【ドル円 (USDJPY)】焦点は日銀イベント / 今週の見通しとチャートポイント
外為市場では米ドル安が進行する裏で、円買いの圧力がジワリと高まる状況にある。円高優勢のトレンドがさらに進行するのかどうか?この点を見極めるうえで市場参加者は今週、18~19日に開かれる日銀金融政策決定会合に注目するだろう。今回の会合の焦点は?ドル円の見通しと注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・進行する米ドル安、米ドル高トレンドの転換を意識する状況が続く
・今週のドル円は、新たなサポート水準の見極めが焦点となろう
・ドル円が76.4%戻しの水準をもブレイクすれば、140.00の攻防が視野に
・日銀イベントの焦点は、植田総裁が ”布石” を打ってくるかどうか?にある
トレンドの転換を意識する状況が続く米ドル相場
今年の11月以降、外為市場では米ドル安の圧力がジワリと高まる状況にある。
鈍化の傾向を維持しているインフレ率と連邦準備制度理事会(FRB)の政策転換に対する市場の思惑が、米ドル安の主因となっている。
特に最弱通貨の一角だった日本円で6%以上も下落している状況は、米ドル高の圧力が後退していることだけでなく、異常な円安が是正される状況が続く可能性も示唆している(下のチャート、赤ラインを参照)。
米ドル相場の動向:23年11月以降
米ドル安の主因となっているインフレの動向をコアインフレ率(前年同月比)で確認すると、消費者物価指数(CPI)と個人消費支出(PCE)価格指数のいずれもが、22年以降にピークアウトし、その年の後半から緩やかな鈍化の傾向へ転じていることが分かる。
パウエルFRBは、後者のPCEコアインフレ率を重視している。
12月に公表された連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者による最新の経済見通しでは、26年にPCEコアインフレ率が物価目標の2%へ低下する見通しが示された。
そしてパウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「利上げサイクルのピークに達したか、その近くにある」こと、さらに利下げの開始時期について議論したことを明らかにした。
インフレの鈍化と12月のFOMCイベントを受け、短期金融市場では3月利下げの確率が一時70%台へ急上昇する局面が見られた。
先週15日にニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、市場が抱く早期の利下げ期待をいさめた。レポート執筆時点での3月利下げ確率は、60%台で推移している。
米国 コアインフレ率の推移:20年以降
インフレの鈍化、利上げサイクルの終了と早期利下げ政策への期待が高まっていることを受け、米ドル相場の大まかなトレンドを表すドルインデックス(DXY)は現在、200日線を完全に下方ブレイクする状況にある(下のチャート、赤ラインを参照)。
104.25レベルが強固なレジスタンスとして意識され、下落基調のトレンドチャンネルが形成されつつあること、そしてゼロラインを下回る状況でMACDが再びデッドクロスへ転じつつあることも考えるならば、テクニカルの面でも米ドル高の圧力が後退していることが分かる。
上で述べた状況を総合的に考えるならば、現在の外為市場では米ドル相場がトレンドの転換点にあると言える。ゆえに今週もトレンド転換のシグナルを一つひとつ確認することが重要な焦点となろう。
ドルインデックスが下値をトライする局面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準101.41レベルを完全に下方ブレイクするかどうか?目先はこの点に注目したい。
ドルインデックスのチャート:日足 23年7月以降
ドル円、今週の見通しとチャートポイント
焦点は新たなサポート水準の見極め
米ドル安がジワリと進行している状況を受け、ドル円(USD/JPY)でもトレンド転換のムードが日増しに高まっている。
日銀による政策転換への思惑も重なり、ドル円は先週、安値140.95レベルまで急落する局面が見られた。
ドルインデックス(DXY)と同じく200日線(今日現在142.52レベル)を完全に下方ブレイクする状況にあること、そして先週15日の市場でその200日線が相場の反発を止めたことも考えるならば、ドル円の地合いは弱い。
この点は、ゼロラインを下回る状況で、なおも低下トレンドを維持しているMACDも示唆している。
ゆえに、現在のドル円の焦点は、新たなサポート水準の見極めにある。
今週、ドル円がさらに下値をトライする局面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準141.31レベルを完全に下方ブレイクするかどうか?まずはこの点が焦点となろう。
日足ローソク足の実体ベースでドル円が141.31レベルを完全に下方ブレイクする場合は、141.00をも下抜ける状況を想定しておきたい。
実際にドル円が140円台の攻防へシフトする場合は、節目の140.00をトライする可能性を意識したい。
ドル円が140.00レベルをも下方ブレイクする場合は、さらに下値を目指すシグナルになり得る。
なお、ドル円が今週、140.00またはそれ以下の水準を目指すきっかけとなり得るのが、下で述べる日銀イベントとなろう。
ドル円のチャート:日足 23年7月以降
反発局面での焦点は?
