中国経済の不安拡大 7月は物価下落 輸出低調はS&P500揺らす
中国の7月のCPIはマイナスに転落。中国経済の不振は米国株安の要因ともなっており、中国政府の景気刺激策も期待される。
中国経済復活への不安が広がっている。9日に発表された7月の消費者物価指数(CPI)は総合指数の伸び率が2年5か月ぶりにマイナスに転落。製造業の景況感も振るわないままで、需要の冷え込みが懸念される状況だ。中国経済の不調の背景にある輸出の減少は世界的な需要縮小の現れともいえ、中国の7月の貿易統計が発表された8日には、米国のS&P500種株価指数の下落材料になったもようだ。中国政府による景気テコ入れ策への期待もある中、今後も中国の経済指標や政府の動きで相場が動く場面が出てきそうだ。
中国の7月のCPIは前年同月比マイナス0.3%
中国国家統計局が発表した7月のCPIは総合指数が前年同月比マイナス0.3%となった。CPIの伸び率がマイナスになるのは2021年2月(マイナス0.2%)以来。同時に発表された卸売物価指数の伸び率もマイナス4.4%となり、こちらは10か月連続で物価水準が低下する結果になった。中国国内での消費の不振を感じさせる内容だ。
中国経済の失速は景況感にも表れている。国家統計局が7月31日に発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は4か月連続で、景気の拡大と悪化の節目となる50を割り込んだ。一方、非製造業のPMIは51.5で、50を上回ってはいるが、6月の53.2からは低下した。非製造業PMIが前月よりも小さくなるのは4か月連続だ。
中国の輸出は7月まで3か月連続のマイナス
中国経済の不振の背景には輸出の減少がある。8日に発表された7月の輸出額は2817億ドルで、前年同月比14.5%の減少となった。輸出額がマイナスとなるのは3か月連続で、低下率は毎月拡大している。国別でみると、アメリカ向けの輸出が1-7月に前年同期比18.6%減少した。米国の個人消費はモノよりもサービスで伸びており、中国製品への需要が落ちている可能性がある。中国の輸出は欧州連合(EU)向けや東南アジア諸国連合(ASEAN)向け、日本向けでも減少している。
中国の輸出の落ち込みは世界的な経済減速を感じさせる材料だ。8日の米国の株式市場ではS&P500種株価指数(SPX)の終値が前日比0.4%安となった。格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが中堅・中小銀行10行を格下げしたこととあわせて、中国の輸出不振が株安の原因だとされた。
中国政府の景気刺激策への期待高まる
一方、中国の経済指標悪化は、政府による景気刺激策への期待も高めている。中国政府は2022年11月以降、厳格な新型コロナウイルス感染拡大防止策を解除し、2023年は5%前後の実質GDP成長率を目指すとしてきた。しかし4-6月期の実質成長率は前年同期比6.3%と伸びたものの、前年同期に上海でロックダウンがあったことの反動が大きく、市場予想(7.1%)は下回っている。このため「景気の本格的な回復には、民営企業に対する強力なテコ入れと、不動産市場の安定化・不動産不況からの脱却が不可欠」(大和総研の斉藤尚登氏)と指摘されている。
今後、中国政府が景気刺激策を打ち出した場合は、投資家心理を改善させることも想定される。ただ、内容が小規模なものに留まれば、金融市場の失望を招くおそれもあり、中国の経済指標や政府の動きの重要性が高まりそうだ。
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