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ドル円の週間見通し、再び141円台へ下落、焦点は米国CPIと新規失業保険申請件数、反発局面では戻り売りを警戒

8月の米雇用統計に対する各市場の反応は、メインテーマが「インフレ」から「景気」にシフトしていることを示唆した。今週の外為市場、特に米ドル相場は経済指標にらみの状況が続くだろう。ドル円の反発局面では、戻り売りを意識したい。今週、注目しておきたい上下のチャート水準は?

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記事のポイント

・今後は米国の物価指数よりも雇用関連の指標が重要視されよう
・今週のドル円は、一時的な反発相場を想定しておきたい
・しかしドル円の反発局面では、戻り売りを常に意識しておきたい


米雇用統計に対する反応が示唆すること

米労働省が9月6日に発表した8月の雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は前月比14.2万人増で予想と市場予想の16.0万人前後を下回った。その一方で失業率は4.2%へ低下し、平均時給も前月比と前年同月比でともに上昇した。

総合的に見れば8月の雇用統計では、米連邦準備制度理事会(FRB)が警戒するアメリカ労働市場の急速な冷え込みは示されず、緩やかな軟化の傾向にあることが確認された。

米国雇用統計 各項目の動向:2023年8月以降

米国雇用統計 各項目の動向:2023年8月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

注目すべきは、8月の内容に対する各市場の反応である。

6日の主要な米株価指数は軒並み下落した。特にナスダック100(NDX)は、主力の半導体株とハイテク株が軒並み売られたことで約2.7%下落した。

一方、短期金融市場では、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5ポイント利下げの確率が60%台まで上昇している。大幅利下げ観測の高まりを受け、米債市場では金融政策の方向性を織り込んで動く2年債利回りが一時3.59%まで低下する局面が見られた。外為市場では、ドル円(USD/JPY)が安値141.77まで下落する局面が見られた。

上で述べた各市場の反応、特に米国株のヒステリックな反応は、アメリカの労働市場がさらに冷え込む可能性が高いこと、そしてその影響が景気の減速または後退というかたちで波及する可能性があることを強く意識していることを示唆している。

注目の米国経済指標

8月の消費者物価指数(CPI)

今週から米国では連邦準備制度理事会(FRB)の高官らが金融政策について外部に発言することを控えるブラックアウト期間に入っている。ゆえに今週の外為市場、特に米ドル相場は引き続き経済指標が材料視されよう。

11日に8月の消費者物価指数(CPI)が発表される。インフレの抑制傾向が維持される見通しにある。

物価指数は引き続き米金利の変動要因となろう。ゆえに、米ドル相場もCPI後に上下に振れる可能性がある。しかし、パウエルFRBが9月のFOMC以降、緩和サイクルへ入ることはすでに織り込まれている。ゆえに、今後発表される物価指数でインフレの鈍化が示されても、米金利の低下と米ドル安への影響は限定的と予想する。

米国 消費者物価指数(CPI)の動向:2023年7月以降

米国 消費者物価指数(CPI)の動向:2023年7月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

むしろ今後の物価指数は、米金利の反発と米ドルの買戻し要因として意識したい。

8月CPIで予想外にインフレ圧力の粘着性が示される場合は、米債ロングの調整と米ドルを買い戻す絶好の材料と見なされるだろう。

米ドル相場の方向性を示すドル指数(DXY)は103.50レベルと102.00レベルがレジスタンスのラインへ転換し下落幅が拡大。そして年初来安値を更新し、節目の100ポイントが視野に入る。

短期間で下落幅が拡大するなか、日足のRSIとMACDはゴールデンクロスへ転じている。この状況で8月CPIが予想外に上振れする場合は、米ドルの買い戻しに弾みがつくだろう。21日線から短期の上値抵抗線(レジスタンスライン)までの反発相場を想定しておきたい。

