YCC修正観測後退 円安ドル高急進 物価上昇4%でも日銀動かず?
日銀が7月に大規模金融緩和策を見直すとの観測が後退。ドル円相場の流れは一転し、1週間で4円超の円安ドル高が進んだ。
日本銀行が27、28日の金融政策決定会合で、イールド・カーブ・コントロール(YCC)などの大規模金融緩和策を見直すとの観測が後退している。このところのドル円相場では、日本の金利動向に変化は出ないとの見方から、米国の金利先高観の緩みで進んだ円高ドル安が反転。21日のニューヨーク市場では大幅な円高ドル安が進んだ。ただ、日本の6月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品とエネルギーを除いた「コアコア指数」が3か月連続の4%台を記録。物価上昇を促すために続けてきた大規模金融緩和策をあえて維持する日銀をいぶかしむ声は今後も強まりそうだ。
ドル円相場で1週間で4円超の円安ドル高が進行
金融情報会社リフィニティブのデータによると、21日のニューヨーク市場のドル円相場(USD/JPY)では前日比1.72円の円安ドル高が進み、1ドル=141.79円で取引を終えた。14日の取引時間中につけた137.23円との比較では1週間で4円以上の円安ドル高が進んだ形となった。14日の安値に至るまでは、米国で7日に発表された6月の雇用統計や12日発表の6月のCPIが弱かったことを受けて、米国金利の先高観が緩み、2週間で145円台から137円台までの8円近い円高ドル安が進んでいただけに、局面の変化が感じられる。
背景にあるのは、日銀が次回の決定会合で大規模金融緩和策を維持するとの見方の強まりだ。植田和男総裁は訪問先のインドで18日、「持続的・安定的な2%のインフレの達成というところにはまだ距離がある」という基本的な認識を強調。この前提が変わらない限り、「全体のストーリーは不変」と述べて、大規模金融緩和策の修正は行わないとの方向性を示唆した。日本時間の21日にはロイター通信が日銀が金融政策を維持する公算だと報じた。
植田氏はこれまでも、大規模金融緩和策を修正して物価上昇抑制に踏み出すことに及び腰だった。日本の物価上昇率は日銀が目標とする2%を超えているが、輸入物価の上昇が起点となった現象で、今後も長続きするとは確信できないとの立場だ。大規模金融緩和策の修正に着手するには、日本国内の賃金上昇が消費を活性化させた結果として物価が上がる「好循環」が確認されることが必要だとしている。
一方、大規模金融緩和策をめぐっては物価上昇を実現する効果が不透明であるにも関わらず、日本経済を歪ませてきたとの批判が絶えない。エコノミストの間では、植田氏が4月に総裁に就任する前の段階から、「就任直後に修正」や「今夏を待たずして修正」といった可能性が取り沙汰されていた。7月7日に厚生労働省が発表した5月の毎月勤労統計(速報値)で名目賃金にあたる現金給与総額が前年同月比2.5%という市場予想を超える高い伸びを示すと、植田氏が指摘する好循環の始まりが意識され、7月修正観測が強まった。こうした見方は「2週間で8円」の円高ドル安を後押ししたもようだ。
輸入物価の大幅下落は将来の物価上昇沈静化の予兆か
この流れをインドでの発言で反転させた植田氏は、引き続き物価上昇の持続性を確信できていないもようだ。日銀が12日に発表した統計によると、植田氏が物価上昇の起点とみる輸入物価は前年同月比11.3%減で、3か月連続のマイナス。これまでの輸入物価は、米国などの海外で新型コロナウイルス禍からの経済活動の復活が始まった2021年上半期から大きく伸びだし、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後の原油価格上昇などを受けた7月には約50%増を記録していた。足元での輸入物価下落は事態の様変わりを感じさせ、今後は物価上昇圧力が弱まり、さらには来年の春闘での賃上げムードも弱まるとのシナリオも想定される。
とはいえ、21日に発表された6月のCPIは総合指数と、生鮮食品を除くコア指数の伸び率が、いずれも前年同月比3.3%と高水準だった。また、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数の伸び率は4.2%で、4月(4.1%)と5月(4.3%)に続き、日銀が目標とする2%の2倍にあたる水準が続いている。
足元の物価上昇率の高さにも関わらず、将来の沈静化を見越して、物価上昇を促す大規模金融緩和策をあえて続ける植田氏のかじ取りは、直観的には分かりにくい。政策修正観測は治まってはいるが、今後も物価や賃金の上昇を示す経済指標が出るなどするたびに思惑が再燃し、ドル円相場に円高ドル安圧力がかかる事態も考えられそうだ。
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