:日足 2024年5月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

S&P500の上昇要因として今週は、9月の物価指標に注目したい。10日に消費者物価指数(CPI)、11日に生産者物価指数(PPI)が発表される。これら物価指標でインフレの鈍化傾向が確認される場合は、上で述べた11月FOMCでの金利据え置き確率が低下しよう。予想以下の物価指標はS&P500の押し上げ要因となろう。

S&P500が上昇トレンドを維持する場合、目先の焦点は9月26日の高値5,767レベルの突破となろう。このレジスタンスポイントの突破は、5,800ポイントをトライするシグナルと捉えたい。

S&P500が5,800ポイント台の攻防へシフトすれば、フィボナッチ・エクステンション76.4%の水準5,809レベルのトライおよび上方ブレイクが焦点となろう(上の日足テクニカルチャート、緑ラインを参照)。

反落の局面では5,700の維持が焦点に

一方、米金利の上昇や9月の物価指数が米株安の要因となれば、S&P500の調整相場(反落)を想定しておきたい。

このケースでは、5,700ポイントの維持が焦点となろう。このサポートポイントを目指すサインとして、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準5,731レベル、半値戻しの水準5,720レベル、そして61.8%水準5,710レベルの攻防に注目したい。偶然にも10ポイントレンジでリトレースメントの水準が展開している。61.8%の水準5,710の10ポイント下は5,700となる。

S&P500が5,700ポイントを完全にブレイクアウトすれば、サポートラインへ転換した5,670をトライするサインと捉えたい。

45分足チャートのMACDとRSIはともに上昇基調にある(下の45分足チャート、緑矢印を参照)。これらの指標でデッドクロスが同時に確認される場合は、上で述べたフィボナッチ・リトレースメントの水準を視野にS&P500の反落を想定したい。

S&P500のチャート:45分足 9月20日以降

S&P500のチャート:45分足 9月20日以降

出所:TradingView

米国市場は決算シーズンへ突入

なお、今週11日の大手金融機関の決算を皮切りに、アメリカの株式市場は四半期決算シーズンに入る。上で述べたとおり、米利下げペースに対する市場の思惑が上方に修正され、米金利の上昇幅が拡大している状況は、米株安の要因になり得る。しかし現時点でS&P500 は、米金利上昇の影響を跳ね除け強気地合いを維持している。
この状況で良好な四半期決算が続けば、株安懸念が払しょくされるだろう。S&P500は上で取り上げたレジスタンスポイントの突破が予想される。

まずは、大手金融機関の決算がアナリストのコンセンサス予想を上回るか?この点を確認したい。

大手米金融機関の決算 まとめ:10月11日

大手米金融機関の決算サマリー:10月11日

EPS、売上高、純金利収入の予想はブルームバーグより


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