ドル円の週間見通し:円安抑制、日銀の追加利上げ期待で 氷見野副総裁の会見と米国の物価指数に注目
日銀の追加利上げ期待が高まり、日米利回り格差の拡大が抑制されている。今週のドル円は日米のイベントで上下に大きく振れる展開が予想される。ドル円の週間見通しについて。
記事の概要
先週10日のアメリカ経済指標は米金利の上昇要因となった。しかし、日米利回り格差の拡大は抑制されている。日銀の追加利上げが意識され、国内金利の上昇幅も拡大しているためだ。今週は日銀の氷見野副総裁の言動と米国の物価指数(PPI / CPI)がドル円の変動要因となろう。内容次第でドル円は上下に大きく振れる展開が予想される。今週のドル円の予想レンジは155.00-159.25。
アメリカ、堅調な労働市場と高まるインフレ期待
24年12月の雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は25.6万人増加し、ブルームバーグがまとめた市場予想の16.5万人増を上回った。失業率は4.1%と、昨年11月の4.2%から低下し、アメリカの労働市場の堅調さが示された。
筆者が注目したのが、ミシガン大学調べの1月期待インフレ率である。1年先のそれは昨年12月の2.8%から3.3%へ上昇し、昨年5月以来の高水準となった。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する5-10年先のそれは3.0%から3.3%と、2008年6月以来の高水準へ上昇した。消費者心理は物価の動向に大きな影響を与える。ゆえに米債市場では、インフレ再燃の可能性を意識する局面が続くだろう。
ミシガン大学調べ 期待インフレ率:24年1月~25年1月
ブルームバーグのデータで筆者作成
今週の注目材料はアメリカのPPIとCPI、インフレの粘着性を示す可能性あり
今週14日に24年12月のアメリカ生産者物価指数(PPI)、15日に消費者物価指数(CPI)が発表される。いずれも市場参加者が注目する物価指数である。
ブルームバーグがまとめた市場予想では、トレンドを示す前年同月比のPPIとCPIでともにインフレの粘着性が示される見通しにある(下のラインチャート、赤矢印を参照)。
消費者のインフレ期待が再び高まるなかでこれら物価指数が予想を上回る内容となれば、米金利は上昇トレンドを維持する可能性が高まろう。米金利の上昇は、さらなる米ドル高を促す要因になり得る。
米国の物価指数(PPI / CPI):2023年12月~2024年12月
出所:ブルームバーグ / 赤の棒グラフとドット:24年12月の市場予想
抑制される日米利回り格差の拡大、上値の重いドル円
10日の米雇用統計は米金利の上昇と米ドル高の要因となった。しかしドル円(USD/JPY)の上値は重く、高値158.88まで上昇した後に急反落し、日足ローソク足は下落を暗示する上影陰線となった。
ドル円の上値を抑制しているのが、日米利回り格差の動きである。強い雇用統計を受け10日の日米利回り格差は拡大した。しかし昨年12月中旬からのトレンドを確認すると、利回り格差の拡大が抑制されていることが分かる(下のチャートを参照)。
日米の利回り格差とドル円の動き:2024年9月~2025年1月10日
ブルームバーグのデータで筆者が作成
再び高まる日銀の追加利上げ期待、氷見野副総裁の「地ならし発言」に要注意
日米利回り格差の拡大が抑制されている主因は、国内金利の動向にある。1月23~24日の金融政策決定会合で日銀が追加の利上げに踏み切る可能性が高まり、国内金利の上昇幅が拡大している。1月10日時点で1月会合の利上げ確率は58%近くまで上昇している。
今週14日に日銀の氷見野副総裁が神奈川県の金融経済懇談会で挨拶し、午後に記者会見をひらく予定である。決定会合前の要人会見は異例である。追加利上げの可能性を示唆する「地ならし発言」があれば、ドル円の下落幅が拡大する可能性があろう。
1月日銀金融政策決定会合 利上げ確率の予想推移:2024年12月-2025年1月10日
出所:ブルームバーグ / OISに基づく予想確率 / 25年1月10日時点
ドル円の週間見通しと予想レンジ
今週のドル円(USD/JPY)の予想レンジは155.00-159.25。上で述べたとおり、強い米雇用統計でも日米利回り格差の動向を受けドル円の上昇は抑制された。日足のMACDはデッドクロスへ転じている(日足チャート、黒矢印を参照)。今週は不意打ちの下落を警戒したい。そのきっかけとなり得るのが、氷見野日銀副総裁の会見となろう。
・21日線は現在、157.00レベルで推移してる。今週の下落局面では、この移動平均線の維持が最初の焦点となろう
・ドル円が21日線を下方ブレイクすれば、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント23.6%戻し156.46レベルの攻防を意識したい。このテクニカルラインの下方ブレイクは、156.00をトライするサインとなろう。このラインは昨年の12月20日以降、サポートラインへ転換している
・フィボナッチ・リトレースメント38.2%戻しは155.00レベルにあたる(154.97レベル)。テクニカルの面で155.00はレンジ下限として意識される可能性があろう
・筆者の予想に反しドル円が155円を下方ブレイクしても、昨年9月の安値を基点とした短期サポートラインを維持する限りは、上値のトライを意識する状況が続こう
サポートライン
・156.97:21日線(日足)
・156.46:23.6%戻し(日足)
・156.00:サポートラインへ転換
・155.00:予想レンジの下限、38.2%戻し(日足)
今週、ドル円が上値をトライするきっかけとなり得るのが、インフレの粘着性が示される可能性のある米国の物価指数-生産者物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)である。しかし現在は、日銀の追加利上げが再び意識され国内金利には上昇の圧力が高まっている。また、円安の進行は政府・日銀サイドのけん制を促す要因でもある。ドル円の上昇局面では、以下で取り上げているレジスタンスラインでの反落を警戒したい。
・予想レンジの上限は、フィボナッチ・エクステンション61.8%の水準159.25レベル。この水準をトライするサインとして、以下で取り上げている3つのフィボナッチ・リトレースメントの攻防に注目したい
・本レポートでは15分足を採用している。分足のストキャスティクスとRSIで短期的な相場の過熱感をこまめに確認したい。これらオシレーター指標が買われ過ぎの水準でデッドクロスへ転じる場合は、ドル円の反落を意識したい。特に下で取り上げているリトレースメント水準の攻防でデッドクロスとなる場合は、反落の可能性を強く意識したい
・筆者の予想に反しドル円が予想レンジの上限159.25を上方ブレイクすれば、節目の160.00トライが視野に入ろう
レジスタンスライン
・159.25:予想レンジの上限、フィボナッチ・エクステンション61.8%(日足)
・159.00:レジスタンスライン(15分足)
・158.88:1月10日の安値、全戻し(15分足)
・158.48:フィボナッチ・リトレースメント76.4%(15分足)
・158.24:フィボナッチ・リトレースメント61.8%(15分足)
・158.05:半値戻し(15分足)
ドル円のチャート
日足:2024年9月以降
出所:TradingView
15分足:1月10日以降
出所:TradingView
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