円安進行、ドル円は「4段ロケット」で158円が視野に 米PCE価格指数でさらなる円安も
来年の米利下げペース鈍化の観測が高まるなか、日銀は追加の利上げを見送った。植田総裁の会見は“ハト派”的と捉えられた。19日のドル円は「4段ロケット」の上昇で158円を視野に上昇幅が拡大。米PCE価格指数の内容次第でドル円は、さらなる上値トライを想定したい。
円安進行、「4段ロケット」でドル円は158円が視野に
19日の外為市場では日米中銀の政策姿勢が意識され、円安が進行した。ドル円(USD/JPY)は前日比で1.7%上昇した。11月6日以来の上昇率となった。昨日の動きを以下にまとめた。
・25年の米利下げペースの鈍化が意識されるなか、日銀は19日の金融政策決定会合で、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%で据え置いた。3会合連続で追加の利上げを見送った
・植田総裁は定例会見に臨み、最近の経済・物価動向について「データはここ数カ月、オントラックで来ている」と述べる一方、「来年の春季労使交渉(春闘)のモメンタムなど、今後の賃金の動向についても少し情報が必要と考えている」とし、追加の利上げについて賃金動向の情報が必要との認識を示した
・週間の米新規失業保険申請(12月14日までの1週間)が、前週比2万2000件減の22万件と、市場予想の23万件を下回った
・19日のドル円は、日米中銀の政策姿勢と新規失業保険申請件数の内容を受け、さながら「4段ロケット」の上昇となった。20日午前の外為市場でも円安の流れが続き157.90 台まで上昇した。158円が視野に入る
ドル円:15分足:米連邦公開市場委員会(FOMC)以降~20日午前9時
出所:TradingView
日銀、追加利上げは来年1月か?3月か?迷う市場
植田総裁が追加の利上げを判断する際、春闘での賃上げに関する情報が必要と述べたことで、来年1月の利上げ観測が揺れている。注目ポイントを以下にまとめた。
・春闘の集中回答は3月中旬だが、植田総裁はそこまで待つ必要はないと述べた。しかしレポート掲載時点で、来年1月の追加利上げの確率は50%を下回り47%台で推移している。ここ数日は50%を挟んで上下に振れており、“ハト派”の植田会見で1月利上げがさらに読みにくい状況となった。一方、3月までに追加利上げに踏み切る確率は70%台にある
・米FRBの利下げペースが鈍化するとの観測が高まるなかで、日銀の追加利上げの時期で市場が迷う状況は円安の要因となろう
日銀 政策金利の予想推移
ブルームバーグのデータで筆者が作成 / OISに基づく予想確率 / 20日 午前9時時点
次の注目材料は米PCE価格指数
今日は11月の米個人消費支出(PCE)価格指数が発表される。注目ポイントを以下にまとめた。
・ブルームバーグがまとめた市場予想では、トレンドを示す前年同月比でインフレの粘着性が示される見通しである
・米利下げペースの不透明感が高まるなかでPCE価格指数が予想外に上昇すれば、米金利の上昇要因となろう。外為市場では主要通貨で米ドル高の進行が予想される
・一方、PCE価格指数が予想どおりの内容ならば、調整の米ドル売りを想定したい。しかし、25年の利下げペースの不透明感が意識されている状況を考えるならば、米ドルの下落幅は限定的となることが予想される
米国 個人消費支出(PCE)価格指数:23年11月以降
ブルームバーグのデータで筆者が作成
ドル円、今日の見通しとテクニカル分析
焦点は158円の突破、ドル円のレジスタンスライン
円安が進行するなかで11月の米PCE価格指数でインフレの粘着性が示される場合は米ドル高も重なり、ドル円(USD/JPY)は以下で取り上げているレジスタンスラインの攻防を意識したい。
・東京時間の序盤に高値157.92まで上昇する局面が見られた。この水準の上方ブレイクは、158.00をトライするサインと捉えたい
・158円台へ上昇する場合は、7月16日の高値158.86の攻防に注目したい。この水準の上方ブレイクは、159.00トライのサインと捉えたい
・159円台での攻防では、フィボナッチ・エクステンション61.8%の水準159.25レベルの攻防が焦点となろう。このテクニカルラインの上方ブレイクは、節目の160円を目指すサインの一つと捉えたい
レジスタンスラインのまとめ
・159.25:フィボナッチ・エクステンション61.8%(日足)
・159.00:レジスタンスライン(日足)
・158.86:7月16日
・158.00:レジスタンスライン(日足)
・157.92 :12月20日の高値(レポート掲載時点)
円安けん制を警戒、ドル円のサポートライン
今日以降は、国内サイドからの円安けん制発言を警戒したい。トレンドを転換させるインパクトはないが、突発的かつ投機的な円の買い戻しを促す要因になり得る。今日は、以下で取り上げたサポートラインの攻防に注目したい。
・高値157.92を付けた後、調整の円買いが見られる。だが、サポートラインの157.30レベルで反発する状況は地合いの強さを示している。157.30をブレイクしても、サポートラインへ転換する可能性がある157.00、サポートラインの156.60レベルまでの下落なら調整相場と捉えたい
・円安の進行を受け、国内サイドからけん制発言が飛んでくることが予想される。閣議後の会見で加藤勝信財務相は円安の進行について、「足元で一方的、急激な動きがみられる」と早速けん制してきた
・けん制発言自体に円安トレンドを転換させるインパクトはない。しかし、突発的かつ投機的な円高を警戒したい。このケースでは、12月に入り相場をサポートしている5日線を瞬間的にトライする可能性がある。この移動平均線は今日現在、155.40レベルで推移している
・5日線を下方ブレイクする場合は、155円の維持が焦点となろう。昨日の植田総裁の会見時の安値が154.91レベルにあたる
サポートラインのまとめ
・157.30:サポートライン(15分足)
・157.00:サポート転換の可能性(15分足)
・156.60:サポート転換(15分足)
・156.00:サポートライン(15分足)
・155.40:5日線(日足)
・154.91:植田会見時の安値(15分足)
ドル円のチャート
日足:24年9月以降
出所:TradingView
15分足:日銀金融政策決定会合後の動向
出所:TradingView
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