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進行する米ドル高 / 今週の注目材料とドル円の見通しについて

外為市場では米金利の上昇基調に連動し、米ドル高が進行している。米ドル高トレンドにサポートされ、ドル円は時145円台の攻防が焦点となっている。今週の注目材料は?注目しておきたいチャートポイントは?詳細はIG為替レポートをご覧ください。

出所:ブルームバーグ 出所:ブルームバーグ

サマリー

・米金利の上昇基調を受け外為市場では米ドル高が進行している
・ドルインデックスの上昇は、現在の米ドル買いの根強さを示唆している
・今週の注目材料は米小売売上高、FOMC議事要旨そして国内の消費者物価指数
・ドル円、今週の焦点と注目しておきたい上下のチャートポイントについて


進行する米ドル高

外為市場では米ドル高が進行している。

8月以降の米ドル相場のパフォーマンスを確認すると、主要通貨に対して総じて米ドル買い優勢の展開となっていることが分かる。

米ドル相場の動向:月初来

米ドル相場の動向:月初来 ブルームバーグの為替データをもとに作成 / 基準日:23年7月31日 / 8月11日までの動向

米ドル高トレンドの土台を支えているのが、米金利の上昇である。

この点を米長期金利と米ドル相場のトレンドを示すドルインデックス(DXY)のチャートで確認すると、7月下旬から米金利が上昇基調へ転じて以降、ドルインデックスも同様の展開となっていることが分かる(下チャートのグレーゾーンを参照)。

そして先週後半にドルインデックスは、短期レジスタンスラインを突破してきた。この状況は、米ドル買いの根強さとその圧力が高まっていることを示唆している。

米金利の上昇基調が続く場合、すでに短期レジスタンスラインの突破に成功しているドルインデックスの次の焦点は、サポートからレジスタンスへの転換が確認された経緯のある103.50レベルのトライとなろう。

ドルインデックスが上昇トレンドを維持する場合、ドル円(USD/JPY)は、下で述べる新たなレジスタンスの水準を視野に上昇幅の拡大が予想される。

米長期金利とドルインデックスのチャート:日足 23年5月以降

米長期金利とドルインデックスのチャート:日足 23年5月以降 ブルームバーグのデータをもとに作成


米金利の上昇の一因となっているのが、米債需要への思惑である。先週は、3年債と10年債の入札で安定的な需要が見られた。一方、30年債の入札は低調な内容となった。

米財務省は24年に入っても発行規模の拡大が続く可能性を示唆している。ゆえに、今後の入札で安定的な需要が見られない場合は、米金利の上昇要因になり得る。

今のところ、現在の米長期金利の上昇は米ドル買いの要因となっている。しかし、財政リスクが意識された金利の上昇(悪い金利の上昇)は、米ドル安の要因にもなり得ることを意識しておきたい。

また、長期金利だけでなく2年債の利回りもジワリと反発の基調へ転じている。この動きは、米利上げサイクル終了の観測が後退しつつあることや利下げの時期が後ずれする可能性を市場参加者が意識し始めていることを示唆している。

米金利のチャート:日足 23年5月以降

米金利のチャート:日足 23年5月以降 ブルームバーグのデータをもとに作成

今週の注目材料

7月の米小売売上とFOMC議事要旨

今週も経済指標の内容が米債市場で材料視される展開が予想される。

なかでも注目されるのが、15日発表の7月小売売上高である。現時点での市場予想は、6月の0.2%増から0.4%増となる見通しとなっている(下チャートを参照)。予想以上の内容が確認される場合は米債市場で景気(個人消費)の底堅さが意識され、利回りの上昇要因となろう。

また、16日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の内容にも注目したい。米金利や米ドル相場の変動要因となる可能性は低い。しかし、将来のインフレと景気の動向、そして金融政策の方向性についての詳細な議論の内容は、今後の政策動向を考える上で重要な材料になり得る。

アメリカ小売売上高の推移

アメリカ小売売上高の推移 米商務省のデータをもとに作成 / 月次:22年7月以降


7月の国内消費者物価指数(CPI)

