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【米国株の見通し】ナスダック100、調整入り回避は物価指数次第 消費者心理も焦点に

今週の米国株も経済指標にらみの1週間となろう。2月の消費者物価指数(CPI)と3月のミシガン大学消費者態度指数および期待インフレ率で大きく動く可能性がある。調整局面入りが迫るナスダック100の週間見通し。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

記事の概要

3月に入り米国株の下落幅が拡大し先行き不透明感が強まっている。特にハイテク株比率の高いナスダック100は調整局面入りが目前に迫っている。
今週の米国株も経済指標にらみの1週間となろう。2月の消費者物価指数(CPI)生産者物価指数(CPI)、3月のミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率で大きく動く可能性がある。これら経済指標で景気の先行き不安がさらに強まれば、ナスダック100の調整局面入りを警戒したい。一方、経済指標で景気不安が後退すればナスダック100の急反発が予想される。週間の予想レンジは19,600~21,000ポイント。

不穏な米国株、ナスダック100は調整局面入り目前

先週の主要なアメリカ株価指数は下落して終えた。ダウ平均以外の株価指数が3週連続で下落した状況は、アメリカ株式市場のトレンドが変わりつつあることを示唆している。多くの機関投資家が運用のベンチマークにするS&P500は先週の6日と7日に200日線を下方ブレイクし、昨年11月のアメリカ大統領選挙以降の上昇幅が帳消しとなった。

ハイテク株比率の高いナスダック100に至っては、2月19日の終値ベースでの高値から9%超下落し、調整局面入りが目前に迫る状況にある。なお、取引時間中の高安ベースでは11%超下落した。

ナスダック100のチャート:年初来

ナスダック100のチャート:年初来

出所:TradingView

米国株の先行き不透明感が高まっている要因は、景気不安にある。2月の米雇用統計では非農業部門雇用者数変化が予想を下回り、失業率が1月から0.1ポイント上昇したが依然として労働市場は堅調さを保っている。しかし、こちらのIG為替レポートで指摘したとおり、一部の指標では労働市場に軟化の傾向が見られる。個人消費の先行き懸念が強まっている状況も考えるならば、今週の米国株も経済指標にらみの1週間となろう。


経済指標にらみが続く 2月CPI、3月消費者マインドとインフレ期待が焦点に

2月の消費者物価指数(CPI)
景気不安が市場のテーマである以上、今週の米国株も経済指標にらみの展開が続くだろう。週前半の注目指標は12日の2月消費者物価指数(CPI)である。

ブルームバーグの市場予想によれば、前月比と前年同月比でともに1月からインフレが抑制される見通しにある。ゆえに上振れリスクを警戒したい。

9日のIG為替レポートで指摘したとおり2月の米雇用統計は労働市場の堅調さを示唆しながらも、一部では軟化の兆しが見られた。個人消費の先行き不透明感も強まっている。この状況で2月CPIがインフレの粘着性を示せば、スタグフレーションの懸念が米国株の重石となろう。一方、CPIでインフレの鈍化が確認される場合は米利下げ期待が高まる要因となろう。このケースでは、米国株の上昇を想定したい。

なお、翌13日には2月の生産者物価指数(PPI)が発表される。トレンドを示す前年同月比の伸び率は3.2%と、1月の3.5%から鈍化の見通しにある。同比のコア指数も3.5%と、1月の3.6%からインフレが抑制される見込みである。CPIと同じく上振れリスクによる株安を警戒したい。

米国の消費者物価指数(CPI):直近1年間

米国の消費者物価指数(CPI):直近1年間

ブルームバーグのデータより筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:2月の市場予想

3月ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率
週後半は、3月のミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率(速報値)が米国株の変動要因となろう。2月の内容が景気不安をあおり、現在の米株安の一因となった経緯がある。ブルームバーグがまとめた市場予想では消費者態度指数が63.5と、消費者マインドの低下が続く見通しにある。先行景況感も同じく63.5の見通しにある。一方、期待インフレ率は1年先と5-10年先がともに2月の確報値から鈍化の見込みにある。

米株安の要因として最も警戒したいのが、2月と同じく消費者マインドが低下すると同時に期待インフレ率が予想外に上昇する場合である。このケースではスタグフレーションの懸念がさらに強まることで、米国株に売りの圧力が高まることが予想される。

