ジワリと上昇する米長期金利と米ドル相場、目先の焦点は米雇用関連指標
米債市場では長期金利にも上昇の圧力が高まってきた。この状況が続けば、外為市場では米ドル高が再燃する可能性が高まろう。目先の注目材料は?ドル円のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・米債市場では、10年債利回り(長期金利)にも上昇の圧力が高まる状況にある
・米長期金利の上昇は、米ドル相場のサポート要因となっている
・今日以降の注目材料は、アメリカの雇用関連指標となろう
・目先のドル円の展望と上下のチャートポイントについて
米ドル買い優勢
連邦準備理事会(FRB)は5日、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(6月13-14日開催分)を公開した。11会合ぶりに利上げの停止を決定した裏では、タイトな労働市場やインフレが物価目標の2%に向かって鈍化していく兆しが乏しいことを理由に、複数の参加者が利上げの継続を支持していたことが明らかになった。また、大半の当局者はいずれ追加利上げが適切になると考えていることも分かった。
FOMC議事要旨が公表される前から米金利には上昇の圧力が高まっていた。この日の外為市場は米金利の上昇にサポートされ、米ドル買い優勢の展開となった。
主要通貨に対する米ドル相場のパフォーマンスを確認すると、高金利通貨としての妙味があり、かつこの日の原油高が好感されたメキシコペソ以外の通貨で米ドル高の展開となった。
米ドル相場のパフォーマンス:7月5日
アメリカの長期金利と雇用関連の経済指標
長期金利の動きに連動する米ドル相場
今の米債市場では、2年債や5年債の利回りだけでなく10年債利回り(長期金利)にも上昇の圧力が高まっている。昨日、長期金利は3.9%台へ到達した。
長期金利がこのまま節目の4.0%を目指しかつ突破する材料として今日以降注目したいのが、アメリカの雇用関連指標である。
今日は週間(前週分)の新規失業保険申請件数、5月の雇用動態調査(JOLTS)そして6月のADP雇用統計が発表される。今日はこれら雇用関連指標の内容で米債市場が動く可能性がある。
下のラインチャートでアメリカの長期金利と米ドル相場の大まかなトレンドを示すドルインデックス(DXY)のトレンドを確認すると、ほぼ同じトレンドを描いている。ゆえに今日以降のアメリカ雇用関連指標で米長期金利が上下に大きく振れる場合は、米ドル相場もその動きに連動することが予想される。
アメリカの長期金利とドルインデックスのチャート
新規失業保険申請件数と雇用動態調査(JOLTS)に注目
今日のアメリカ雇用関連の経済指標の中で筆者が注目しているのが、新規失業保険申請件数と雇用動態調査(JOLTS)である。
特に週間ベースで公表される新規失業保険申請件数は、今後のアメリカ労働市場の動向を予測する際に多くの市場関係者が注目すると思われる。
この指標は上下に大きく増減することがある。このため、一定期間の平均でならしてトレンドを確認する必要がある。下のチャートをみると、先週は申請件数が大きく減少した。しかし4週の移動平均でトレンドを確認すると、昨年10月あたりから移動平均が上昇し始め、一度低下した後、今年に入り上昇トレンドを形成している(=申請件数が増加の傾向をたどっている)ことが分かる(下チャートの青ライン)。
最新のデータで予想(24.5万件)以上の申請件数が確認される場合は、米長期金利の上昇が一服する(米国債を買い戻す)要因となり得る。その後に発表される5月の雇用動態調査(JOLTS)でも予想以下(988.5万件)となれば、「米長期金利の低下→調整の米ドル売り」を想定しておきたい。
一方、上とは逆の状況-新規失業保険申請件数が予想以上に減少し、かつ雇用動態調査(JOLTS)が予想以上に増加すれば、労働市場のタイトな状況が意識され「米長期金利の上昇→米ドル買い」の状況が続くことが予想される。
今日の雇用関連指標がまちまちの内容となる場合は、米債市場でも外為市場でも大きな動きが見られることなく、明日の6月雇用統計待ちの状況になることが予想される。
アメリカの雇用関連指標のチャート
新規失業保険申請件数は週次:22年3月以降, 雇用動態調査(JOLTS)は月次:20年以降
ドル円の展望とチャートポイント
上値トライを意識する状況が続く
上で述べたとおり米債市場では、2年債や5年債の利回りだけでなく長期金利(10年債利回り)も上昇幅が拡大する状況にある。
筆者は長期金利について、インフレリスクの後に来る“先の相場”を予想して動いている(3.8%前後で上昇が止まっている)と考えていた。しかし現在の状況は、パウエルFRBと同じく米債市場でもインフレ圧力の根強さとそれが予想外に長く続く可能性を意識する状況にある。
この点は短期金融市場も同じである。6月の重要イベントを経ても5.3%前後で張り付いていた予想ターミナルレートは現在、5.4%までジワリと上昇している。
これらの動向を考えるならば、ドル円(USDJPY)は引き続き145.00レベルのトライが焦点となろう。
通貨オプション市場の動向を確認すると、リスクリバーサル(1ヶ月と3ヶ月)ではドルプットの傾きが止まっている。一方、ドル円の予想変動率(1ヶ月と3ヶ月)は、再び低下の基調にある(下チャートの青ゾーンを参照)。
これらの動向は、ドル円が下落してもその幅が限定的となる可能性を示唆している。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率のチャート
上下のチャートポイント
ドル円(USDJPY)は現在、144.00-145.00のレンジ相場となっている。今日の雇用関連指標でレンジの上限と下限、どちらをブレイクするのか?が目先の焦点となろう。
上で述べた状況を考えるならば、現在は上限の145.00レベルをトライおよびブレイクアウトする展開を意識しておきたい。
予想どおりにドル円が145円台へ上昇する場合は、直近高値の145.07レベルの突破が次の焦点となろう。この水準をも上方ブレイクする場合は、IG為替レポートで何度か取り上げた145.20レベルのトライが次の焦点となろう。
ドル円が145円台で底固めの状況となれば、明日以降146円台へ上昇するシグナルと捉えたい。
実際にドル円が146円台の攻防へシフトする場合は、22年の最高値151.94レベルと今年1月の安値127.22レベルの76.4%の水準146.11レベルのトライとなるかどうか?この点が焦点となろう。
なお、145円以上での攻防では、円買い介入(実際に実行するかどうかは別として)に対する市場参加者の警戒感が高まることが予想される。ゆえに、重要なテクニカルポイントでの反落を想定しておきたい。
ドル円のチャート:週足
一方、ドル円(USDJPY)が下値トライとなる場合は、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準144.16レベルの攻防に注目したい。昨日の反落局面ではこのテクニカルポイントがサポートとして意識された。ゆえに、144.16レベルの下方ブレイクは、レンジの下限144.00レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円が143円台の攻防となる場合は、“サポート転換”が確認された143.80レベルのトライおよび維持が最初の焦点となろう。
明日の6月雇用統計を控えてドル円の調整幅が拡大し、この水準(143.80レベル)をも下方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準143.59レベルまでの反落を警戒しておきたい。
ドル円のチャート:1時間足
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