一方、日銀イベントが円売りの要因となる場合、または今週の米経済指標(11月のPCEデフレーター)やFEDスピーカー達の言動が米ドルを買い戻す要因となる場合、ドル円(USD/JPY)は先週15日の反発を止めた200日線の突破が目先の焦点となろう。この移動平均線すら突破出来ない状況が続けば、上で述べた各サポート水準のトライそして下方ブレイクを意識する状況が続くだろう。
一方、ドル円が200日線の突破に成功する場合は、ひとまずフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準141.31レベルや141.00レベルが目先のサポート水準として意識される可能性が高まるだろう。
200日線を超えた後もドル円の反発相場が進行する場合は、11月の下旬以降、ドル円の反発をことごとく止めている10日線のトライが焦点となろう。この移動平均線は今日現在、144.40レベルで推移している。
ドル円が10日線を目指すシグナルとして、フィボナッチ・リトレースメントの各水準での攻防に注目したい(下の1時間足チャートを参照、安値140.95レベルを維持する状況が続く場合)。
リトレースメント38.2%の水準は143.00付近にあたる。そしてリトレースメント61.8%の水準144.33付近には今日現在、10日線が低下している。半値戻しの水準143.77レベルの上方ブレイクは、10日線(61.8%の水準)をトライするシグナルと想定しておきたい。
ストキャスティクスやROCなどで短期的な相場の状況を探りながら、上で述べたレジスタンスの水準をトライする局面で、これらオシレーター指標が短期的な上昇の過熱感を示す場合は、ドル円の反落を警戒したい。
一方、上で述べた141円台のサポート水準をドル円がトライする局面で、オシレーター指標が短期的な下落の過熱感を示す場合は、ドル円の反発を意識したい。
ドル円のチャート:1時間足 12月7日以降
日銀イベントの注目ポイント
来年前半の政策転換のための”布石”を打ってくるかどうか?
日銀は今週18〜19日に、今年最後の金融政策決定会合を開く。
植田総裁は賃金の上昇と物価の好循環を注視している。この点を見極めるためには来年の春闘の動向を見極める必要がある。ゆえに今回の会合では、多くの市場参加者が注目しているマイナス金利解除の可能性は低いと思われる。
イールドカーブ・コントロール(YCC)の完全撤廃も焦点のひとつだが、すでに3回の柔軟化を経て、事実上YCCは形骸化しつつある。また、マイナス金利解除の際に長期金利が急上昇するリスク可能性が残ることも考えるならば、オフィシャルにYCCの撤廃を宣言するタイミングにない。
ゆえに、今回の会合では、経済・物価情勢の展望(展望レポート)が公表される来年1月または4月の会合で政策転換に踏み切る「布石」を植田日銀総裁が打ってくるかどうか?この点に注目したい。
会合後の記者会見で植田日銀総裁が賃金の上昇と物価の好循環の展望について楽観的な見方を示す場合は、来年前半の政策転換に向けた布石、と各市場の参加者が捉える可能性があろう。
このケースでは、国内の長期金利に上昇の圧力が高まることが予想される。パウエルFRBが利上げ政策から利下げ政策への転換シグナルを発信してきた状況も考えるならば、日銀による早期の政策転換期待の高まりは、日米の利回り格差をさらに縮小させる要因となろう。
ドル円(USD/JPY)は、日米利回り格差の動きに連動している(下のラインチャートを参照)。
ゆえに、今年最後の日銀イベントが国内金利をさらに押し上げる要因となれば、ドル円は上で述べた141円台のサポート水準だけでなく、年内の140.00レベルのトライおよび下方ブレイクをも想定しておきたい。
日米利回り格差の動向:日足 年初来
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