米ドル安を想定する理由とドルインデックスの見通し
外為市場では今後、米ドル安の進行を想定しておきたい。そう考える理由は?ドルインデックスの見通しと注目のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
※ドル円の見通しについてはこちらのレポートを参照
※ユーロドルの見通しについてはこちらのレポートを参照
サマリー
・インフレ圧力の緩和が確認され米金利は再び低下基調へ
・FRBのバランスシート拡大がひとまず一服 米国株は上昇トレンドを維持か
・外為市場は米ドル安を再び意識する局面にある
・米ドル相場(ドルインデックス)の見通しと注目のチャートポイントについて
インフレ圧力の緩和と米金利の低下
2月のアメリカ個人消費支出(PCE)デフレーターは前年同月比で5.0%と、前月の5.3%から低下した。食品とエネルギーを除くコア指数も同比4.6%と、前月の4.7%から低下した。前月比でもコア指数が0.3%と、前月の0.5%から鈍化した。
連邦準備制度理事会(FRB)が注視している物価指標でインフレ圧力の緩和が確認されたことで、先月31日の米債市場では利回りに低下の圧力が高まった。
アメリカPCEデフレーターの推移
FRBのバランスシート拡大がひとまず一服
3月は金融システム不安を受けて金融機関による資金供給制度の利用額が急増した。この結果、連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシートが急拡大した。しかし、先月23日以降は利用額が減少し、バランスシートの拡大が一服した。
金融システム不安が完全に後退したわけではない。しかし、18ポイント台まで低下しているVIX指数(VIX)やFear & Greed Indexが 「Fear」から「Neutral」へ転じている状況を考えるならば、この問題(金融システム不安)に対する投資家の心理は改善の傾向にある。上で述べたインフレの鈍化とそれにともなう米金利の低下基調も考えるならば、今週の米国株は上昇トレンドを維持する公算が大きい。
FRBのバランスシート
再び米ドル安の進行を意識する状況に
2月PCEデフレーターでインフレの鈍化傾向が確認されたこと、そして金融機関による資金供給制度の利用額が減少へ転じている状況を考えるならば、今週の米国市場は金利の低下と株高が同時に発生することが予想される。この状況が発生する場合、外為市場では米ドル安の圧力が最も高まりやすい。ゆえに外為市場では、米ドル安の進行を再び意識する状況にある。
米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は現在、102ポイント(フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準)を意識する状況にある。反発の局面では、50日MA(103.50レベル)のはるか下で推移している10日MA(102.66レベル)での攻防が続いていること、MACDで地合いの弱さを示唆するトレンドが続いていることも考えるならば、テクニカルも米ドル安を意識する必要があることを示唆している。
ドルインデックスが102ポイント台を完全に下方ブレイクする場合は、今年2月の安値100.82レベルを視野に下落幅の拡大を警戒しておきたい。
ドルインデックスのチャート
米ドルの買い戻し要因
強い米経済指標
一方、米ドルの買い戻し要因として今週注目しておきたいのが、強い経済指標と原油先物価格の動向である。
前者では、ISM製造業/非製造業景気指数や雇用関連の指標で強い内容が確認される場合、米金利の反発とそれにともなう米ドルの買い戻しが予想される。なお、3月の雇用統計は海外市場が休場する7日に発表される。ゆえに今回の雇用統計の内容は、来週以降の相場に影響を与えるだろう。
原油先物価格の動向
サウジアラビアは2日、5月から23年末にかけて日量50万バレルの原油を減産する発表した。OPECプラスとの協調により、合計で110万バレル超の減産となる。サウジアラビアの減産発表を受け、週明けのNY原油先物価格(WTI)は一時81ドル台へ急騰する局面が見られた。
株高のムードが高まっているタイミングで原油先物価格の上昇幅が拡大する場合、米債市場では短期的かつ単発的な利回りの上昇が予想される。米金利の上昇は米ドル買いの要因となろう。このケースでのドルインデックスは、103ポイントおよび50日MAのトライを想定しておきたい(上の日足チャートを参)。
NY原油先物価格のチャート
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