【ドル円 今週の見通し】強まる米国のスタグフレーション懸念、今週も米経済指標にらみ、ドル円の下落を警戒
3月に入り米ドル安優勢の状況が続いている。今週の経済指標で米国のスタグフレーション懸念がさらに強まれば、ドル円の下落を警戒したい。

記事の概要
3月の外為市場で米ドル安が進行している。買い戻しも限定的である。米ドル売りの要因は、スタグフレーションの可能性を意識した米金利の低下と利下げ期待の高まりにあると考えられる。今週の米ドルも経済指標にらみの1週間となろう。日銀の利上げを意識した思惑先行の円高は一服している。しかし、今週の経済指標で米国のスタグフレーション懸念がさらに強まる場合は、ドル円の下落を警戒したい。今週の予想レンジは148.00~151.65。
記事の焦点
米ドル安優勢、強まるスタグフレーションの懸念
3月の外為市場で米ドル安が進行している。対主要通貨の変動率を確認すると、トルコリラ以外の通貨で米ドル安優勢の状況にある(3月28日時点)。米ドル相場の大まかなトレンドを示すドル指数(DXY)は3%超下落している。3月下旬にドル指数が反発する局面が見られた。しかし、上昇幅は限定的である。米ドル安の要因は、下で述べるスタグフレーションの懸念にあると筆者は考えている。
米ドルの変動率:月初来

ブルームバーグの為替データで筆者が作成
先週28日に、2つの重要な経済指標が発表された。ひとつが、2月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)である。市場参加者が注視するコア指数の伸びが前月比0.4%、前年同月比2.8%といずれも1月を上回った。ブルームバーグの市場予想0.3%、2.7%も上回った。もう一つが、3月のミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率の確報値である。消費者態度指数(消費者マインド)は、速報値の57.9から57.0に下方修正された。一方、1年先の期待インフレ率は速報値の4.9%から5.0%へ上方修正された。
注目すべきは米金利の反応である。PCEデフレーターではインフレの粘着性が示された。期待インフレ率の上昇は実際の物価動向に大きな影響を与える要因である。インフレ再燃を意識させた28日のインフレ指標は米金利の上昇要因になり得た。しかし、景気の動向を織り込んで動く10年債利回り(長期金利)は4.36%手前から4.24%台へ急低下した。この反応は、スタグフレーション(景気の減速とインフレが同時に進行する状況)の方を強く意識した動きと言える。
米国 10年債利回りの動向:15分足 3月27日~28日

出所:TradingView
短期金融市場の動きにも注目したい。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)に基づく12月末の政策金利の予想水準が3.60%まで低下している(3月28日時点)。短期金融市場では、今年3回の利下げを織り込み始めていることになる。米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者が想定している今年2回を超える利下げ観測は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げで景気を下支える必要性に迫られる可能性を市場参加者が意識し始めていることを示唆している。
米国 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想推移 / 3月28日時点
今週も米経済指標にらみの1週間、ISM指数と雇用指標を警戒
今週から外為市場は4月相場入りとなる。第1週目はいつもどおり、米経済指標にらみの1週間となろう。
以下に注目の経済指標をまとめた。内容次第で米金利と米国株が上下に大きく振れるだろう。米ドルのトレンドは米国市場、特に米金利の動きに左右されるだろう。
今週注目のアメリカ経済指標

市場予想:ブルームバーグ / 3月30日時点
週前半は、1日の2月JOLTS求人件数と3月ISM製造業景気指数が米国市場の変動要因となろう。JOLTS求人件数は768万件と、前月の774万件から減少する見通しにある。
今はスタグフレーションの懸念が強まっている。よって、ISM製造業景気指数が重要視される展開を想定しておきたい。ブルームバーグの予想では49.5と景気判断の分かれ目である「50」を下回る見込みである。
内訳の指数にも注目したい。今年に入りインフレに関連する支払い価格が上昇傾向にある。一方、新規受注と雇用は景気判断の分かれ目である「50」を下回り低迷している。3月もこの傾向が確認される場合は、スタグフレーションの懸念を強める要因となろう。米金利の低下と米ドル安の進行を警戒したい。
米国 ISM製造業景気指数:直近1年間の動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成
週後半は、3月ISM非製造業景気指数(3日)と同月の雇用統計(4日)が材料視されるだろう。
ISM非製造業景気指数も製造業と同じく、2月から低下の見通しにある。インフレ再燃が意識されるなか、ISM指数全体で企業活動の弱さが示される場合は、スタグフレーションの懸念がさらに強まるだろう。米国市場では金利の低下と株安を想定したい。
株安(リスク回避)は、「リスク性の高い新興国通貨と資源国通貨の売り→米ドル買い」の要因になり得る。しかしドル円(USD/JPY)は、「米金利の低下→日米利回り格差の縮小」による下値トライを想定したい。
米国 ISM非製造業景気指数:直近1年間の動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成
3月雇用統計の市場予想を確認すると、レポート執筆時点では非農業部門雇用者数変化を除いた項目が、2月から横ばいの予想にある。ISM指数の雇用が減少し、かつADP雇用統計も予想を下振れする場合は非農業部門雇用者数変化の下振れを警戒したい。今の景気を支えている労働市場の軟化が示される場合は、米国市場のリスク回避相場(金利の低下と株安)を想定したい。ドル円は下値トライが予想される。
一方、上述した米経済指標が予想外に上振れしスタグフレーションの懸念が一時的にせよ後退する場合は、米ドルの買い戻し要因になり得る。日銀の追加利上げを意識した思惑先行の円高が一服している状況での米ドル買いは、ドル円の反発トレンドを下支えしよう。
米国の雇用統計 各項目の動向:直近1年間の動向

