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【ドル円の週間見通し】 米雇用統計の衝撃、米利下げペースの思惑とドル安シナリオの修正、ドル円は150円が再び視野に

9月のISM非製造業景気指数に続き、同月の雇用統計も市場の予想を上回った。アメリカ経済のソフトランディング期待が高まっている。米FRBの利下げペースに対する市場の思惑が揺れ、米債市場では利回りが急反発している。米ドル安シナリオの修正が進み、ドル円は節目の150円が再び視野に入る。今週の展望は?

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記事のポイント

・9月の雇用統計は、アメリカ労働市場の堅調さを示唆した
・強い経済指標が続き、米利下げペースの思惑が急速に修正されている
・米利下げペースの修正は、米ドル安シナリオの修正を促している
・ドル円、今週の見通しと注目のチャート水準について


理想的な内容だった9月の米雇用統計

米労働省が先週4日に発表した9月の雇用統計によれば、非農業部門の就業者数は前月から25万4000人増と、ブルームバーグがまとめた市場予想15万人増を上回った。予想以上の雇用増加を受け、直近3ヶ月平均の非農業部門雇用者数は18.6万と、今年5月以来の水準まで拡大した。

失業率は4.2%から4.1%へ低下した。一方、平均時給は前月比で0.4%増と賃金インフレが抑制の傾向にあることが示された。

労働市場の急速な冷え込みを危惧する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長にとって9月の雇用統計は理想的な内容となった。

米国の雇用統計 各項目の動向:2023年9月以降

米国の雇用統計 各項目の動向:2023年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

米国 3ヶ月平均の非農業部門雇用者数:2023年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

高まるソフトランディングの期待

アメリカ労働市場の強さを示唆したのは、9月の雇用統計だけではない。米労働省が今月1日に発表した8月の雇用動態調査(JOLTS)求人件数は32.9万件増の804万件と市場予想の766万件を上回り、今年5月以来となる800万件の水準を回復した。また、9月のADP雇用統計は14.3万人増と、市場予想の12.5万人増を上回った。8月分も9.9万人増から10.3万人増へ上方修正された。

9月の雇用統計をはじめ、先週の雇用関連指標が総じて労働市場の堅調さを示したことは、各市場の参加者が抱くアメリカ経済のソフトランディング期待をさらに高める要因となった。

米国 JOLTS求人件数:2023年8月以降

米国 JOLTS求人件数:2023年8月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

米国 APD民間雇用者数:2023年9月以降

米APD民間雇用者数:2023年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

米雇用統計が与えた衝撃

労働市場の底堅さ、特に9月の米雇用統計が予想以上の強さを示したことで、パウエルFRBの利下げペースに対する市場の思惑が急速に上方修正されている。具体的には、一時意識された11月FOMC(連邦公開市場委員会)での0.5%利下げの可能性が完全に後退し、現状では0.25%の利下げが有力視されている。

注目すべきは、わずかではあるが11月のFOMCで政策金利の「据え置き予想」が出始めたことである(下のチャート、赤棒グラフを参照)。

インフレの鈍化を想定しているパウエルFRBは緩和サイクルへ転じている。このため、現時点では11月会合で政策金利を据え置く可能性は限りなく低い。しかし、今後発表される景気に関連した経済指標で強い内容が続けば、その据え置き確率が高まるシナリオも想定しておきたい。

景気の底堅さは、インフレ低下の圧力が後退する要因となる。ゆえに、米債市場では再び利回りが上昇するシナリオも用意しておく必要がある。

いずれにせよ、FRBの利下げペースに対する市場の思惑が修正されている状況を考えるならば、米ドル安シナリオの修正も迫られている。

11月FOMCの利下げ確率

11月FOMCの利下げ確率

出所:CMEのFedWatchツール / 日本時間10月7日 午前7時時点

迫られる米ドル安のナリオの修正

先週まで筆者は、今年末に向けて米ドルが緩やかに下落するシナリオを想定していた。しかし、上で述べた米利下げペースに対する市場の思惑が急速に修正されている状況や米金利が急反発していることを考えるならば、米ドル安のシナリオを修正があろう。

