ドル円 今週の見通し:トランプ関税発動 報復合戦も 7日に雇用統計 米金利の反応は?
今週のドル円は米金利にらみとなろう。まずはトランプ関税に対する米金利の反応に注目したい。米雇用統計などの重要指標も米金利の変動要因となろう。ドル円の週間見通しについて。
記事の概要
トランプ米政権は1日、カナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税、中国の輸入品に対して10%の追加関税をそれぞれ課すことを正式に発表した。カナダとメキシコは対抗措置を取る構えを見せている。関税の報復合戦はインフレ再燃の懸念を高めるだろう。
米金利の上昇が抑制され、日米の利回り格差は縮小の傾向にある。しかしトランプ関税によるインフレ再燃のリスクがあらためて意識される場合、米金利には再び上昇の圧力が高まる可能性がある。今週は雇用統計など重要指標も発表される。インフレ懸念の高まりと強い経済指標が重なる場合は米ドル高を想定したい。一方、さえない経済指標は米金利の上昇を抑制する要因になり得る。ドル円の週間予想レンジは152.50-157.65。
ドル円、今週の見通しとテクニカルライン
週間予想レンジの上限:157.65
・今週の予想レンジの上限は157.65レベル。トランプ関税の影響によるインフレの再燃に対する懸念の高まり、そして雇用統計をはじめとした強い経済指標を受けて米金利が上昇する場合、ドル円(USD/JPY)は以下でまとめたレジスタンスラインの攻防に注目したい
・予想レンジの上限157.65レベルをトライするサインとして、まずは4時間足にプロットしたフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい。半値戻しの水準156.29付近には21日線が推移している(日足チャート参照)。これら2つのラインがドル円(USD/JPY)の反発を止める場合は、地合いの弱さを印象付けよう。21日線を上方ブレイクしてもレジスタンスラインへ転換する兆しが見られる61.8%戻しの水準156.90が控えている
・一方、61.8%戻しの突破は157円台へ上昇するサインとなろう。このケースでは、週間予想レンジの上限157.65のトライが視野に入ろう。テクニカルの面でこの水準は、フィボナッチ・リトレースメント76.4%の水準にあたる
レジスタンスライン
・157.65:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(4時間足)、予想レンジの上限
・156.90:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(4時間足)
・156.39:21日線(1/31時点、日足)
・156.29:半値戻し(4時間足)
週間予想レンジの下限:152.50
・今週の予想レンジの下限は152.50レベル。現在の米債市場では金利の上昇が抑制されている。米金利の動きを受け、日米の利回り格差はじわりと縮小の傾向にある。今週の米経済指標、特に7日の雇用統計がさえない内容となれば「日米利回り格差のさらなる縮小→ドル円の下値トライ」を想定したい
・日足のMACD とモメンタムは地合いの弱さを示唆している(日足チャート、黒矢印を参照)。ドル円(USD/JPY)が下値をトライする局面では、2つのフィボナッチ・リトレースメントと移動平均線の攻防が焦点となろう。まずは、先週の下落を止めた半値戻しの水準153.76レベルの攻防に注目したい。すぐ下には89日線が上昇している(日足チャート参照)。これら2つのテクニカルラインが相場をサポートすれば、反発ムードを高める要因になり得る
・一方、ドル円が89日線を下方ブレイクする場合は、200日線のトライが焦点に浮上しよう。このテクニカルラインをも下方ブレイクする場合は、予想レンジの下限152.50レベルのトライを想定したい。テクニカルの面でこの水準は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%にあたる
サポートライン
・153.76:半値戻しの水準(日足)
・153.47:89日線(1/31時点、日足)
・152.78:200日線(1/31時点、日足)
・152.55:フィボナッチ・リトレースメント61.8%、予想レンジの下限(日足)
ドル円のチャート
日足:2024年9月以降
出所:TradingView
4時間足:年初来
出所:TradingView
トランプ関税発動、米債市場の織り込み度合いは?
今週のドル円(USD/JPY)は、米金利にらみの展開が予想される。現在の米債市場では、各年限の利回りの上昇が抑制されている。このため日米の利回り格差はじわりと縮小の傾向にあり、ドル円の上値を抑制している。
トランプ米政権は1日、カナダとメキシコの輸入品に対して25%の関税を課すと発表した。中国からの輸入品に対しては10%の追加関税を課すとした。課税の開始はいずれも2月4日からとなる。米メディアのブルームバーグによれば、トランプ関税の対抗措置としてカナダは1,550億カナダドル相当の米国産品に25%関税を課すという。メキシコの経済相も対米関税実施の可能性を示唆したという。
関税の報復合戦は、米国のみならず世界的にインフレを再燃させる要因になり得る。注目は米債市場の反応である。トランプ関税とそれによるインフレ再燃の可能性をある程度織り込み、10年債利回りは先月の中旬に4.8%付近まで上昇した。しかし、今週の市場でこの織り込み度合いの甘さが露呈する場合、米金利には再び上昇の圧力が高まることが予想される。米金利が上昇すれば、日米の利回り格差は再び拡大傾向へ転じることが予想される。このケースでのドル円は、上で取り上げたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
日米利回り格差の動向:日足 2024年9月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
米経済指標にも注目、7日に1月の雇用統計
今週、米債市場の変動要因としてもう一つ注目したいのが、アメリカの経済指標である。3日に25年1月のISM製造業景気指数、5日に同月のISM非製造業景気指数が発表される。
市場参加者が最も注目するのが、7日に発表される25年1月の雇用統計となろう。先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げが見送られた。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は定例会見で、労働市場が依然として底堅さを維持していると述べた。堅調な労働市場は経済を支え、結果としてインフレ鈍化の足かせになっている。この点を示唆したのが、2024年12月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)である。前年同月比のコア指数以外、昨年11月から総じて上昇した。そのコア指数(前年同月比)も2.8%前後でインフレの粘着性を示す状況にある。
PCEデフレーターでインフレ圧力の根強さが確認された状況で、雇用統計が労働市場の堅調さを示唆する内容となれば、今年前半の米利下げ期待がさらに後退することが予想される。堅調な経済とインフレ懸念による利下げ期待の後退は米金利の上昇もしくは高止まり、そして米ドル高の要因となろう。このケースでのドル円は、上で取り上げたレジスタンスラインの攻防に注目したい。
一方、雇用統計だけでなく今週の重要指標が総じて市場予想を下回る場合は、米金利の上昇を抑制する要因になり得る。トランプ関税に対する米金利の反応が薄い場合は、その影響をかなり織り込んだサインと捉えることができる。このケースでのドル円は日米利回り格差も縮小傾向が続くことで、上述した各サポートラインの攻防を意識したい。
米国の雇用統計 各項目の動向24年1月~12月
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 赤の棒グラフとドット:25年1月の市場予想
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