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米株高維持の鍵は中小型株に、経済指標でソフトランディング期待が高まるか?S&P500の見通し

パウエルFRBは9月のFOMCで0.5%の大幅利下げを決定した。ダウ平均は19日と20日に連日で最高値を更新した。S&P500種株価指数も先週19日に最高値を更新し、5,700ポイント台へ上昇した。米株高継続の鍵は中小型株の動向にある。今週のS&P500の見通しは?注目のチャート水準は?

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記事のポイント

・FRBの大幅利下げを受け、米株式市場は強気相場にある
・さらなる米株高の鍵は中小型株にある、株高のすそ野の広がりが焦点に
・今週以降の米国株は、再び経済指標にらみの展開となろう
・S&P500の週間見通しと注目のチャートについて


FRBの連続大幅利下げに賭ける市場

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17~18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、通常の倍となる50ベーシスポイント(0.5%)の利下げを決定した。

大幅利下げの決定についてパウエルFRB議長は、米国経済のソフトランディング(軟着陸)を確実にするための対応と述べた。また、「大幅利下げが新たなペースと見なすべきではない」と、市場にくぎを刺した。

しかし、短期金融市場ではパウエルFRBの利下げペースについて、FOMCメンバーの想定以上に進行する可能性を意識している。この点をOISに基づく予想推移で確認すると、次回11月のFOMCでもパウエルFRBが0.5%の大幅利下げに踏み切る可能性を70%程度織り込む状況にある。現時点での水準は、9月のドットチャートで示されたFOMCの参加者が想定する政策金利の予想中央値4.4%に近い4.8%台である。

さらに、今年の12月末までに政策金利が4.1%台まで引き下げられる可能性も意識されている。米金融政策に関する市場の予想は、FOMC参加者のそれよりもかなり緩和の方向へ傾いていることが分かる。

FOMC 政策金利の予想推移

FOMC 政策金利の予想推移

ブルームバーグのデータで筆者が作成 / 9月20日時点の予想推移

株高継続の鍵は中小型株にある

パウエルFRBの利下げペースに対する思惑は交錯している。しかし、パウエルFRBが9月のFOMCを境に緩和サイクルへ転じることは各市場の共通認識である。

FRBの利下げは米株高の要因である。しかしそれは、パウエルFRB議長が指摘した「ソフトランディング(景気の軟着陸)」が前提となる。

この点について、市場参加者がどのように予想しているのか?を知るうえで重要な指標となるのが、中小型株の動きである。利下げの局面でも景気の底堅さが予想される場合は、出遅れ感の強い中小型株が選好されるだろう。

事実、パウエルFRBが大幅利下げを決定した先週、中小型株の代表的な株価指数ラッセル2000の上昇幅が2%超と最も拡大した。

アメリカ株価指数の騰落率:9月16日~20日の週

アメリカ株価指数の騰落率:9月16日~20日の週

ブルームバーグのデータで筆者が作成

ラッセル2000と株高のすそ野の広がり

ラッセル2000の動向を日足チャートで確認すると、9月11日を境に反発相場へ転じている。この過程で10日線と50日線の間でゴールデンクロスが確認された。先週19日には、日足ローソク足の実体ベースでフィボナッチ・エクステンション76.4%の水準2,245レベルを突破する局面が見られた。MACDもゴールデンクロスへ転じ、かつゼロラインを上回っている。RSIは低下基調へ転じているが、デッドクロスは確認されていない。いずれの動きもラッセル2000の地合いの強さを示唆している。

今週の米株式市場は、再び経済指標にらみの相場となるだろう。下で述べる経済指標で景気懸念が後退すれば、ラッセル2000はレジスタンスの水準として意識されている2,560ポイントを突破し(下のチャート、赤矢印を参照)、7月の高値2,300ポイントを目指す展開が予想される。フィボナッチ・エクステンション100%にあたる2,300ポイントの上方ブレイクは、株高のすそ野が広がっている証左となろう。

ラッセル2000のチャート:日足 2024年7月以降

ラッセル2000のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

再び経済指標にらみの相場へ

上で述べたとおり、米国株が上昇トレンドを維持するためには、パウエルFRBの大幅利下げだけでは不十分である。「ソフトランディング」もセットでないと、「大幅利下げ→将来の景気後退」を市場参加者に意識させるからだ。

米金融政策のターゲットは「インフレの抑制」から「景気の下支え」にシフトしている。よって、今後の米経済指標でより注目すべきは企業活動、個人消費そして労働市場に深く関連した指標となろう。

今日は9月の購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。23日のIG為替レポート「ドル円の週間展望 植田会見で円安再び、147円のトライか?「米ドル安vs円安」か?米経済指標にらみ」で述べたとおり、焦点はサービス業の活動にある。この点で強さが見られる場合は、景気に対する楽観的な見方が広がり、中小型株の買いを支えるだろう。

