気候変動と大都市の洪水リスク
米国ウィークリー 2019年10月16日号
- 台風19号による豪雨が日本列島に甚大な被害をもたらしたのは、世界規模の気候変動リスクにおける一例に過ぎないのだろうか?
- 10/7-14の米国株式市場は、米国による中国製品(2,500億ドル)への制裁関税引上げ予定日の10/15を控え、10/10-11の米中閣僚級協議に向けて合意できるかどうかに焦点が集まった。10/7-8は、中国が少数民族を弾圧していることを理由に、米政権が監視カメラ大手企業などに対する新たな禁輸措置、および中国政府高官に対するビザ発給を制限する方針を発表したことから、ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)で10/8に26,139ドルまで下落した。10/9以降は、中国が米国産農産物の購入を拡大するのと引き換えに制裁関税の一部を撤回する「部分合意」への期待が高まり、10/11には農産物や為替など特定分野での合意、および10/15予定だった制裁関税引上げの先送りが米政権より表明されたことから、NYダウが10/11に27,013ドルまで上昇した。
- 米中協議の材料に株価が揺れ動く中、10/12にFRBが短期国債を月600億ドルのペースで少なくとも2020/4-6月期まで続ける方針を表明した。買入れ対象は償還期間1年以内の国債に限定するものの、2014/10に量的金融緩和を終了して以来5年ぶりに保有資産拡大に踏み切る大きな政策転換と言える。長短金利差の確保は、特に金融株にとっては利鞘の点で恩恵となることが期待される。また、ドル円相場においてはドル安圧力となりやすいだろう。
- 9/30に気候変動が世界の都市に与える影響に関するゴールドマン・サックスのレポートが公表され、話題を呼んでいる。同レポートによれば、気温の上昇により、病気のパターンの変化、より激しく長期にわたる熱波、より破壊的な気象現象、飲用・農業用の水へのアクセスが困難になることなどがもたらされるだけでなく、大都市の洪水リスクが高まり、特にニューヨーク、東京、ナイジェリアのラゴスではその一部が海に沈む危険性もあるとの警告が発せられている。台風19号がもたらした洪水被害は世界のどこでも発生し得る、世界共通の現実的なリスクとして捉えるべきものかも知れない。世界持続的投資連合(GSIA)によれば、2018年のESG(環境・社会・企業統治)投資額は世界で約31兆ドルと対2016年比34%増と拡大している。気候変動リスクを低減するための投資は、地球上に住む人間の生命と生活の安全への投資として優先順位が今後一層高まる可能性があるものとして認識する必要があるのかも知れない。(笹木)
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(10/14現在)
■主な企業決算の予定
●10月16日(水):バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ、バンク・オブ・アメリカ、アボットラボラトリーズ、USバンコープ、プログレッシブ・コープ、コメリカ、ネットフリックス、CSX、IBM、ユナイテッド・レンタルズ、クラウン・キャッスル・インターナショナル、
●10月17日(木):ユニオン・パシフィック、キーコープ、M&Tバンク、ハネウェルインターナショナル、サントラスト・バンクス、BB&T、スナップオン、フィリップ・モリス・インターナショナル、ドーバー、モルガン・スタンレー、ピープルズ・ユナイテッド・ファイナンシャル、インテュイティブサージカル、Eトレード・ファイナンシャル、TSMC
●10月18日(金):、シュルンベルジェ、コカ・コーラ、カンザスシティー・サザン、シチズンズ・フィナンシャル・グループ、シンクロニー・ファイナンシャル、ステート・ストリート、アメリカン・エキスプレス
●10月21日(月):ハリバートン、ケイデンス・デザイン・システムズ、ZBナショナル・アソシエーション
●10月22日(火):センティーン、トラベラーズ、バイオジェン、マクドナルド、ハーレーダビッドソン、インターパブリック・グループ、パッカー、クエスト・ダイアグノスティクス、ネクステラ・エナジー、キンバリー・クラーク、ハズブロ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、パルトグループ、ニューコア、セラニーズ、テキサス・インスツルメンツ、ロッキード・マーチン、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、チポトレ・メキシカン・グリル、ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズ、ユナイテッド・テクノロジーズ、エクイティ・レジデンシャル
■主要イベントの予定
●10月16日(水)
・シカゴ連銀総裁が講演、
・地区連銀経済報告(ベージュブック)
・英中銀総裁が国際通貨基金(IMF)のイベントに出席、韓国中銀が政策金利発表
・香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が施政方針演説
・小売売上高(9月)、企業在庫(8月)、NAHB住宅市場指数(10月)、対米証券投資(8月)
・欧州新車販売台数(9月)、ユーロ圏CPI(9月)、英CPI(9月)
●10月17日(木)
・シカゴ連銀総裁、ニューヨーク連銀総裁が講演
・EU首脳会議(ブリュッセル、18日まで)
・住宅着工件数(9月)、新規失業保険申請件数(12日終了週)、鉱工業生産(9月)
・豪雇用統計(9月)
●10月18日(金)
・IMF・世銀の年次総会(20日まで、ワシントン)
・米、対EU報復関税を発動
・景気先行指標総合指数(9月)
・中国GDP(3Q)、中国固定資産投資・工業生産・小売売上高(9月)
●10月19日(土)
・英離脱延期法が定めるEUとの離脱案合意期限
●10月22日(火)
・リッチモンド連銀製造業指数(10月)
・中古住宅販売件数(9月)
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