ドル指数:日足 今年4月以降

ドル指数:日足 今年4月以降

出所:TradingView

より注目すべきは新規失業保険申請件数

しかし、外為市場の参加が今後重視するのは、雇用関連の経済指標となろう。アメリカの債券市場と株式市場のメインテーマが「インフレ」から「景気」へシフトしているからだ。特に、8月の米雇用統計に対する米国株のヒステリックな下落は、労働市場の動向に神経質になっていることを示唆している。

景気がメインテーマである以上、労働市場の動向は重要である。ゆえに、週間ベースで発表される新規失業保険申請件数は各市場の参加者が重要な指標として注目するだろう。

直近の新規失業保険申請件数は減少の傾向にある。トレンドを示す4週移動平均も低下の基調へ転じている。失業保険継続受給者数も同じ状況にある。労働市場の堅調さが示される場合は、米金利の反発と米ドルの買戻し要因となろう。

一方、8月の雇用統計に続き労働市場の軟化を示唆する内容となれば、米金利の低下と米ドル安の要因となろう。

米国 新規失業保険申請件数の動向:2023年9月以降

米国 新規失業保険申請件数の動向:2023年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

ドル円、今週の見通しチャート分析

今週は調整の反発相場を意識

ドル円(USD/JPY)は6日、米雇用統計の発表後に再び141円台へ下落する局面が見られた(安値141.77レベル)。今週のドル円も、引き続き米経済指標にらみの展開となろう。特に、上で取り上げた米国の経済指標で上下に振れる展開が予想される。

通貨オプション市場のリスクリバーサルは、1週間と1ヶ月でともにドル・プットへ傾いてはいるが、直近は横ばい推移となっている。一方、予想変動率は低下している。

ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 今年5月以降

ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 今年5月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

一方、4時間足のRSIはゴールデンクロスへ転じている。MACDも同じ状況へ転じつつある。通貨オプション市場の動きも合わせて考えるならば、市場参加者はドル円の下落トレンドを意識しながらも、その勢いが一時的に後退する可能性を意識していることがうかがえる。

このタイミングで8月CPIや新規失業保険申請件数が米ドル買いの要因となれば、今週のドル円は反発相場となろう。目先の焦点は144.00レベルの攻防となろう(下の4時間足チャート、赤ラインを参照)。

ドル円:4時間足 8月13日以降

ドル円:4時間足 8月13日以降

出所:TradingView

トレンドの軸は「米ドル安・円高」

しかし、ドル円(USD/JPY)のトレンドに大きな影響を与える日米の利回り格差は縮小傾向を維持している。パウエルFRBが9月以降緩和サイクルへ転じる可能性が高いこと、そして現時点では、9月のFOMCで0.5ポイント利下げの可能性が再び浮上していることも考えるならば、日米の利回り格差は縮小トレンドを維持することが予想される。

ゆえに、ドル円のトレンドの軸は「米ドル安・円高」にあると考えられる。このため、今週の米経済指標でドル円が反発しても、上で述べた144.00レベルや下で述べるテクニカルラインで反落する展開を想定しておきたい。

日米利回り格差の動向:年初来

日米利回り格差の動向:年初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成

上値のテクニカルライン

今週、ドル円(USD/JPY)が144円台へ反発する場合は、10日線(9日現在144.40前後)と21日線(9日現在145.40前後)のトライおよび上方ブレイクが焦点となろう。

前者の10日線は今夏以降、レジスタンスのラインとしてもサポートのラインとしても意識される局面が散見された。上の4時間足チャートにプロットしたフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準145.12レベルの突破は、後者び21日線をトライするシグナルと想定しておきたい。

今週、ドル円が21日線まで反発する場合は、9月6日の終値142.30レベル(ブルームバーグの為替データ)から2%超上昇することになる。今年に入り、週間でドル円が2%超上昇したのは1月の第1週目と3週目、そして4月の第4週目の3回しかない(ブルームバーグの為替データ)。

ゆえに、今週の米経済指標がドル円の反発要因となっても、21日線までの上昇が限界と想定しておきたい。

ドル円:日足 今年7月以降

ドル円:日足 今年7月以降

出所:TradingView


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