リスク回避の米ドル買いも意識する必要あり / 今日のドル円の見通しについて
インフレの鈍化を示す物価指標が続き米金利は低下基調へ転じている。しかし米ドル相場は、リスク回避相場にサポートされる展開も想定しておく必要がある。今日のドル円の見通しは?上下のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。
サマリー
・4月の米国生産者物価指数(PPI)もインフレ鈍化の傾向を示唆
・リスク回避の米ドル買いでドルインデックスは21日MAを突破する展開に
・ドル円は50日MAがサポートラインとして意識される状況が続く
・ドル円の上昇局面では引き続き10日MAの攻防が焦点に
米国のインフレは鈍化の傾向
この日発表された4月の米国生産者物価指数(PPI)は前年比で2.3%と、前月の2.7%から低下した。食品とエネルギーを除くコアPPIも同比で3.2%と、前月の3.4%から低下した。昨年4月以降、PPIではインフレ鈍化の傾向が続いている。
一方、消費者物価指数は昨年7月以降、低下基調が鮮明となっている。直近のコア指数の低下幅は限定的だが、4月は5.5%と前月の5.6%から低下した。重要な物価指標がいずれもインフレ鈍化の傾向を示していることで、米債市場では再び利回りに低下の圧力高まっている。
米国のインフレ動向
リスク回避の米ドル買い
11日の外為市場は米ドル買い優勢の展開となった。米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)は21日MAを大陽線で上方ブレイクし、5月2日の高値102.40レベルを視野に入れる展開となっている(下の日足チャートを参照)。
11日の米ドル相場のパフォーマンスを確認すると、リスク資産価格の動向の影響を受けやすい通貨で米ドル買いが進行していることが分かる。この状況は、昨日の米ドル買いの要因が、米株安や資源価格の下落にあることを示唆している。
米ドル相場の動向:5月11日
米国のインフレは鈍化の傾向にあり、短期金融市場では連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利下げに踏み切ることを織り込む状況が続いている(早ければ9月会合での利下げを織り込む動きが見られる)。
金融システム不安の発生により景気の先行きリスクが意識されている状況も考えるならば、米金利が反発してもその幅は限られる展開が予想される。
米金利の上昇幅が限られる状況や低下基調を維持する場合は、基本的に米ドル相場の重石となろう。だが、米金利が低下してもリスク回避相場が発生する場合は、米ドル買いの圧力が高まる展開を想定しておきたい。
ドルインデックスのチャートポイント
その米ドル買いの強さを示す指標として、ドルインデックス(DXY)の動向を常に注視しておきたい。
下で述べる今日の経済指標(5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値)やFRB要人の言動が米ドル買いの要因となり、ドルインデックスが5月2日の高値102.40レベルを突破する場合は、50日MA(102.50レベル)のトライが焦点となろう。そしてこれらの動きは、投資家のリスクセンチメントが悪化しているシグナルになり得る。
一方、米ドル安の局面では、21日MA(101.67)がレジスタンスからサポートへ転換するかどうか?この点を見極めたい。ドルインデックスは101.00レベルでサポートされ、ジリジリと水準が切り上がっている。このタイミングで21日の“サポート転換”が確認される場合は、テクニカルの面で米ドル相場の反発地合いが続く可能性が高まろう。
ドルインデックスのチャート
ドル円の見通しとテクニカル分析
下落幅は限定的か
ドル円(USDJPY)は現在、134円台~135円台で売り買いが交錯している。10日MA(135.11レベル)で反発が何度も止められているが、リスクリバーサルの動向を確認すると、1ヶ月と3ヶ月のそれらはともにドルプットへ傾くトレンドが後退気味である。
また、予想変動率(1ヶ月, 3ヶ月)は低下基調にある。これらの動向を考えるならば、ドル円が下落してもその幅は限定的となることが予想される。
ドル円のリスクリバーサルと予想変動率
引き続き2つの移動平均線の攻防に注目
昨日のドル円(USDJPY)は、IG為替レポートで取り上げてきた50日MA(133.69レベル)でサポートされた。MACDやモメンタムは反発地合いの勢いが後退していることを示唆しているが、日足ローソク足の実体ベースで50日MAを完全に下方ブレイクしない限り、10日MA(135.11レベル)をトライする状況が続く展開を想定しておきたい。
ドル円のチャート
今日は5月のミシガン大学消費者信頼感指数・速報値が発表される。市場予想は63.0と、前月の63.5から小幅に低下する見通しとなっている。4月のインフレ率(CPI / PPI)の内容に米金利が反応した状況を考えるならば、ミシガン大学1年先期待インフレ率も材料視される可能性がある。こちらの市場予想は4.4%と、前月の4.6%から低下する見通しとなっている。
これらの指標が予想以下となる場合は、米金利の低下要因となろう。米金利の低下は米ドル安の要因である。さえない経済指標で米金利の低下と米国株の下落が同時に発生する場合は、ドル円の下落幅が拡大しやすい。ゆえに、このケースでのドル円は、50日MAのトライおよび下方ブレイクを警戒しておきたい。
日足ローソク足の実体ベースでドル円が50日MAを下抜ける場合は、この移動平均線がレジスタンスラインへ転換するかどうか?を確認したい。この状況が発生する場合は来週以降、ドル円のさらなる下値トライの可能性が高まるだろう。
ミシガン大学消費者信頼感指数で米ドルの買い戻し圧力が高まる場合は、ドル円の反発と10日MAのトライを想定しておきたい。
ドル円の134.60レベルの上方ブレイクは、昨日の欧州時間の戻り高値134.85レベルをトライするシグナルと想定したい。ドル円が134.85レベルをも突破する場合は、10日MAをトライするシグナルと想定しておきたい。
ドル円のチャート
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