事実、先週の米ドルは先進国通貨、新興国通貨を問わず、総じて米ドル高の展開となった。

米ドルの騰落率:9月30日~10月4日

米ドルの騰落率:9月30日~10月4日

ブルームバーグの為替データで筆者が作成

米ドルを支える新たな構図

米ドルのトレンドを考えるうえで重要な指標であるドル指数(DXY)は先週、中期の移動平均線である50日線のみならず、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準102.45レベルをも突破した。今週は、半値戻しの水準103.15のトライそして上方ブレイクが焦点となろう。

植田日銀が警戒するアメリカ経済の先行き不透明感が後退している。しかし、追加利上げの環境について石破茂首相は2日、明確に否定した。解散総選挙(10月27日に投開票)では自民党に逆風が吹き荒れる可能性がある。選挙後に石破政権が早くも窮地に立たされる場合は支持率回復のため景気対策が優先とし、日銀の追加利上げを暗にけん制し続ける可能性がある。ゆえに今年末に向け円相場は、政治の面で円安の圧力が高まりやすい状況に陥る可能性がある。

さらに今は、欧州中央銀行(ECB)と英中銀(BOE)が年内残り2回の会合で連続利下げを実施する可能性が浮上している。この状況は、ユーロや英ポンドの売り圧力を高める要因である。

上で述べた米景気の底堅さとFRBの利下げペースに対する市場の思惑が急速に修正されていることに加えて、円売りと欧州通貨売りも米ドルを支える構図が出来上がりつつあることを意識しておきたい。

ドル指数のチャート:日足 2024年6月以降

ドル指数のチャート:日足 2024年6月以降

出所:TradingView / 7日7時45分にチャートをアップデート


ドル円の週間見通し 150円が再び視野に

9月の米雇用統計を受け、4日のアメリカ債券市場では利回りが急反発した。その結果、日米の利回り格差は再び拡大の傾向にある。

日米の利回り格差:2024年4月以降

日米の利回り格差:2024年4月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

通貨オプション市場ではリスクリバーサルが再び上昇基調へ転じている。一方、1週間の予想変動率は低下している。

これらの動向は、通貨オプション市場の参加者がドル円の上昇を意識していることを示唆している。

ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:2024年7月以降

ドル円のリスクリバーサルと予想変動率:2024年7月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

そして日足チャートでは、MACDがドル円の強気相場に勢いが出始めていることを示唆している。RSIは買われ過ぎの水準付近へ到達しつつあるが、デッドクロスへ転じるムードにはない。

上で述べた状況を総合的に考えるならば、今週のドル円(USD/JPY)は、節目である150円を再びトライする展開を想定しておきたい。ドル円が150円をトライするシグナルとして注目したいのが、8月15日の高値149.40レベルの攻防である。

ドル円が150円台へ上昇した後、反落の局面で150.00または149.40レベルがサポートラインへ転換する場合は、さらなる上値トライのサインと捉えたい。このケースでは、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準151.53レベルを視野に上昇幅の拡大を想定しておきたい。

ドル円のチャート:日足 2024年7月以降

ドル円のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView / 7日 午前7時45分にチャートをアップデート

反落局面での焦点は?

今月に入りドル円(USD/JPY)はすでに3.5%上昇している。今週発表される9月の消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)でインフレの鈍化傾向が示される場合は、米ドル高の調整要因になり得る。米ドル安はドル円の反落要因となろう。

ドル円の反落局面では、2つのサポート水準の攻防に注目したい。ひとつは147.00レベル、もうひとつは146.00レベルである。いずれの水準もサポートラインへ転換する可能性がある(下の1時間足チャート、黒矢印を参照)。

フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準147.57レベルの下方ブレイクは、147.00レベルをトライするサインと捉えたい。

フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準146.70レベルを下方ブレイクする場合は、146.00レベルのトライを想定したい。この水準は半値戻しにあたる(下の1時間足チャートを参照)。テクニカルの攻防を考えるならば、146.00レベルは147.00以上に重要なサポート水準として意識したい。

ドル円が先週4日の高値水準を突破すれば、フィボナッチ・リトレースメントの水準も上方にシフトする。その都度、最新の水準を確認したい。

1時間足のRSIは買われ過ぎの水準でデッドクロスへ転じるムードにある(下の1時間足チャート、紫の矢印を参照)。MACDでもデッドクロスが確認される場合は、上で述べたサポート水準を視野にドル円の調整相場(反落)を意識したい。

ドル円のチャート:1時間足 10月以降

ドル円のチャート:1時間足 10月以降

出所:TradingView


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