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:3月の市場予想
ドル円の見通しと注目のテクニカルライン
レジスタンスとして明確になった151.25レベル
今週のドル円(USD/JPY)は、米経済指標にらみの1週間となろう。上で取り上げた注目指標でスタグフレーションの懸念が一時的にせよ後退する場合は、以下にまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
ドル円が上値をトライする場合、最初に注目したいのが、レジスタンスラインとして明確になったフィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準151.25レベルの攻防である。50日線の攻防と言い換えることもできる(日足チャート、青矢印を参照)。ドル円が150円台へ反発した後、この水準をしっかりと維持する場合は、151.25のトライを想定したい。
円高の圧力はひとまず後退している。この状況で今週の米経済指標が予想外に上振れする状況が続けば、151.25の突破とフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準151.65レベルのトライを想定したい。4月3日に61.8%戻しと日足の一目雲の下限が交錯する。今週の予想レンジ上限を151.65レベルと想定したい。
筆者の予想を超える米ドル高・円安となる場合は、151.65を上方ブレイクし152.00レベルまで上昇する可能性が出てくる。このケースでは、上述の米経済指標が総じて市場予想を上回る状況が想定される。
レジスタンスライン
・152.00:レジスタンスライン(日足)
・151.65:予想レンジの上限、61.8%戻し(日足)
・151.25:38.2%戻し、50日線(日足)
・150.00:レジスタンスライン
下落の局面では148円の維持が焦点に
日足のMACDはゼロラインの手前で上昇が失速気味である。DMIは反発地合いの勢いが衰えている状況を示唆している。今週の米経済指標でスタグフレーションの懸念がさらに強まれば、ドル円(USD/JPY)の下落を警戒したい。週間の予想レンジ下限は148.00レベル。この水準をトライするサインとして、以下にまとめたサポートラインの攻防に注目したい。
最初の焦点は、先週28日の下落を止めた日足の一目転換線となろう。このテクニカルラインは、3月11日の安値を基点とした短期サポートラインと交錯している(4時間足チャートを参照)。転換線を下方ブレイクする場合は、2つのフィボナッチ・リトレースメントが重なる水準の攻防に注目したい。
148.90レベルには、日足の一目基準線も推移している。3つのテクニカルラインが重なる148.90レベルを下方ブレイクする場合は、3月20日の安値が基点のフィボナッチ・リトレースメント全戻し148.20レベルを視野に下落幅の拡大を警戒したい。このラインは、サポートラインへ転換した水準でもある。148.20レベルを一気に下方ブレイクする場合は、予想レンジの下限148.00をトライするサインと考えたい。
上で取り上げた米経済指標が総じて予想以上に下振れる場合は、スタグフレーションの懸念がさらに強まるだろう。148.00レベルを下方ブレイクするほど米ドル安の圧力が強まる場合は、3月11日の終値を基点としたフィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準147.63レベルまで下落を想定したい。
サポートライン
・149.70:一目転換線(日足)
・149.40:38.2%戻しと61.8%戻しが重なる水準(4時間足)
・148.90:一目基準線(日足)、76.4%戻しと半値戻しが重なる水準(4時間足)
・148.20:全戻し、サポート転換の水準(4時間足)
・148.00:予想レンジの下限
・147.63:76.4%戻し(4時間足)
※移動平均線、一目転換線と基準線の水準は3月28日時点
ドル円のチャート
日足:年初来

出所:TradingView
4時間足:3月11日以降

出所:TradingView
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