マイナス金利解除は関心外? 円安急進 日本の「景気後退」も要因に
ドル円相場は1ドル=150円台で推移。日本の金利水準の大幅上昇が見込めない中、為替介入への警戒感が高まっている。
FX市場で円安圧力が強まっている。ニューヨーク市場のドル円相場は14日、2営業日連続の150円台で取引を終え、1か月半で10円以上も円安ドル高が急進した。150円台突入はアメリカの物価上昇の根強さが米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測を後退させたことが要因。さらに日本銀行がマイナス金利政策を解除した場合でもFX市場への影響は小さいとの見方が浸透したことも円安材料になっている。15日に発表された日本の2023年10-12月期GDP速報値は2四半期連続のマイナス成長というやはり円安要因といえる結果で、2023年の円安局面と同様に日本政府の為替介入の可能性を見据えながらの値動きが続きそうだ。
ドル円相場はアメリカCPI発表を受けて150円台で推移
14日のニューヨーク市場のドル円相場(USD/JPY)の終値は1ドル=150.55円。ドル円相場は13日も150.79円で取引を終えており、2023年11月16日(150.71円)以来の円安ドル高水準になっている。ドル円相場は1月2日には140.80円をつけていただけに、急激なペースで円安が進んでいる。
ドル円相場が13日に150円台に入ったきっかけは、この日発表されたアメリカの1月の消費者物価指数(CPI)が予想を上回る強さとなり、金融市場が見込むFRBの利下げ開始時期が後ずれしたことだ。CMEグループのデータによると、5月の連邦公開市場委員会(FOMC)後に政策金利が現状よりも低くなっていることについて、投資家の動向から算出される確率は日本時間の15日午前10時段階で約40%。1月CPI発表前の80%を超える水準から大きく後退した。一方、6月FOMCまでの利下げ確率は80%が見込まれている。
日本の2023年10-12月期GDPは2四半期連続のマイナス成長
また、このところの円安には日本発の要因もある。日銀の内田真一副総裁が講演で「マイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくい」と述べた8日は、ドル円相場は1.13円も円安方向に振れた。日銀がマイナス金利政策を止め、短期金利が現状のマイナス0.1%から上がったとしても、さほど大きな動きにはならないとの見方が浸透し、円が売られやすくなっている。
さらに今後は日本の経済成長のつまづきが円安につながる側面も注目されそうだ。15日に発表された10-12月期GDP速報値は実質成長率が前期比年率マイナス0.4%となり、7-9月期のマイナス3.3%に続くマイナス成長。個人消費が0.9%減となり、3四半期連続で落ち込む冴えない結果だった。2四半期連続のマイナス成長は景気後退入りの基準とされ、やはり円安要因だといえる。10-12月期の成長率は、ロイターがまとめた事前予想ではプラス1.4%が見込まれていた。
日本政府の為替介入の可能性も
こうした中、ドル円相場の150円台という水準は日本政府による為替介入を予感させている。財務省の神田真人財務官は14日、記者団に対して「高い緊張感をもって市場を注視する」と述べ、円買い介入については「必要があれば適切に対応する」と述べた。
2023年11月にドル円相場が150円台をつけた際の円安は、その後、日本政府が為替介入に踏み切ることなく沈静化していった。アメリカの10月CPIで物価上昇率が大きく低下したことや、日銀の植田和男総裁の国会での「チャレンジング発言」がマイナス金利解除の期待を高めたことなどが要因だ。ただ、足元では日銀自身の情報発信の結果、金融政策見直しが日本の金利水準を大きく引き上げるとの見方は後退しており、今後のドル円相場はアメリカの物価動向に左右される度合いが大きくなりそうだ。
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