一方、消費者マインドの改善とインフレ期待の鈍化が見られる場合は、米国株の押し上げ要因になり得る。

ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率:直近1年間

ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率:直近1年間

ブルームバーグのデータで筆者が作成


堅調な予想EPS、経済指標次第でナスダック100は急反発も

ナスダック100は調整局面入りが目前に迫っているが、企業の利益予想は堅調さを保っている。この点についてブルームバーグがまとめた予想1株利益(12か月先、以下では予想ESP)で確認すると、2023年以降、予想ESPは再び拡大の傾向へ転じている。この動きに連動し、ナスダック100の上昇幅も拡大してきた。

2023年の秋、2024年の4月そして同年の8月にナスダック100が下落し予想EPSとの間に乖離が発生した。しかしこれらの乖離は、ナスダック100の上昇で収れんするパターンにある。現在は、予想EPSとナスダック100との間いでまた乖離が発生している。しかし、予想ESPは堅調さを保っていることを考えるならば、今週の経済指標が景気不安の後退要因となれば、ナスダック100は以下でまとめたレジスタンスラインのトライを意識したい。

ナスダック100と12カ月先予想EPSの推移:2020年以降

ナスダック100と12カ月先予想EPSの推移:2020年以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成


ナスダック100 今週の見通しとテクニカルライン

今週のレジスタンスライン、週間の予想レンジ上限は21,000ポイント
調整局面入りの可能性が高まっているナスダック100だが、経済指標で景気不安が後退する場合は、短期間で下落幅が拡大した反動の急反発が予想される。週間の予想レンジ上限は21,000ポイント。この水準をトライするサインとして、3つの移動平均線の攻防に注目したい。

・最初の焦点は200日線の突破である。先週7日の反発を止めたことから、レジスタンスラインへ転換する可能性が出てきた。この移動平均線すら突破できないならば、ナスダック100の調整局面入りを想定したい

・一方、ナスダック100が200日線を上方ブレイクすれば10日線のトライを想定したい。週足チャートにプロットしたフィボナッチ・リトレースメント23.6%戻しの水準20,323ポイントの突破は、10日線をトライするサインと考えたい

・ナスダック100が10日線の上方ブレイクにも成功すれば、26週線のトライを想定したい。週足チャートにプロットしたフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準20,686ポイントの突破は、26週線をトライするサインと考えたい。26週線の突破は、予想レンジの上限21,000トライのシグナルとなろう

レジスタンスライン
・21,000:予想レンジの上限
・20,880:26週線(3/7時点、週足)
・20,686:38.2%戻し
・20,666:10日線(3/7時点、日足)
・20,323:23.6%戻し(週足)
・20,247:200日線(3/7時点、日足)

今週のサポートライン、週間の予想レンジ下限は19,600ポイント
今週の経済指標で景気不安がさらに強まる場合、ナスダック100は以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。週間の予想レンジ下限は19,600ポイント。この水準をトライするサインとして19,830レベルと先週7日安値の攻防に注目したい。

・最初のサポートラインは、週足チャートにプロットした半値戻しと52週線が交錯している19,830ポイントとなろう。先週の下落を止めたこれらテクニカルラインを維持する場合は、来週以降も重要なサポート水準として意識される可能性が高まろう

・ナスダック100が19,830レベルを難なく下方ブレイクすれば、調整相場の進行を想定したい。このケースでは、先週7日の安値19,736ポイントの攻防が焦点となろう。この水準のトライは、19,700ポイントを維持できるかどうか?を判断する攻防でもある

・ナスダック100が19,700ポイントをも下方ブレイクする場合は、今週の予想レンジ下限19,600ポイントを視野に下落幅の拡大を想定したい。この水準は、昨年の9月下旬から10月上旬にかけてサポートラインへの転換が確認された経緯がある

サポートライン
・19,838:52週線(週足)
・19,833:半値戻し(3/7時点、週足)
・19,736:3月7日の安値(日足)
・19,700:サポートライン
・19,600:予想レンジの下限(日足)


ナスダック100のチャート

日足:24年9月以降

日足:24年9月以降

出所:TradingView

週足:24年7月以降

週足:24年7月以降

出所:TradingView


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