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【ドル円の週間見通し】米経済指標次第では円高再燃も、ISM指数と雇用統計に注目、 FRB高官の経済見通しも焦点に

外為市場では円高が一服し、ドル円が150円台へ反発している。しかし、米経済指標とFRB高官の発言次第では円高が再燃することが予想される。ドル円の週間見通しについて。

Source:Bloomberg Source:Bloomberg

記事の概要

円高が一服しドル円は150円台へ反発している。しかし、米債市場では利回りの低下圧力が強まっている。短期金融市場では、後退していた利下げの観測が再び高まっている。これらの動きは、米経済の先行き不安を意識した動きと考えることができる。
今週のドル円が反発地合いを維持できるのかどうか?は、米国の経済指標次第となろう。米連邦準備制度理事会(FRB)高官の経済見通しに関する発言も材料視される可能性がある。ドル円の週間予想レンジは148.60~153.30。

2月の外為市場は円高優勢、対米ドルで3%の上昇

2月の外為市場は円高優勢の1ヶ月となった。特に対米ドルでは3%高となった。主因は、日米利回り格差の縮小が進行したことだった。対米ドルの円高に追随し、2月のクロス円も円高優勢となった。特に新興国通貨とオセアニア通貨で円高が進行した。

2月後半に日米の株式市場が崩れたタイミングで円高が進行した状況は、リスク回避局面で日本円が選好されやすい状況にあることを示唆した。

円相場 2月の動向 / 騰落率

円相場 2月の動向 / 騰落率

ブルームバーグの為替データで筆者が作成 / 基準日:1月31日


米国の景気不安、経済指標次第では円高の再燃を警戒

2月の外為市場では円高が進行した。しかし、前月26日を境に円高の勢いが失速している。ドル円(USD/JPY)は2月の中旬以降、レジスタンスのラインとして意識されてきた10日線を上方ブレイクし、150円台へ反発した。しかし、今週も反発地合いを維持できるのかどうか?は、米経済指標次第となろう。そう考える理由は、米債市場と短期金融市場の動きにある。

28日の米債市場では、10年債利回り(長期金利)が一時4.1%台へ低下する局面が見られた。この日発表された1月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター、前年同月比)が、昨年12月から鈍化したことが一因となった(欧州の地政学リスクが意識されたとの見方もあった)。しかし、PCEデフレーターの発表前から長期金利の低下幅が拡大している状況は、市場参加者が米国経済の先行きについて警戒していることを示唆している。

米国の10年債利回り:日足 2024年12月以降

米国の10年債利回り:日足 2024年12月以降

出所:TradingView

一一方、短期金融市場では、後退していた利下げの観測が再び高まっている。現状では、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを織り込む状況にある。今年末のターミナルレート(政策金利の予想水準)は3.6%台まで低下している。これらの動きは、米連邦準備制度理事会(FRB)が景気対策として利下げに踏み切らざるを得ない状況に追い込まれる可能性を意識した動きと考えることができる。

2つの市場で米国の景気不安が意識されている状況を考えるならば、今週のドル相場は米経済指標に左右されるだろう。なかでも、以下で取り上げる2月のISM指数と雇用統計に注目したい。

米国 政策金利の予想推移

米国 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成/ OISに基づく予想推移 / 2月28日時点


米経済指標にらみの1週間、ISM指数と雇用統計に注目

ISM指数は1月から小幅縮小の見通し
今週3日に2月のISM製造業景気指数、5日にISM非製造業景気指数が発表される。ブルームバーグがまとめた市場予想では、いずれの指数も1月から小幅に縮小する見通しにある。

ISM指数は、昨年夏の株安と株価反発の要因となった経緯がある。上で述べたとおり、現在の米債市場と短期金融市場では、米国の景気不安を意識した動きが見られる。この状況でISM指数が予想よりも下振れる場合は、米金利のさらなる低下と今年前半の利下げ期待を高める要因となろう。外為市場では米ドル安優勢の展開が予想される。

米国 ISM指数の動向:24年1月~25年1月

米国ISM指数の動向:24年1月~25年1月

ブルームバーグのデータで筆者が作成

2月の雇用統計、労働市場の堅調さを示せるか
今週7日に2月の雇用統計が発表される。ブルームバーグがまとめた市場予想では、非農業部門雇用者数変化(前月比)は16万人増、失業率は4.0%で1月から横ばいの見通しにある。平均時給は前月比が0.3%増へ鈍化する一方、トレンドを示す前年同月比は1月の4.1%増を維持する見通しにある。

米国経済は個人消費に支えられている。2月に発表された経済指標で、その個人消費に対する懸念が強まっている。個人消費の土台は、堅調な労働市場に支えられている。ゆえに雇用統計が労働市場の堅調さを示唆する場合は、景気不安が後退することで米ドル高の要因となろう。上述のISM指数も予想以上となれば、2月の米ドル安を調整する動き(米ドルの買い戻し)が予想される。

一方、雇用統計が労働市場の軟化を示唆する場合は、「個人消費の先行き懸念→景気不安」を想起させる要因となろう。ISM指数も予想以上に下振れる場合は、米ドル安の進行を想定したい。また、さえない米経済指標は株安の要因にもなり得る。リスク回避の円高を警戒したい。

米国の雇用統計 各項目の動向:24年1月~25年1月

米国雇用統計 各項目の動向:24年1月~25年1月

ブルームバーグのデータで筆者が作成 /赤の棒グラフとドット:2月の市場予想


8日からブラックアウト期間入り、FRB高官が考える経済の見通しは?