また、24日にはアメリカ消費者の心理を反映する9月の消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)が発表される。9月は前月の103.3から103.0へ後退する見通しにある。

より注視したいのが期待指数である。今年の4月を境に期待指数は改善の傾向にある(下のチャート、赤ラインを参照)。消費者信頼感指数が予想外の強さを見せ、かつ期待指数が景気後退ラインの「80」以上を維持できれば、中小型株の買い要因となろう。

中小型株(ラッセル2000)の上昇による株高のすそ野の広がりは、下で取り上げるS&P500が最高値を更新する土台となろう。

米国 消費者信頼感指数:23年9月以降

米国 消費者信頼感指数:23年9月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成

パウエルFRB議長は労働市場の急速な冷え込みを警戒している(下のチャート、赤ラインを参照)。ゆえに、26日の週間新規失業保険申請件数も材料視されるだろう。現時点での市場予想は22.5万件である。

4週移動平均は低下基調へ転じている。失業保険継続受給者数も同じく低下の基調にある。一方、JOLTS求人件数は22年3月の1,218万件をピークに767万件まで減少している。失業率が一時4.3%へ上昇したことも考えるならば、アメリカの労働市場は軟化しているが、その動きは緩やかであることが分かる。新規失業保険申請件数で労働市場の急速な冷え込みに対する懸念が後退する場合は、米株高の要因となろう。

米国 新規失業保険申請件数:23年1月以降

米国 新規失業保険申請件数:23年1月以降

ブルームバーグのデータで筆者が作成


S&P500、注目のチャート水準

レジスタンスポイント

・5,800:レジスタンスの水準
・5,796:エクステンション261.8%の水準
・5,731:エクステンション61.8%の水準

サポートポイント

・5,655:リトレースメント23.6% の水準
・5,605:エクステンション23.6%とリトレースメント38.2%
・5,560:サポート転換を意識する水準


S&P500の週間展望、高値水準の見極め

上で取り上げた米経済指標が景気の底堅さを示唆する場合、中小型株には買いが入るだろう。この動きが進行すれば米国株は、エヌビディア(NVDA)など主力の半導体株やアップル(AAPL)やアマゾン・ドットコム(AMZN)などに代表されるGAFAといった一部の大手ハイテク株に頼った歪な株高からの脱却を目指すことになる。

米国株のトレンドを考えるうえで重要指標となるS&P500は、新たな高値を目指すだろう。このケースで注目したいのが、2つのフィボナッチ・エクステンションである。ひとつは、8月5日を起点としたフィボナッチ・エクステンション61.8%の水準5,731レベルである。先週19日の市場では5,733レベルまで上昇し、このテクニカルラインを上方ブレイクする局面が見られた。

今週、S&P500が5,731レベルを完全に突破すれば、次は8月15日の安値を起点としたフィボナッチ・エクステンション261.8%の水準5,796レベルの攻防が焦点として浮上しよう。このテクニカルラインの突破は、S&P500が5,800ポイント台の攻防へシフトするシグナルと捉えたい。

S&P500のチャート:日足 2024年7月以降

S&P500のチャート:日足 2024年7月以降

出所:TradingView

サポートラインの維持が焦点に

一方、上で取り上げた米経済指標で景気懸念が再び強まる場合、S&P500には調整圧力が強まるだろう。このケースでは、8月5日以降の上昇相場を象徴する短期サポートラインの維持が焦点となろう(下の4時間足チャートを参照)。
S&P500がこのラインをトライするサインとして、3つのサポート水準に注目したい。ひとつは、「サポート転換」の可能性がある5,655レベルである。この水準は、フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準にあたる。

ふたつめの水準は、フィボナッチ・リトレースメント38.2%の水準(5,607)とフィボナッチ・エクステンション23.6%の水準(5,603)が上下に展開している5,605レベルである。なお、このテクニカルライン付近には10日線が推移している(9月20日時点で5,604レベル、上の日足チャート青ラインを参照)。これらテクニカルラインの攻防では、5,600ポイント維持の見極めが焦点となろう。

そして最後の水準が、5,655レベルと同じく「サポート転換」の可能性がある5,560レベルである。S&P500がこのテクニカルラインを下方ブレイクすれば、短期サポートラインのトライを意識したい。

日足と同じく4時間足のMACDもS&P500の地合いの強さを示唆している。一方、RSIはデッドクロスへ転じるムードにある。これが確認される場合は、上で取り上げたサポート水準のトライを意識したい。

S&P500のチャート:4時間足 7月以降

S&P500のチャート:4時間足 7月以降

出所:TradingView


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