米国株の分析レポート 第1回
2022年からIG証券のアナリストによる米国株分析レポートの配信を開始します。第1回目は、2020年から2021年の状況を振り返り、第2回目以降で今年の相場展望について解説します。※このレポートは2022年1月7日に配信されました。
第1弾:2020年から21年までの動き
【サマリー】
1.2020年から21年にかけては、金融緩和相場でアメリカ株は上昇トレンドを形成した
2.株高のけん引役は金融緩和政策と低金利にサポートされた「グロース株」だった
3.しかし2021年後半にパウエルFRBは金融政策の正常化に向けて舵を切り始めた
4.2021年12月以降、アメリカ株にはトレンドの変化が見られるようになった
2020年:コロナパンデミックと米株高
2020年の初めに発生したコロナパンデミックにより、世界のマーケットは大きく混乱しました。
同年2月19日から3月23日にかけて、機関投資家がベンチマークとしているS&P500指数(SPX)は33%以上も急落しました。
パウエルFRB(連邦準備制度理事会)はこの前代未聞の危機に対応するため、大規模な金融緩和政策(量的緩和政策とゼロ金利政策)をいち早く打ち出しました。この素早い対応によりアメリカ株の急落が止まり、急速に上昇トレンドへと転じました。
2020年4月から始まった株高トレンドをけん引してきたのが、大手ハイテク銘柄や新興のIPO銘柄に代表される「グロース株(成長株)」でした。特にハイテクのグロース株は、大規模な金融緩和政策による低金利と行動制限(ロックダウン)が課される状況下での経済成長という市場のテーマが意識され急上昇していきました。
実際にハイテク銘柄で構成されるナスダック100指数(NDX)とS&P500指数のパフォーマンスを比べると、前者(ナスダック100指数)が後者(S&P500指数)のパフォーマンスを圧倒していることがわかります。
アメリカ株価指数のパフォーマンスチャート:2020年~2021年
2021年:政策転換に舵を切るパウエルFRB
しかし、2021年の後半に入るとハイテクグロース株の上昇トレンドは転換点を迎えました。そのきっかけとなったのが、またもやパウエルFRBの政策でした。
昨年9月の連邦公開市場委員会(FOMC)でパウエルFRBは量的緩和の縮小(テーパリング)について言及。同年11月には実際にテーパリングを開始しました。
そして2021年12月のFOMCでは、テーパリングの加速(終了時期を従来の22年6月から3月に前倒しすること)を決定し、さらに最新のFF金利予測(ドットプロット)では、22年に3回の利上げを行う可能性が示唆されました。
パウエルFRBが金融政策の正常化(引き締め政策)を急ぐ理由は、高止まりするインフレにあります。
2021年11月の消費者物価指数(前年比)は6.8%と、約39年ぶりの水準まで上昇しました。インフレの高止まりに有効な対策を講じることができないバイデン米政権に不満を持つアメリカの有権者も増え、バイデン米大統領の支持率は43.1%※と、就任以来、最も低い水準に落ち込んでいます。※リアル・クリア・ポリティクス調査(2021年12月31日時点)
インフレの問題が経済だけでなく政治にも波及していることで、22年のパウエルFRBは金融引き締め政策を急ぐ必要性に迫られるでしょう。
アメリカのインフレ率
12月のFOMC後、米国の株式市場は不安定な状況に陥りました。この時、下落幅が拡大したのがハイテクのグロース株でした。
実際にグロース株ETFのiシェアーズ・ラッセル1000グロースETF(IWF)とバリュー株ETFのiシェアーズ・ラッセル1000バリューETF(IWD)のパフォーマンスチャートをみると、12月のFOMC以降、グロース株(IWF)の下落幅が拡大し、バリュー株(IWD)とのパフォーマンス格差が拡大しています。
また、相場が反転する局面では、グロース株(IWF)の上昇幅が限定的であったことがわかります。
これら一連の動きは、FRBの政策転換(金融緩和政策から金融引き締め政策への転換)と将来の金利上昇に対する警戒心が早くも表れ始めたシグナルと捉えることができます。
ETFのパフォーマンスチャート:2021年12月
第1回目は、2020年から2021年にかけての米国株の動きを確認しました。この点を踏まえた上で第2回目以降からは、2022年の米国株の注目ポイントやトレンドについて考えていきます。
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