国内の材料では、18日に発表される7月の全国消費者物価指数(CPI)が、円相場の変動要因となる可能性がある。

現時点では、総合指数が前年比で3.3%と前月から横ばい見通しとなる一方、生鮮食品を除くコア指数は同比で3.1%と、前月の3.3%から低下する予想となっている。生鮮食品とエネルギーを除いたコアコア指数は前年比で4.3%と、前月の4.2%から若干ながら上昇する見通しである。

米金利が上昇基調にあるタイミングで、7月CPIが総じて予想どおり、またはそれ以下の内容が確認される場合、円安がドル円(USD/JPY)の上昇要因となることが予想される。また、ユーロ円(EURJPY)やポンド円(GBP/JPY)などの主要なクロス円の上昇要因にもなり得る。

一方、7月CPIがコア指数も含めて予想外に上昇する場合は、ドル円および円安が進行したクロス円の反落要因となることが予想される。

日本の消費者物価指数の推移

日本の消費者物価指数の推移 総務省のデータをもとに作成 / 月次:22年7月以降

ドル円、今週の焦点とチャートポイント

目先の焦点は145.07の攻防

ドル円(USD/JPY)は、IG為替レポートで取り上げてきた短期レジスタンスラインと144.00レベルを一気に突破してきた。そして、21日MA(今日現在141.83レベル)と50日MA(今日現在141.75レベル)では、ゴールデンクロスが示現している。

上で述べた米金利の上昇基調と米ドル高の進行も考えるならば、どの水準まで上値をトライするのか?今週もこの点がドル円の焦点となろう。

目先、注目しておきたいチャートポイントは、6月の戻り高値145.07レベルの攻防である。先週11日は145.00レベルまで上昇した。週明けの外為市場でも145円台を目指す動きが見られる。

今日は日米の重要経済指標の発表や要人の発言はないが、先週からの流れで145.07レベルをトライしブレイクアウトする展開を想定する局面にある。

ドル円のチャート:日足 23年3月

ドル円のチャート:日足 23年3月 TradingView提供のチャートで作成


145.07レベルのブレイクアウトと次の焦点

ドル円(USD/JPY)が145.07レベルを完全にブレイクアウトする場合は、新たなレジスタンスの水準を探ることが焦点として浮上しよう。

ドル円の新たなレジスタンスの水準をフィボナッチ・エクステンションで探ると、76.4%の水準145.92レベルが浮上する。146.00レベルのすぐ下の水準であることを考えるならば、146円台への上昇を次の焦点と想定しておきたい(下の日足チャートを参照)。

ドル円が146円台の攻防へシフト場合は、V計算値の水準146.26レベルのトライが最初の焦点となろう(下の日足チャートを参照)。

なお、フィボナッチ・エクステンション61.8%の水準は145.08レベルにあたる。テクニカルの面でも145.07レベル(6月30日高値)の攻防は重要な焦点と言えるだろう。

ドル円のチャート:日足 23年6月下旬以降

ドル円のチャート:日足 23年6月下旬 TradingView提供のチャートで作成


反落局面での焦点

一方、ドル円(USD/JPY)の反落局面では、上で述べた144.00レベルが再びサポートポイントとして意識されるかどうか?この点を確認したい。

144.00レベルは、6月下旬から7月上旬にかけて相場をサポートした経緯がある。この状況が再び確認される場合は市場参加者に地合いの強さを印象付けよう。ゆえに、ドル円は上値をトライする展開が続くと予想する。

一方、ドル円が144.00レベルをあっさりと下方ブレイクする場合は、21日MAと50日MAを視野に調整の反落相場が進行する展開を想定しておきたい。

これら移動平均線を目指すシグナルとして、8月9日の安値143.00レベルおよび同月8日の安値142.40レベルの攻防に注目したい。

ドル円が、これらサポートポイントを難なく下方ブレイクする場合は、上述した2本の移動平均線(21日MAと50日MA)をトライする展開が予想される。

なお、ドル円の反落要因として上で述べたアメリカの経済指標の他、日本当局による口先も含めた介入の有無にも警戒しておきたい。


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