金価格が史上最高値目前 米雇用に不振の兆し ちらつくハードランディング
最近の米国の経済指標に雇用の弱さが出始めている。金価格は史上最高値目前で、投資家はハードランディング懸念を意識している。
米国経済の先行き不透明感が強まっている。5日に発表された民間調査会社による3月の雇用統計では、非農業部門の就業者数の増加幅が市場予想に達せず。前日に発表された求人関連の統計も弱い数字となった。米連邦制度理事会(FRB)が1年にわたって続けてきた利上げの効果が時間差で出始めた可能性があり、ハードランティングシナリオもちらつく状況だ。こうした中、金の先物価格は史上最高値に迫る水準で取引されており、改めて安定資産としての金に資金が流入しているもよう。今後の経済指標でも弱さが確認されれば、FRBが5月に利上げを打ち止めにする可能性が高まる。
ADP雇用統計は市場予想に達せず
民間調査会社ADPが5日に発表した3月の雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比14.5万人増だった。2月の26.1万人増(改定値)から大きく減少しているうえ、市場予想も下回った。ADP雇用統計は注目度が高い労働省発表の雇用統計の直前に発表されるのが通例で、やはり市場関係者の関心が高い。また、4日に労働省が発表した2月の雇用動態調査(JOLTS)でも非農業部門の求人件数が市場予想を下回る993.1万件まで減少しており、好調だった米国の雇用の変調を感じさせている。
さらに経済活動の面でも不安材料が増えてきた。米サプライマネジメント協会(ISM)が3日と5日に発表した3月の製造業と非製造業(サービス業)の景況感指数はいずれも市場予想を下回った。さらに5日に米抵当銀行協会(MBA)が発表した3月31日までの週の住宅ローン申請件数は、住宅ローン金利が4週連続で下がっているにも関わらず、5週間ぶりのマイナスとなった。
FRBの利上げは「やりすぎ」だったか?
雇用や経済活動の弱まりはFRBが2022年3月から続けてきた利上げが効果を発揮し始めたことを連想させる。FRBは先月22日にシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻による経済への悪影響が懸念される中でも0.25%の利上げを決め、物価上昇への警戒感をあらわにした。一方、政策金利はすでに4.75-5.00%にまで達しており、今後、景気を冷やす効果が時間差で生じてくるとみられている。仮にFRBが1年にわたって続けてきた利上げが「やりすぎ」だった場合、今後は米国経済の急減速で雇用や経済活動の悪化が深刻になるハードランディングシナリオが現実味を帯びる。
こうした中、投資家の不安が金の先物価格の動向に表れている。ニューヨーク商品取引所(COMEX)で取引が最も多い中心限月の先物価格は5日、1トロイオンス=2035.6ドルで取引を終えた。終値が2000ドルを超えるのは3日連続で、2022年3月8日につけた2043.3ドルや、史上最高値(2020年8月6日)の2069.4ドルが視野に入る水準となっている。金のスポット価格(チャート)も同様の値動きだ。
FRBは経済指標の動向に応じて利上げペースを見極める方針で、パウエル議長も3月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「今後のデータを慎重にチェックし、金融引き締めが経済活動や労働市場、物価上昇に及ぼす効果や予想される効果を注意深く検討する」ことを改めて強調している。6日に発表される失業保険申請件数や7日に労働省が発表する雇用統計の結果次第で、相場が大きく動くこともありそうだ。
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