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進行する円安/ドル円の展望とチャートポイント

国内外の金融政策スタンスの差と日米の株高を受け、外為市場では円安が進行している。今週の注目材料は?ドル円の展望と新たな上値のチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

※今週のユーロ円の展望についてはこちらのレポートをご覧ください


サマリー

・国内外の金融政策スタンスの差と日米株高を受け円安が進行中
・今週の注目材料は中国人民銀行の利下げの有無とパウエル証言
・ドル円は142.50レベルのトライおよびブレイクアウトが焦点に


国内外の金融政策スタンスの差と円安の進行

中銀イベントウィークを経て円安がさらに進行

先週は、日米欧の中央銀行が政策会合を開催する「中銀イベントウィーク」となった。

これら中銀の動向が反映された先週の円相場のパフォーマンスを確認すると、主要な通貨全てで円安が進行したことが分かる。

特にドル円(USDJPY)とユーロ円(EURJPY)は先週、重要なテクニカルポイントを突破した。これらの状況を考えるならば円安進行の要因のひとつは、日銀と海外中銀の政策スタンスの差にあると考えられる。

円相場のパフォーマンス:6月12日~16日

円相場のパフォーマンス:6月12日~16日 ブルームバーグの為替データをもとに作成 / 基準日6月9日

中国人民銀行の動向と日米の株高

現在は、日銀と海外中銀(FRBやECB)の政策スタンスの差に加えて、日米の株高トレンドも円安を促す状況にある。その株高を促す要因として今週は、中国人民銀行(中央銀行、PBOC)の動向に注目したい。

人民銀行は先週13日に7日物のリバースレポ金利を従来の2.0%から1.9%へ引き下げた。15日には中期貸出制度(MLF)の1年物金利も10カ月ぶりに引き下げた。これらの動向を受け、20日に公開予定の主要政策金利の1年物・最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR、3.65%)や住宅ローンなど中長期融資の基準となる5年物(4.30%)をそれぞれ引き下げる可能性がある。

人民銀行が利下げを行う場合、政策の効力が未知数ではあるが景気を下支えする姿勢が評価され、日米の株高をさらに促す要因になり得る。

人民銀行の利下げにより日米の株高がさらに進行すれば、外為市場では円安の圧力がさらに高まることが予想される。

中国 ローン・プライム・レートのチャート

中国 ローン・プライム・レートのチャート ブルームバーグのデータをもとに作成 / 月次:2020年以降

ドル円の展望とチャートポイント

政策スタンスの差はドル円のサポート要因に

先週の13-14日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で連邦準備理事会(FRB)は利上げを見送った。

しかし、パウエルFRB議長はインフレ抑制重視の姿勢を崩さず、状況次第で利上げの再開に含みを持たせた。

また、FOMCメンバーによる23年末の予想中央値は3月時点の5.1%から5.6%へ上方修正され、年内あと2回の利上げの可能性が示唆された。

短期金融市場の織り込み度合いを確認すると、予想ターミナルレートは5.3%前後で推移しており、FRBが利上げを再開しても、次回7月会合での1回のみとなることを織り込む状況にある(7月会合での利上げ確率はレポート執筆時点で70%超)。

政策動向の見通しについて市場とパウエルFRBとの間には大きな差があるが、年内の利下げ観測は急速に後退し(パウエルFRB議長は年内の利下げを否定)、現状では来年1月の利下げを織り込む状況にある。

利上げの再開時期とその回数、そして利下げのタイミングについては、引き続きインフレと雇用関連の経済指標に左右されるだろう。

だが、6月FOMCでパウエルFRBが抱くインフレリスクへの警戒レベルが依然として高いことが示された点は留意しておくべきだろう。このスタンスの維持は、ドル円(USDJPY)のサポート要因となるからだ。

政策金利(FFレート)の予想推移

政策金利(FFレート)の予想推移 ブルームバーグのデータをもとに作成 / 6月19日 7時時点


日米の利回り格差とパウエルFRB議長の議会証言

パウエルFRBがインフレ抑制重視の姿勢を維持し、かつ利上げ再開の可能性を示唆する一方、先週16日の日銀金融政策決定会合で植田日銀は大方の予想どおり現行の金融緩和政策を維持した。

日米中銀の政策スタンスの差はドル円(USDJPY)の上昇要因となり、先週16日の市場では高値141.91レベルと、昨年11月22日以来の水準まで上昇する局面が見られた。そして本日早朝に141.91レベルを突破する局面が見られた。

ドル円と日米の利回り格差の関係を確認すると、現在のドル円は、緩やかな拡大傾向を維持する2年債および5年債の利回り格差の動きに影響を受けている。

今週は、パウエルFRB議長が半期に一度の議会証言(21日に下院金融委員会、22日に上院銀行委員会での証言)に臨む。パウエルFRB議長があらためてインフレリスクの根強さとそれを抑制する姿勢を示す場合は追加の利上げが意識されることで、日米の2年債と5年債の利回り格差は拡大の傾向を維持することが予想される。

日米の利回り格差がこの傾向を維持する限り、ドル円は調整の反落を挟みながらも、下で述べるレジスタンスの水準を視野に上昇トレンドを維持することが予想される。

ドル円と日米の利回り格差のチャート

ドル円と日米の利回り格差のチャート ブルームバーグのデータをもとに作成 / 日足:年初来


ドル円、次の焦点は142.50レベルのトライおよびブレイクアウト

昨年10月以降のドル円(USDJPY)のトレンドを確認すると、目先の焦点は、昨年11月21日から22日にかけて相場の上昇を止めた142.25レベルの攻防となろう。ドル円の142.00ブレイクは、142.25レベルをトライするシグナルと想定しておきたい。

ドル円が142.25レベルをも上方ブレイクする場合は、フィボナッチ・リトレースメント(22年の最高値151.94レベル-23年1月の安値127.22レベルのリトレースメント)で重要な水準である61.8%の142.50レベルをトライする展開を想定しておきたい。

ドル円のチャート

ドル円のチャート Tradingviewの日足:22年10月以降


反落局面での焦点は140円台の維持

一方、ドル円(USDJPY)が反落する場合は、140円台の維持が焦点となろう。141円台へ上昇する過程でサポートへの転換が確認された141.40レベルや140.80レベルの維持に成功するかどうか?この点を確認したい。

ドル円が後者の水準(140.80レベル)を下方ブレイクする場合は、10日MA(今日現在140.17レベル)を視野に下落幅の拡大を想定しておきたい。この移動平均線を下方ブレイクする場合は、140.00ブレイクも警戒しておきたい。

なお、ドル円が142.50レベルをも難なくブレイクアウトする場合は、日本サイドからの円安けん制が飛んでくる可能性がある。この場合は、瞬間的に円高へ振れる展開-例えば140円台を下方ブレイクする展開を想定しておきたい。

ドル円のチャート

ドル円のチャート Tradingviewの15分足:6月15日の欧州時間以降

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