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金価格の展望:米国市場は一転してリスク回避相場へ ゴールドの反落は買いの好機

NY金相場に調整ムードが漂い始めている。しかし、金価格を取り巻く現在の相場環境を考えるならば、反落の局面ではゴールド買いの好機を探りたい。

Source:bloomberg Source:bloomberg

記事の概要

27日のNY金先物相場(4月物)は、前日比34.7ドル(1.2%)安の1トロイオンス2895.9ドルと、終値で2,900ドルを下回った。スポットの金価格も21日線を下方ブレイクし、2月上旬の安値水準にある。しかし、トランプ関税のリスクやエヌビディアの急落を受け米国市場のリスク回避ムードが高まっている状況を考えるならば、金価格の反落局面では押し目買いの好機を探りたい。金価格、今日の予想レンジは2,843~2,917ドル。


トランプ関税リスクにエヌビディアの下落、米国市場は一転リスク回避相場に

トランプ米大統領は27日、カナダとメキシコの輸入品に対する25%の関税措置を3月4日に発動すると自身のSNSに投稿した。また、中国からの輸入品に対しても10%の追加関税を課す意向を示した。

ミシガン大学やコンファレンス・ボードの調査による消費者マインドの指数が低下トレンドを鮮明にする一方で、インフレ期待は急上昇している。注目すべきは、2つの消費者マインドの期待指数が昨年の11月を境に低下へ転じていることである。このトレンドは、トランプ関税によるインフレ再燃を消費者が強く意識していることを示唆している。

アメリカ経済を支える個人消費の先行き懸念と物価の動向に大きな影響を与えるインフレ期待の上昇が加速している状況は、市場参加者にスタグフレーションの可能性を意識させる要因となろう。

消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード):2024年2月以降

消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード):2024年2月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率:2024年2月以降

ミシガン大学消費者態度指数と期待インフレ率:2024年2月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

米債市場では、スタグフレーションの可能性を意識する動きが早くも見られている。景気の動向を反映して動く10年債利回りは、4.6%台から一気に4.2%割れを視野に低下幅が拡大している。

トランプ関税はインフレ再燃の可能性を高める要因である。ゆえに米金利の上昇要因である。しかし、トランプ米大統領が関税強化の意向を示しても10年債利回りの低下幅が拡大している今の状況は、インフレ再燃の先にある景気不安を先取りしている動きと考えることができる。

米国の10年債利回り:4時間足 2024年12月以降

米国の10年債利回り:4時間足 2024年12月以降

出所:TradingView

一方、米国の株式市場では株高トレンドから一転して、株安が進行している。今日のIG米国レポートで指摘したとおり、マグニフィセントセブンの指数とラッセル2000では調整局面入りのシグナルが点灯している。

半導体大手エヌビディア(NVDA)の第4四半期決算はアナリスト予想を上回る好決算となった。しかし、27日の株式市場で同社の株価は8%超急落し、昨年8月の安値を基点とした短期サポートラインが視野に入る。

主力のハイテク株から中小型株まで売られる状況に陥り、主要な株価指数の月間騰落率は一転してマイナスへ転じている。10年債利回りの低下と株安が同時に発生している今の状況は、典型的なリスク回避相場と言える。

アメリカ株価指数の騰落率:月初来

アメリカ株価指数の騰落率:月初来

ブルームバーグのデータで筆者が作成


NY金反落も下値では押し目買いの好機を探る局面にある

27日のNY金先物相場(4月物)は、前日比34.7ドル(1.2%)安の1トロイオンス2,895.9ドルと、終値で2,900ドルを下回った。

スポットの金価格(以下では金価格)は現在8週連続で上昇している。しかし9週連騰には赤信号が灯る。レポート掲載時点で今週は、昨年11月後半以来となる2%超下落している。

だが、上で述べたとおり現在の米国市場はリスク回避相場にある。この状況を考えるならば、金価格の反落局面は押し目買いの好機と考えたい。

スポット金価格の週間騰落率:2024年9月以降

スポット金価格の週間騰落率:2024年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成


金価格 今日の見通しと注目のテクニカルライン

押し目買いを考える2つのライン
日足のMACDはデッドクロスへ転じているが、ゼロラインを上回る水準で推移している。モメンタムはむしろ反発している。米国の10年債利回りに低下の圧力が強まっている状況も考えるならば金価格が続落しても、その幅は限定的となることが予想される。

本日、下値をトライする局面では、以下で取り上げた2つのサポートラインの攻防を確認しながら押し目買いの好機を探りたい。

・レポート掲載時点で、昨日の下落を止めたフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準2,868ドルを下方ブレイクしている。目先は、2月の上旬に相場をサポートした経緯のある2,850ドルをトライする展開を想定したい

・本日の予想レンジ下限を一目均衡表の基準線と想定し、金価格が2,850ドルを下方ブレイクする場合はこのテクニカルラインのトライを想定したい

サポートライン:日足
・2,850:サポートライン
・2,843:一目基準線

2,910ドル台までの反発を想定
上で述べたサポートラインでゴールドの買い戻しが入る場合は、2,910ドル台までの反発を想定したい。今日の予想レンジの上限は、レジスタンスラインへ転換する兆しが見られる10日線を想定したい。
・10日線を目指すサインとして、まずは2,890ドルの攻防に注目したい。このラインを挟んで1時間足にプロットしたフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準と21日線が展開している

・21日線を上方ブレイクすれば、次の焦点は2,900ドルのトライとなろう。このラインは、フィボナッチ・リトレースメント38.2%戻しにあたる

・現在の調整ムードを考えるならば、2,900ドル台へ反発しても2,910ドル台で反落する展開を警戒したい。まずは転換線での反落を警戒し、このテクニカルラインを突破する場合は10日線までの反発を想定したい

レジスタンスライン
・2,917:10日線(日足)
・2,910:半値戻し(1時間足)、一目転換線(日足)
・2,900:フィボナッチ・リトレースメント38.2%
・2,890:23.6%戻し(1時間足)、21日線(日足)


金価格のチャート

日足:2024年12月以降

日足:2024年12月以降

出所:TradingView

1時間足:2月24日以降

1時間足:2月24日以降

出所:TradingView


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