今週8日から、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官が金融政策に関する発言を自粛するブラックアウト期間に入る。ゆえに外為市場の参加者は今後の政策方針を見極めるため、米FRB高官の発言に注目するだろう。

今週は何人かのFRB高官が経済見通しの講演を行う。最も注目されるのが、パウエルFRB議長の発言となろう。パウエル氏は7日(日本時間8日の 午前2時30分)、2025年米国金融政策フォーラムで経済見通しについて講演する。直近の経済指標を踏まえ景気減速の可能性に言及する場合は、米金利の低下と米ドル安の要因になり得る。

パウエルFRB議長以外にも、セントルイス地区連銀のムサレム総裁とウォラー理事も経済見通しについて講演を行う。経済の先行きに警戒感を示す発言が続けば、やはり米金利の低下と米ドル安の要因になり得る。

米FRB高官による経済見通しの講演:日程と概要

ブルームバーグより筆者が作成


ドル円 今週の見通しとテクニカルライン

今週のレジスタンスライン、予想レンジの上限は153.30
通貨オプションでは、ドル円(USD/JPY)の1週間と1ヶ月のリスクリバーサルの低下(ドルプット)の傾向が一服している。一方、予想変動率は10%前後で推移し、昨夏のようなリスク回避局面や米大統領選挙の不透明感を意識した時のような変動の拡大は見られない。

一方、テクニカルの面では10日線を上方ブレイクしている。MACDはゼロラインを下回る状況にあるが、ゴールデンクロスへ転じるムードにある。また、モメンタムは反発しゼロラインを突破するムードにある(いずれも日足チャートの黒矢印を参照)。今週の米経済指標で景気不安が後退すれば、ドル円は以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。

ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 2024年7月以降

ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:日足 2024年7月以降

今週もドル円の反発地合いが続く場合は、21日線とトレンドチャネル上限の突破が焦点となろう。これらテクニカルラインをトライするサインとして、以下にまとめたフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。

・先月28日の上昇を止めた38.2%戻しの水準150.95の突破は、21日線をトライするシグナルと捉えたい。この移動平均線は半値戻しの水準151.68レベルと交錯している

・21日線の上方ブレイクは、61.8%戻しの水準152.42をトライするシグナルと捉えたい。今週4日に、トレンドチャネルの上限がこのテクニカルラインと交錯する

・トレンドチャネルの上限をも突破する場合は、153円のトライを意識したい。76.4%戻しの水準153.30レベルを今週の予想レンジの上限と想定したい

レジスタンスライン:日足
・153.33:フィボナッチ・リトレースメント76.4%、週間予想レンジの上限
・153.00:レジスタンスライン
・152.42:フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・151.68:21日線(2/28時点)、半値戻し
・150.95:フィボナッチ・リトレースメント38.2%

今週のサポートライン、予想レンジの下限は148.60
一方、今週の米経済指標で景気不安が強まる場合は、「米金利の低下→日米利回り格差の縮小→円高の再燃」によるドル円(USD/JPY)の反落を想定したい。さえない経済指標に加えて、経済見通しについて米FRB高官の厳しい見方も重なれば、ドル円は148円台へ下落する可能性があろう。

今週の予想レンジ下限は148.60レベル。148.80とともにサポートゾーンを形成する展開も想定したい。このゾーンをトライするシグナルとして、1時間足にプロットしたフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。

・最初の焦点は、先月28日にサポートラインとして意識された38.2%戻しの水準150.26となろう

・150.26を完全に下方ブレイクする場合は、半値戻し(150円)の維持が焦点となろう

・全戻しの水準149.09(149円)の下方ブレイクは、148.60-80のサポートゾーンをトライするシグナルと想定したい

サポートライン:1時間足
・150.26:フィボナッチ・リトレースメント38.2%
・150.04:半値戻し
・149.81:フィボナッチ・リトレースメント61.8%
・149.54:フィボナッチ・リトレースメント76.4%
・149.09:サポートライン、全戻し
・148.80:サポートライン
・148.60:週間の予想レンジ下限


ドル円のチャート

日足:2024年12月以降

日足:2024年12月以降

出所:TradingView

1時間足:2月25日以降

1時間足:2月25日以降

出所:TradingView


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