今日の注目材料とドル円のチャートポイント
米債市場では再び利回りに上昇圧力が高まりつつある。経済指標でアメリカ経済の底堅さが確認できれば、米国債利回りはさらに反発することが予想される。ドル円は引き続き米国債利回りの動きにトレンドが左右されよう。詳細はマーケットレポートをご覧ください。
今日の注目材料
【サマリー】
・米国債利回りの上昇でドル円は128円台の攻防へシフト
・米債市場はインフレのリスクと景気後退のリスクが意識される状況に
・5月米ISM製造業景気指数の内容と米国債利回りの反応に注目
・ドル円のチャートポイントについて
・ドル円は128円台の攻防へシフト
31日の米債市場では、10年債をはじめとした各年限の利回りが上昇した。この動きに連動し、外為市場では米ドル高優勢の展開となった。
米ドル相場のパフォーマンス:5月31日
31日の米国株式市場では主要指数が下落したが、上のパフォーマンスチャートが示すとおりドル円(USDJPY)の上昇幅は拡大し、現在は128円台の攻防へシフトしている。昨日の動きは、ドル円のトレンド決定要因が米国株ではなく米国債利回りの動き(日米利回り格差の動向)にあることを示唆している。
ドル円と日米利回り格差のチャート
・インフレのリスク、景気後退のリスクそしてアメリカの経済指標
欧州の5月インフレ率(消費者物価指数)は前年同月比で8.1%と、4月改定値の7.4%からさらに加速し、統計でさかのぼれる1997年以降で最高を更新した。長引くロシアーウクライナ紛争により資源の供給問題がインフレの高止まり要因となる可能性があることを考えるならば、欧州のみならず世界的にインフレリスクが意識される状況が続く可能性がある。昨日の米債市場ではこの点が意識され、利回りが上昇したとの指摘がある。だが、月末というタイミングを考えるならば、景気後退のリスクを意識した米債買いの調整により利回りが上昇した可能性もある。よって、今日以降の米国債利回りの動きで、どちらのリスクが意識されているのか?を確認する必要があろう。
今日以降、再び米国債利回りが低下基調へ転じるならば、それは景気後退のリスクに対する市場参加者の懸念の強さを示すことになろう。このケースでの外為市場では、米ドル売り優勢とドル円(USDJPY)の反落を想定しておきたい。
一方、インフレリスクの方が強く意識されるならば、短期的に米国債利回りの低下圧力が後退すると予想する。
しかし、利回りが上昇基調へ転じるためには、アメリカ経済の強さを示す材料が必要である。この点で重要となるのが経済指標である。今日は5月米ISM製造業景気指数が発表される。アメリカ経済の堅調さを示す内容となれば、米国債利回りの反発基調が維持される展開を想定しておきたい。
逆に予想を下回る内容となれば、利回りの低下を想定しておきたい。米ドル相場(特にドル円)は利回りの動きに左右される状況が続くだろう。
また、米連邦公開市場委員会(FOMC)のたたき台となる地区連銀経済報告(ベージュブック)の内容も米国債利回りと米ドル相場の変動要因となる可能性がある。
ISM製造業景気指数の推移
ドル円のチャートポイント
・上値の焦点は129円台乗せ
通貨オプション市場のリスクリバーサル(ドル円 / 1週間)の動きを確認すると、ドル・プットの動きが後退している。50日移動平均線(SMA)がサポートラインとなっていること、127円台で底固めの展開が見られることも考えるならば、ドル円(USDJPY)は反発ムードにある。よって今日のドル円は、129円台への上昇が焦点となろう。
米国債利回りの上昇が続く場合、ドル円は昨日の高値128.88レベル(半値戻しの水準)を突破することが予想される(レポート執筆時点で128.90台へ上昇する局面あり)。ドル円が128.88レベルを完全に突破する場合は、129.00トライのシグナルと想定しておきたい。
ドル円が129円台へ上昇する場合、次の焦点はフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準129.44レベルおよび5月18日の高値129.53レベルのトライとなろう。
・下値の焦点は128円台の維持
さえない米経済指標などでドル円が反落する場合は、128円台の維持に注目したい。この水準がレジスタンスからサポートのポイントへ転換すれば、地合いの強さを市場参加者に印象付けよう。
逆にドル円が128円台の維持に失敗する場合は、50日線(今日現在127.02レベル)を視野に下落幅の拡大を想定したい。
ドル円のチャート
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